ラルチザンは、1976年にフランスのパリで誕生したフレグランスブランドです。

創業者は香りの科学者と呼ばれる調香師のジャン・ラボルト。

ブランド名の『L’ARTISAN PARFUME(ラルチザン パフューム)』は、フランス語で“香りの職人”を意味します。

ジャン・ラボルトは、個性的な香りを作るために天然香料を用いた実験を重ね、多くのフレグランスを製作しました。

最初のコレクションは大好評を博し、香水愛好家のあいだで“香りの職人”と呼ばれるようになったのです。

ラルチザンは創業以来、現代的なビジョンを持って香りを追及。

著名な調香師により計算され尽くされたフレグランスは、アーティスティックな香りと表現され、ニッチパフュームとして変わらない人気を博しています。

さて、ニッチブランドらしいユニークなテーマの香りを発表しているラルチザンですが、バナナの香りが存在するのはご存知でしょうか。

実は、バナナの香りはラルチザンの誕生のきっかけとなりました。

創業者のジャン・ラボルトの友人が、パリで行われるショーのバナナの衣装に合わせた香りを作ってほしいと、彼に依頼したことがバナナのフレグランスと「ラルチザンパフューム」誕生のきっかけだったのです。

ローズでもなく、ムスクでもない、とても珍しいバナナの香り「BANA BANANA(バナ バナナ)」をご紹介したいと思います。

なぜバナナ?この香りが生まれた背景

なぜ、「バナナ」という他に類を見ない香りが作られたのでしょうか。

遡ること40年、その試みはパリの伝説的なキャバレーを舞台に始まりました。

ジャン・ラボルトの友人は、パリの老舗キャバレー「フォリー・ベルジェール」のダンサーの振付師をしていました。

ある日、ジャンは彼女からダンサーたちが着るバナナの衣装に合わせたバナナの香りを作ってほしいと依頼されるのです。

もちろん、ラルチザンを創業する前のことです。

彼はバナナに、ジャスミンの香りを混ぜて「熟したバナナの香り」を作りたいと考えました。

しかし、繊細で変わりやすいジャスミンの香りとバナナの香りは相性が悪く、この試みは失敗に終わってしまうのです。

それ以降、ジャンにとってバナナの香水作りは自身の課題であり、宿命となりました。

そして調香にのめり込んだ自身の経験も糧となり、ラルチザンを立ち上げることを決意します。

またジャンにはもう一人、スター調香師のジャン・クロード・エレナという友人がいました。

彼の娘も調香師となり、父からジャンのバナナにまつわるストーリーを聞いたといいます。

「BANA BANANA(バナ バナナ)」は、40年以上も後にジャン・クロード・エレナの娘セリーヌ・エレナの手によって調香が成功したのです。

ミルキーで官能的なバナナの香り

BANA BANANA(バナ バナナ)オードパルファム

トップノート:ペッパー、ナツメグの皮、ヴァイオレットリーフ

ミドルノート:ジャスミン、アイリス、バナナフラワー

ラストノート:アンバー、トンカビーン、ムスク

発表年:2019年

調香師:セリーヌ・エレナ

対象性別:ユニセックス

「BANA BANANA(バナ バナナ)」のトップノートは、少しだけスパイシーです。

ペッパーとナツメグの、南国を思わせるスパイシーさで始まりますが、すぐにヴァイオレットリーフの甘いフェーズに切り替わります。

あくまでも主役はバナナ。

そしてミドルノートでは、創業者ジャン・ラボルトが失敗してしまったジャスミンの香りに焦点が当たります。

ところがそのジャスミンは花の香りではなく、見事にバナナの「少し熟して柔らかくなり始めた」頃の香りがするのです。

香料の組み合わせがどうこうより、素直に美味しいバナナの香り、といった印象です。

アイリスのパウダリーさがそうさせるのでしょうか、ミルキーでちょっと官能的な一面も。

ただのバナナが、人格を持ってしまったと言いますか、「今が一番おいしい。食べてみて!」と人間を誘っているよう。

嗅ぎ慣れているバナナの香りなのに、どことなく誘う感じも匂わせる小悪魔なオードパルファム。

ラストノートはムスク、トンカビーン、ムスクの甘くておいしい香りが漂います。

それはバナナを食べた後の満足感にも似ています。

最後、肌の上ではバナナよりもアンバーがわりと強く出ますが、それほど香りは重くなりません。

しかしミルキーさと官能性は引き続き残り、温かくてポジティブな印象でフィニッシュとなります。

バナナの香りを主役にした香水は「BANA BANANA(バナ バナナ)」しかありません。

創業者ジャン・ラボルトと調香師セリーヌ・エレナの尽力によって生まれたこの香りは、ニッチ中のニッチフレグランスといって良いでしょう。

バナナの香水とは個性的に見えますが、香り自体は私たちが慣れ親しんでいるものです。

おいしい香りであると同時に、安らぐ香り、親しみのある香りです。

セリーヌ・エレナが調香するときにイメージしたのは、明るい色調のステッチで彩られた「刺繍」だったそうです。

バナナ、ジャスミン、刺繍といった明るいワードが並ぶ「BANA BANANA(バナ バナナ)」の香りは。ラルチザンの中でもひときわハッピーなイメージのオードパルファムです。

秋冬、グルマンノートとはまた異なる印象を与えたい方に

「BANA BANANA(バナ バナナ)」が似合う季節は秋冬です。

長袖が必要で、肌寒い気候になった頃によく合いそうな、暖かみのある香り。

グルマン系の甘い香りとは異なるノートですので、フルーティでスウィートな香水をお探しの方にはおすすめです。

秋冬といえばグルマン、といった固定概念を覆してくれるでしょう。

そして先述した通り慣れ親しんだ香りでもありますので、周囲の人から親近感を持ってもらえると思います。

年齢層は上であればあるほど良いかもしれません。

「BANA BANANA(バナ バナナ)」の温かい雰囲気は、母性や父性と通じるものがあり周りを癒してくれます。

元気いっぱいの、弾けるフルーティノートとも異なります。

ちょっとした大人の色気もあるため、成熟した男女によくお似合いになることでしょう。

ステイホーム時にも最適です。

いずれにしろ、リラックスした状態・戦闘モードでない時が「BANA BANANA(バナ バナナ)」の出番となります。

おいしくて優しいバナナの香りで癒されてみてくださいね。

まとめ

「BANA BANANA(バナ バナナ)」は、ラルチザンのルーツともいえる香りです。

他の香水と一線を画す、このユニークなフレグランスは香り好きさん達の心をくすぐることでしょう。

ニッチブランド、ラルチザンのフレグランスをまとい、いつもと違う自分を演出してみてください。