世界中の人々から愛される名門ブランド、エルメス。

創業はなんと1837年、フランスの馬具工房からスタートしています。

バッグなどの革製品やスカーフ、テーブルウェアにいたるまで、その職人的かつストイックな美学にあふれるアイテムは多岐に渡り、多くの人が憧れてやまないブランドとなっています。

香水部門は1951年から始まっており、これまでには「カレーシュ」など数々の名香を発表してきました。

エルメスは今も昔も最高の香料を用いた香りを創造しています。

2004年、初めてブランドの専属調香師となったのは、カルティエなどで気鋭の香りを生み出していたジャン・クロード・エレナ氏。

彼が作る「エルメスの庭」シリーズは世界的に大ヒットし、ブランドの位置はますます確固たるものとなりました。

2014年からは初の女性調香師、クリスティーヌ・ナジェル氏が就任しており、「H24」「ラグーナの庭」など、ユニセックスかつエルメスらしい品の良さで洗練された世界観を作りあげています。

エルメスの香水の魅力は、なんといっても「強烈なテーマ性」にあります。

いわゆる「万人受け」「セクシー系」といったカテゴリーでは香水を作らず、そこからもう一歩踏み込んだ、自然をテーマとしたものやポエティックな香りが並んでいます。

今回ご紹介するのは、エルメス香水の人気シリーズ「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」です。

日本語では「不思議な水」と訳される「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」は、一体どこがどう不思議なのでしょうか。

口コミサイトでも圧倒的に評価の高い、「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」の魅力についてご紹介します。

フローラルを一切使わずに表現した女性の香り

「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」の特徴は、フローラルの香料を一切使わずに「女性」を表現したというところです。

これは当時では画期的なことでした。

2000年代前半といえば、ハリウッドセレブがプロデュースした香水が次々と発売され、甘い香りのグルマンノートが大流行し始めた時代です。

もちろんそれらにフローラル香料は欠かせないものでしたし、過去の例を見ても女性用香水にはローズやジャスミンなど、華やかなお花の香りが使用されてきました。

流行を気にせずブランド哲学を押し通すというエルメスには、老舗の心意気というものを感じずにはいられません。

そして「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」のメインとなっているのは、弾けるようなオレンジの香りと優しいアンバーです。

1945年にオレンジ色をブランドカラーとしたエルメスにとって、オレンジの香りは象徴的なものでもありました。

一方アンバーは、女性の肌の匂い、と呼ばれるほど優しく柔らかい香りです。

その二つがひとつの香水の中でぶつかることで、香りの変化は予測不可能なものに。

そしてそれこそが、「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」=「不思議な水」と呼ばれる所以なのです。

「一吹きで3度楽しめる」と使用した人の多くは言います。

トップノートからラストノートにかけて、劇的に変化する「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」。

発売から20年近く経つ今でも大勢のファンに愛される、その香りの変化を詳しく辿ってみましょう。

シャンパンの香りから女性の肌の匂いへ。そのギャップが魅力

Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)オードトワレ

トップノート:オレンジ、レモン、ジンジャー

ミドルノート:アンバー、ヴァイオレット、ピンクペッパー、ブラックペッパー

ラストノート:オークモス、シダーウッド、ベチバー、モミの木

発表年:2004年

調香師:ラルフ・シュワイガー、ナタリー・ファイツァー

対象性別:女性

「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」のトップノートは、ボトルから今にも弾けて飛んできそうなほど、フレッシュな柑橘系の香りです。

香料のひとつであるオレンジには程よい苦みと酸味があり、シャンパン・カクテルのようなイメージも。

もちろんエルメスですので非常に品が良いです。

ヨーロッパのどこか、素敵な中庭で、ランチタイムにシャンパンをポンッ!と開けるような好ましい光景が目に浮かんでくるようです。

このトップノートを「ユニセックスみたい」と表現する人もいます。

それはジンジャーやピンクペッパーのスパイスが効いているからでもあるのですが、そういった意外性を持たせたのも「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」の魅力のひとつです。

ただスパイシーさやフレッシュさは次第に薄れていき、変わって登場するのはアンバーとヴァイオレット(スミレ)の女性らしいパウダリー感です。

ここでは多くの人が「心地よい」と感じるようです。

こうしてメンズライクなトップノートから一気に柔らかくなることで、「不思議感」がますます増していくことになります。

そしてラストノートはまた変わり、今度はウッディの落ち着いた香りになります。

ベチバーにオークモスにシダー、と来ていますので、メンズ香水ほど力強いラインナップには見えるのですが、肌にのせると優しい香りに変化し大変ゆっくりと馴染んでいきます。

このラストノートこそ、完全に女性の肌の香りそのもの、と言えるでしょう。

まるで「お風呂上がりにスキンケアした後の肌」のような柔らかい香り立ちです。

ということで「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」は、オレンジとアンバーの香りを軸に、天体観測のように3つの香りがゆっくりと回っていくのです。

それはもちろん予測不能なのですが、逆を言うと、「意外性」と「オリジナル性」で私たちを十分に楽しませてくれるものでもあります。

今では「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」の他に「オー デ メルヴェイユ ブルー」、「ロンブル デ メルヴェイユ」と二つの香りも追加され、エルメスの人気シリーズの一員となりました。

年齢層は高め、ビジネスシーンにもOK

「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」は、爽やかで可愛らしい香水という訳ではないので、30代から40代の大人の女性によく似合う香りです。

先述した香りの変化は、自分だけでなく周囲にも意外性をもたらしますので、たとえばバリバリ働くキャリアウーマンの女性、そして上司の立場にある女性がまとうと一層魅力的になるかもしれません。

特にミドルからラストノートの柔らかい香りは、心に落ち着きをもたらしてくれます。

朝は柑橘系シャンパンの香りでスッキリとし、午後から夕方にかけては優しい香りで癒やされる、というのも良いですね。

香りのタイプはオードトワレですので、それほど持続時間も拡散性も強くなく、オフィスにも(可能であれば)問題ないと思います。

エネルギッシュで、決して甘くなく、ラストノートがとびきり優しい。

そんなメリハリを持つ女性、そしてエルメスの品の良さに触れていたい方に、声を大にしてお勧めしたい1本です。

まとめ

エルメスの香水は奥が深く、大変な魅力を秘めたものばかりです。

確固たる哲学・こだわりが貫かれたエルメス香水をきっかけに、香りの世界に興味を持つようになった、という人は後を絶ちません。

まるで博物館のように、素晴らしいラインナップを誇るエルメス香水。

今回ご紹介した「Eau des Merveilles Hermes(オー デ メルヴェイユ)」もぜひ試してみてくださいね。