1643年に創業した、フランスで最古の歴史を誇る老舗キャンドルメーカーがあります。
その名は「CIRE TRUDON(シール トゥルドン)」。
フランス国王のために生産していたという由緒正しいメーカーで、キャンドルの成分はパルマ産オイル、稲、大豆がベースの植物性となっています。
その一つ一つが今でも手作業で作られており、香りが香水のように3段階に変化するのが特徴です。
シール トゥルドンのモットーは17世紀の創業以来変わっていません。
それは、「神と王のための香り」「ミツバチは神と王のために働く」というもの。
そのためキャンドルケースにはブランドの象徴であるミツバチの巣が刻印されており、400年近く同じ紋章を使っているとのことです。
またシール トゥルドンは、キャンドルの売り上げの4%を黒ミツバチ保護プロジェクトに寄付しています。これも創業時と変わらず、フランスのノルマンディー地域の絶滅危惧種である、セイヨウ黒ミツバチを保護するプロジェクトに参加しているとの事。
そんな確固たる意志を持つシール トゥルドンのキャンドルは、100パーセント植物性のため煙やすすが出ません。
また、キャンドルの芯はコットンを編んだものです。これらすべての天然成分は人間の体に無害なものばかりなのだとか。
と、ここまでモノづくりにこだわった老舗が、2017年にフレグランスライン「TRUDON(トゥルドン)」を発表しました。
とても気になるそのシリーズから、代表作「RÉVOLUTION(レボリューション)」をご紹介します。
フランスの歴史に迫る、「王朝、革命、宗教」が香りのテーマ
非常に長い間キャンドルを作り続けているシール トリュドンですが、本格的にキャンドルに香り付けしたのはここ10年のことだったと言います。
フレグランスキャンドルを開発するにあたり、「優れた調香師たちと仕事をしたことで、今回のフレグランスを作る大きなきっかけとなった」とクリエイティブ・ディレクターのジュリアン・プリュボ氏は語っています。
さてそんなフレグランスシリーズのテーマは、王室御用達のシール トリュドンらしく大変ノーブルなもの。
「王朝、革命、宗教」の三位一体を柱とし、合計5つのフレグランスを発表しました。
その5つのフレグランスとはこちらです。
<王朝>
・「BRUMA(ブルマ)」
この香りの物語は、王女が自分の城を飛び出し、馬に乗って夜の森へ足を踏み入れていく、というものです。本能の赴くままに突き進む“野生的なセンシュアリティ”が香りに表現されています。
・「OLIM(オリム)」
「OLIM(オリム)」はラテン語で「また別の機会に」。13世紀フランスにおける王家の繁栄・封建制の衰退を描いています。スパイスが効いたオリエンタルな香りが特徴です。
<宗教>
・「II(ドゥ)」
「II(ドゥ)」はアダムとイヴのように、ものごとのはじまりを想起させるイメージで作られた香り。みずみずしいグリーンノート&シダーウッドやインセンスが力強く香ります。
<革命>
・「RÉVOLUTION(レボリューション)」
フランス革命をテーマとし、激しい感情のぶつかり合いから平和の訪れまでを香りの変化で表しています。そのためスモーキーな香りからミステリアスなインセンスへと広がりを見せ、シリーズでも一番ドラマティックな仕上がりになっています。
・「MORTEL(モーテル)」
「MORTEL(モーテル)」とは“不死”の反対語で、死に得るなどという意味を持っています。複雑ながらも、ブラックペッパー、ミルラ、フランキンセンスの3つが素晴らしい調和を作り上げる1本です。
それでは最も「フランスらしい」と言える香り、「RÉVOLUTION(レボリューション)」
をピックアップして細かく見ていきましょう。
王まで倒したフランス革命。激しさの裏に文学的な香りが広がる
RÉVOLUTION(レボリューション)オードパルファム
トップノート:エレミ
ミドルノート:アンジェリーク
ラストノート:シダーウッド、パピルス、バチョリ、ケード、インセンス、ピュアシスタス、オポポナックス
発表年:2017年
調香師:リン・ハリス
対象性別:ユニセックス
今でも語り継がれる18世紀のフランス革命。
1789年7月14日に始まったこのフランス革命は、現在もフランスで国民の祝日(7月14日)となっているほどです。
これは、横行する「権力」に対する庶民の反乱です。
この革命によって宮廷貴族の特権等は廃止され、フランスの近代化が始まりました。
「RÉVOLUTION(レボリューション)」は、約6年に渡ったフランス革命の「始まりと終わり」を告げる香りです。
トップからスモーキーさが目立ちます。
これは、当時のパリの通りが煙や小銃の香りで一杯だったことを表しています。
また血生臭く、庶民の激しい怒りといった感情も、この激動のトップノート〜ミドルノートにかけて大変よく表現されています。
そこにラストノートのインセンスが香ってくると感情は段々と落ち着き、辺りの空気を一気に和らげます。まるで平和の訪れが近づいているのを知ったように。
「RÉVOLUTION(レボリューション)」は香水として非常に完成度の高い1本です。
人間の感情や性格が一つでないことを物語っていて、ミステリアス、激情、品、誠実さ…などさまざまな移ろいが香りの変化と共に表現されています。
革命=人間の感情、在り方の変化、広がりでもある。
「RÉVOLUTION(レボリューション)」とはそんな世界観をみせる、文学的なフレグランスでもあるのです。
芸術や文学を愛する方へ。アウトドアではない1本
「RÉVOLUTION(レボリューション)」は先にご紹介した通り文学的な香水ですので、アートや文学といった文化的な趣味を持つ方に是非試してほしい1本です。
年齢は20代半ば以降でしたらどなたでも。
ユニセックスタイプなので性別の垣根もなく楽しめます。
ただシール トリュドンだけあって、リュクスでノーブルな雰囲気はあります。
そのためこちらはアウトドアより屋内、海や湖といったリゾートよりも美術館やホテルといった「やや内向的」な一面を持つ香りです。
服装にも同じことが言えて、ジャケットなどピシッとした装いが似合います。
さらには、パリ、ニューヨーク、東京、大阪、ロンドン、ドバイ、上海など、世界のビジネス都市に似合う香りでもあります。
フランス革命が起こったパリに似合うのはもちろん、人間のパワーが感じられる大都会にこそ相応しい香りと言えるでしょう。
まとめ
日本でも徐々に知られるようになった、シール トリュドンのフレグランスラインから「RÉVOLUTION(レボリューション)」をご紹介しました。
本国フランスでは大変な老舗ブランドですが、日本ではまだ知られていないため「誰も知らないブランドの香りをつけたい」という方にはチャンスかもしれません。
「RÉVOLUTION(レボリューション)」をはじめ、香水の域を超えた素晴らしい作品が並んでいますので、気になる方は早めにチェックしてみて下さい。