ペンハリガンは、英国王室御用達の歴史的なフレグランスブランドです。
ルーツとなったのは、ウィリアム・ペンハリガンが1870年に開業した理髪店。

彼は、ロンドンに出た後、宮廷理容師及び調香師としてヴィクトリア女王に仕えていました。

ウィリアムは、1872年に初めての香り「ハマン ブーケ」を発表します。

この香りは、当時、彼のお店と同じ通りにあった公衆浴場の蒸気と硫黄の香りに影響を受けて作られました。

それ以降、ペンハリガンは創業当時からエレガントかつ革新的な香りを作り続けています。

また、ウィリアムがデザインした透明のガラスに蝶ネクタイをあしらった香水瓶も魅力。

フレグランスは今もイギリスで作られ、香りごとに異なるラベルデザインも素敵です。

たくさんのラインナップがあるペンハリガンですが、今回ご紹介するのは「三日月」を象徴した香り「LUNA(ルナ)」です。

ギリシャ神話に登場する「月の女神」から着想を得たという、その美しくも切ない香りをご紹介します。

月の女神とゼウスの子、エンディミオンの恋

「LUNA(ルナ)」は、ギリシャ神話のどんな物語からインスパイアされたのでしょうか。

この香りが神秘的で美しい「ユニセックス香水」となる理由が隠されていますので、ここで簡単にご説明したいと思います。

ある夜、月の女神セレネーは、天から羊飼いの美少年が寝ているのを見つけました。

彼の名はエンディミオンと言います。

セレネーは天から下り、そっとエンディミオンに近づき接吻をしてしまいます。

目を覚ました彼は驚きましたが、彼もまた恋に落ちました。

二人は恋人関係となりますが、セレネーの心にはある悲しみが残ります。

「やがて、人間の彼は老いて死んでしまう」

月の女神であるセレネーは不老不死なのです。

実はエンディミオンは、全知全能の神、ゼウスの子。

ゼウスの息子の中で一番の美少年だったそうです。

そしてセレネーはゼウスにお願いをしに行きます。「どうか、エンディミオンを不老不死にしてください」

しかしゼウスはできない、と断ります。「ただ、1つ条件がある。彼を永遠に眠らせてしまえば、そのまま生きるであろう」と。

そのことをセレネーはエンディミオンに伝えました。彼はこう答えます。

「語り合うことも、愛し合うこともできぬが、あなたがそれを望むなら、私は永遠の眠りにつこう」

そして女神セレネーは、毎夜慈愛のこもった月の光とともに、彼のそばに永遠に寄り添ったのです。

三日月のように冴えたトップ、満月のように官能的なラスト

LUNA(ルナ)オードトワレ

トップノート:ベルガモット、レモン、オレンジビガラード

ミドルノート:ローズアコード、ジャスミン、ジュニパーベリー

ラストノート:バルサムファー、アンバーグリス、ムスク

発表年:2016年

調香師:不明

対象性別:ユニセックス

「LUNA(ルナ)」は、ラテン語で月の意味を持ちます。

香りは、月の女神の恋い焦がれる気持ちを美しいフローラルノートで表現したもの。

ベルガモット、レモン、オレンジの冷たいシトラスのシャワーは月の光そのもの。

すっきりしていて鋭敏で、新月でもなければ満月でもない。

三日月の、冴えた月光、少しもの寂し気な表情、などが脳裏に浮かんでくる香りです。

ミドルノートはローズ、ジャスミンとヒロイン級の香りが登場します。

ただ、ここではジュニパーベリーが入っているため香りはちょっとマスキュリンに。

エンディミオンを象徴するのがこのジュニパーベリーですから、「可愛い」香りというよりは「美しい」、そしてキリっとした雰囲気が印象的です。

ラストノートはムスクとアンバーがドライダウンし、体温が一気に上がります。

トップノートの冴えた香りから一転、ものすごく官能的な香りに変化するのです。

それはセレネーとエンディミオン、二人の実った恋、蜜月を表しているようです。

この物語が悲劇なのかハッピーエンドなのかは分かりませんが、若く美しい二人がお互いを思う、その真っすぐさも感じ取ることができる1本です。

全体的に非常に綺麗にまとまっていて、シャープで美しく、高級ホテルのソープのような香りもします。

そしてこの香りが素晴らしいのは、ギリギリの所でニュートラルを保っていることでしょうか。

ジュニパーベリーがそうさせるのか、放っておいたら女性寄りに傾いてしまいそうな香りを必死に「男性らしさ」で支えています。

「美少女」とも「美少年」とも取れる、絶妙な美香水です。

若い男女へ。ペンハリガン最高のユニセックス香水

三日月のようにシャープで美しく、すっきりとした「LUNA(ルナ)」は、ペンハリガンの中でも完璧なユニセックス香水です。

そしてペンハリガン側もまた、「LUNA(ルナ)」を20代の男女に向けて作ったと公言しています。

この香りのチャームポイントは、女性がまとえば「美しい月の女神」となり、男性がまとえば「月の女神に愛される美青年」となるところです。

女性はセレネーに、男性はエンディミオンに変わるのです。

季節は全く関係ありません。春夏にも周囲に不快な思いをさせませんし、秋冬の日の短い季節にはこのシャープさが引き立つでしょう。

ファッションが好きな方、髪を上手にカラーリングされている方にもとてもよくお似合いになると思います。

オードトワレなので持続時間は短めですが、その短さも「二人の恋」を表しているようでむしろ良いと思います。

ペンハリガンならではの、高貴で美的なフレグランスです。

まとめ

イギリスの老舗香水ブランド、ペンハリガンで人気の「LUNA(ルナ)」をご紹介しました。

この香りは評判が良く、クリスマスシーズンなどは期間限定でミニサイズのボトルも発売になるほどです。

ライトでユニセックス、というのも現代らしくて使いやすいですね。

薄いラベンダー色の「LUNA(ルナ)」をまといながら、ギリシャ神話の美しい恋物語を思い出してみましょう。