バイレードは、2006年にスウェーデンのストックホルムで設立された香水ブランドです。

今ではコスメやファッションアイテムも販売され、世界40か国で展開するなど、その勢いは留まるところを知りません。

さてその香りは創設者ベン・ゴーラム氏のエモーショナルな体験をもとに作成されているのですが、それぞれのテーマは国際的かつ哲学的なものです。

例えばメキシコの「死者の日」を模した香りであるとか、フランスの詩人ボードレールを題材にした香りなどが存在します。

そのような文化的なテーマと自身の記憶を結びつけているので、古めかしいタイトルであっても、現代という時代における存在意義は強く残ったままです。

もちろん上辺だけではない、深い香りが特徴的ですので、ヨーロッパをはじめとするファッショニスタには欠かせないマスト・フレグランスともなっています。

今回ご紹介するのは、そんなバイレードの人気作品の1つ、「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」です。

ダークでミステリアスなその世界観を解説していきます。

「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」が生まれた背景

バイレードの創設者ベン・ゴーラムは、音楽を愛する人でもあります。

「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」が生まれた背景には、ジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」(1964年)があり、これを意識したネーミングであったと言います。

ちなみにヘイズは「かすみ」や「もや」を表す言葉であり、さらにパープル・ヘイズという名のマリファナも実際に存在します。

ということで、オードパルファム「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」の側面には、「幻覚」というテーマがあるとのことです。

またこの香りは60年代のヒッピー精神に捧げられていて、ゴーラム氏がアメリカ・ヨセミテ公園で経験したロッククライミングの回想も含まれています。

つまり、「幻覚」に「大自然で解き放たれる精神」をミックスした、なんともヒッピーらしい香りであるのです。

香りのメインはココナッツとカカオ、そしてパチュリ。

一見穏やかでハッピーな香りのイメージですが、実際にはそんなことはありません。

驚くほど「陰」で、アンニュイなフレグランスなのです。

それではどのような香り方をするのか、詳しく見ていきましょう。

幻覚のココナッツ、自分も他人も惑わす香り

VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)オードパルファム

トップノート:ココナッツ、ハイビスカス、ベルガモット

ミドルノート:パチュリ、チュベローズ、オスマンサス

ラストノート:パチュリ、ムスク、カカオ、アンブレッテ、カシュメラン

発表年:2009年

調香師:ジェローム・エピネット

対象性別:ユニセックス

トップノートは、ココナッツウォーターとハイビスカスの「トロピカルな香り」…と言いたいところですが、「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」においては全くそんなことはありません。

というのも、ミドルノートのパチュリがしっかり効いているため、最初から格式の高さがしっかりと現れ、トップノートの香料をどこか文化的・知的財産のようなものに押し上げているのです。

これは非常に格好の良いオープニングと言えるでしょう。

温かさもあります。60年代のアメリカを彷彿とさせるような熱気に、とろんとまどろんだ香り。しかしその裏では鋭く尖った「革命」のようなテーマをも感じることができます。

始まりからわずか5分でこの相反する香りを堪能することができるので、なかなかに面白いフレグランスであるのは間違いありません。

ミドルノートは、パチュリの凛々しさはそのままに、少しトーンダウンして陰な雰囲気が現れ始めます。

これはチュベローズやオスマンサスの芳香が効いているからでしょう。

先のココナッツやパチュリがねっとりとしたフローラル香に絡み、「幻覚」とも言える陶酔ゾーンに入っていきます。

ラストノートではカカオがミルクチョコレートのような甘さを、ムスクがモワっと煙のような雰囲気を出していきます。

ここからはもう、現実世界か妄想の世界か境目が分からなくなるほど「曖昧」なイメージが続きます。

ココナッツとパチュリは未だ健在なのに、時折現れるフローラルやカカオが見え隠れして…

と、不思議な世界に嗅覚も「?」となるかもしれません。

ただきちんとしているのは、これが女性的とも男性的とも断言できないこと。

パチュリは男性的なのですが、ココナッツやフローラル香が良い感じにそれを中和しているので、逆を言えば「完璧なユニセックス香水」となります。

そのパチュリは最後の最後まで残り、気品を伴ってゆっくりとフィニッシュします。

官能的だったり、悪そうなイメージの香水はこの世の中に数えきれないほどありますが、香りで純粋な「陶酔」を味わえるのはこの「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」だけかもしれません。

もちろん身体に害のある香料は入っておらず、これはあくまで調香師ジェローム・エピネットの技術によるもの。

その不思議な香りに、自分も他人も惑わされてしまうことでしょう。

ミステリアスなあなたに。自分ワールドに誘うフレグランス

「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」が似合う年齢層には、香りのごとく、これといった決まりがありません。

学校やオフィスでもかろうじてまとえる香水ですが、どちらかというとプライベートだったり、あるいは会社務めでない自由業の人にお勧めしたい香りです。

印象がダークでミステリアスなため、そういった雰囲気を元から持っている人、またはそうなりたい人、そういう気分の時につけたい香りであるとも言えます。

ただ着けたら最後、その世界に自分も周囲も引き込まれてしまうかもしれません。

「官能的」とはちょっと違うのですが、なにかこう、不思議な引力でその人のワールドに巻き込まれていくような感覚があります。

季節は特に関係ないでしょう。

持続力・拡散力も高くなく、身構えずにまとえる香水ではあります。

バイレードファンの方でしたら必見です。

このように曖昧で不思議な魅力を持つのがバイレードですから、一度試して、肌にのせた時の香りを直に堪能することをお勧めしたいです。

もう一つ「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」の興味深いところといえば、自分が感じる香りと他人が感じる香りが異なっていることです。

そういった点も含めて、この上なくミステリアスなフレグランス、と太鼓判を押せるかもしれません。

まとめ

バイレードの中でも不思議でミステリアスな香り、「VELVET HAZE(ヴェルヴェット ヘイズ)」をご紹介しました。

文化的で興味深いフレグランスがまだまだ存在するバイレード。

嗅覚の引き出しが広がっていくような香水ですので、是非いろいろと楽しんでみて下さい。