パリ発のニッチ香水ブランド、ラルチザン。
今、じわじわと脚光を浴びているニッチ香水ですが、ファッション香水と何が違うの?と疑問に思っている方もいらっしゃるかと思います。
ニッチ香水とは、アート性や個性を追求してつくられたフレグランスです。
珍しい香料や、希少性が高い天然香料を用いられることが多く、独創性にあふれた香りが揃うのが特徴。
対してファッション香水は、シャネルやディオール、イブサンローランなど、ファッションブランドやコスメティックブランドが発信するフレグランスです。
シーズン毎にそのコンセプトが香りやボトルデザインに表現され、トレンドを感じさせるのが特徴。
このことからラルチザンなどが提案するフレグランスは、流行とは関係なく「こだわって作り上げられた香り」や「アーティスティックな香り」を求めている、と言えます。
また、ラルチザンのフレグランスは「テーマ設定が独創的」であることもポイントです。
日本名で「蝶々を追いかけて」「最初のイチジク」など、大変ユニークで興味深いコンセプトを発表してきました。
今回は、そんなラルチザンの中から一番ユニーク、といっても過言ではない「Méchant Loup(メシャン ルー)」(=いじわるオオカミ)の香りをご紹介したいと思います。
グリム童話の『赤ずきんちゃん』からインスパイアされた、この香りの魅力について徹底解説していきましょう。
目次
『赤ずきんちゃん』と「Méchant Loup(メシャン ルー)」のメインテーマ
グリム童話の『赤ずきんちゃん』は、誰もが知っているお話だと思います。
なぜ、ラルチザンが「Méchant Loup(メシャン ルー)」に童話を盛り込んだのか、この香り作りの背景も一緒にご紹介したいと思います。
「とある森の近くで、小さな女の子がお母さんと暮らしていました。
女の子は、おばあさんに作ってもらった赤いずきんをいつもかぶっています。
とってもよく似合っており、みんなから“赤ずきんちゃん”と呼ばれていました。
ある日、お母さんは赤ずきんにお使いを頼みます。
「このぶどう酒と、チーズと、木いちごのパイがはいったカゴを持って、病気のおばあさんのおみまいに行ってほしいの」
おばあさんの家は、大きな森のむこうにあります。
おかあさんと「寄り道をしないこと」を約束し、赤ずきんは早速出かけました。
しかし彼女は、途中でお花摘みに夢中になってしまいました。
すると、森のなかでオオカミに出会います。
このオオカミは、人間を食べてしまう悪いオオカミです。
純粋な赤ずきんはそのことを知りません。
オオカミは赤ずきんの後をつけていき、おばあさんと赤ずきんを食べてしまいます。
その後、通りかかった狩人が、お腹がいっぱいになって眠っているオオカミの異変に気が付きます。お腹のあたりが動いているのです。
狩人はお腹からおばあさんと赤ずきんを救い出し、空っぽになったオオカミのお腹に意志を詰め込みます。
そうして、赤ずきん、おばあさん、狩人は難を逃れ、夕食を共にしました。
赤ずきんは「もう絶対に寄り道をしない」と約束しますが、誰も叱りませんでした。
ラルチザンが提案するのは、そんな『赤ずきんちゃん』の舞台となった「森」の香りです。
一口に森の香り、とはいっても、この場合は童話の中の「森」です。
ただの静寂ではない、誘惑の匂いが詰まった「Méchant Loup(メシャン ルー)」とは。
ウッディノートに少し甘いグルマンが添えられた、非常にユニークなユニセックス香水の詳細を次でご紹介します。
ナッツ、ウッディ、グルマンのハーモニーが楽しいオードトワレ
Méchant Loup(メシャン ルー)オードトワレ
トップノート:ペッパー、甘草
ミドルノート:栗、ヘーゼルナッツ、ハシバミの木
ラストノート:ハニー、トンカビーン、ミルラ、シダーウッド、ガヤックウッド
発表年:1997年
調香師:ベルトラン・ドゥショフール
対象性別:ユニセックス
つけたての香りは、これから始まる「森」での出来事を予想させるピリリとしたスパイスで始まります。
そのスパイスが落ち着くと、乾燥したハーブのような、牧草のような香りと、じんわりとした甘みが出てきます。
それが甘草です。
深い森のなか、赤ずきんが寄り道をして綺麗なお花摘みに夢中になってしまった情景が浮かんでくるようです。
そして中盤以降は香ばしいナッツの香りが。
森と少女がダンスするような、ちょっとポエティックで幻想的なミドルノートです。
ラストノートでは暖かいウッディの香りが辺りを包み込みます。
またここで見られるトンカビーン、ミルラ、シダーウッドのハーモニーは他の香水よりもかなりユニークで、「Méchant Loup(メシャン ルー)」が特に個性的なものであることを示しています。
一筋縄ではいかない、ちょっといじわるな恋人のようです。
ミドルからラストにかけてグルマンよりではあるものの、素晴らしいほどトップの香りを維持したまま、ナッツの香りがスパイシーさを残しつつ、甘く馴染んでいきます。
全体的にはやはり「森」っぽいのですが、私たちが思う物理的な森ではありません。
ところどころ感じるナッツ、グルマン系の香りがそれを「浮遊」させ、フワフワとした仕上がりに。
童話の世界から香りが流れてくるような、幻想的なものに出来上がっています。
つまり、非常に奥行きのあるウッディの香りで、森・木・林の先にある「ゴール」さえも表現した、誠に深い1本となります。
とても個性的なユニセックス香水、リピート率が高いのも特徴
「Méchant Loup(メシャン ルー)」は1997年に発売されましたが、25年たった今でもラブコールの絶えないオードトワレです。
ユニセックス香水ですので、男性でも女性でも問題なくまとえます。
ただ、特筆しておくならば、男性がまとえば力強くコケティッシュな「森のオオカミ」となるのに対して、女性がまとえば柔らかくグルマンな「森の赤ずきん」となるところです。
着ける人によってイメージが変わる、というのも「Méchant Loup(メシャン ルー)」の大きな魅力の一つ。
先述した通りかなり個性的な香りなので、会社に着けていくには向かないかもしれませんが、オフの日はとても活躍することと思います。
かといって香りだけが独り歩きすることもありませんので、ラフなファッションとともに「アクセント」としてまとっていただくと、自身のセンスアップにも繋がるでしょう。
季節や年齢も関係ありません。
ニッチ香水が気になる、今まで嗅いだことのないような香りを探している、という方にぴったりな1本です。
まとめ
ラルチザンはテーマ設定がとても興味深く、香り好きの皆さんの好奇心をくすぐるものが多いです。
今回ご紹介した「Méchant Loup(メシャン ルー)」は、そんなラルチザンパフュームの中でも知的で遊び心にあふれた1本。
ニッチフレグランスに熱い視線が注がれているいま、ラルチザンの伝説的オードトワレで嗅覚の引き出しを広げてみてくださいね。