格式高いブランドとして世界中にファンを持つカルティエ。
ジュエリーや時計といったイメージが強いカルティエですが、香水の歴史も深いのです。
世界5大ブランドの1つと言われる、格式の高いハイブランドのカルティエは、1874年にフランスで生まれました。
イギリス王室を皮切りに、ロシア、スペイン、ギリシャなど世界16カ国の王室と関係を深めており、現在ではジュエリー、時計、革製品、香水、筆記用具等も扱っているブランドです。
ラグジュアリーで洗練されたデザインのカルティエブランドは、現在でも世界中でファンを魅了し続けています。
そしてカルティエのフレグランスも世界のマダムを中心に人気です。
上品で大人っぽく、落ち着きのある香りは、甘さと可憐さを兼ね備えたカルティエならではの香り。
そんなカルティエから『レ・ゼピュール・ドゥ・パルファム』シリーズが発表されたのが2020年のことです。
「香りのスケッチ集」を意味するこのシリーズは、専属調香師のマチルド・ローランによって創造され、自然にある“瞬間”を再現した香りとなります。
今回はその中から、スズランにオマージュを捧げた「Pur Muguet(ピュール ミュゲ)」をご紹介。
カルティエの生まれた国、フランスでのスズランにまつわるストーリーもご紹介しながら、香りの魅力に迫ってみたいと思います。
5月1日はスズランの日。愛する人にスズランを
フランスでは、5月1日はスズランの日。
スズランを愛する人に贈る、という古くからの習慣があります。
その歴史は古く、なんと1561年。
5月1日に当時のフランス王シャルル9世がすずらんの花をプレゼントされ、それを気に入ったのがきっかけだそうです。
ちなみにこの日はメーデーでもあり、国民の祝日でもあります。
労働者を労うための日なので、フランス国民はよほどのことがないと働きません。
この日に開いているお店などは、普段の2倍の給料を従業員に支払っているとか。
愛する家族や恋人と一緒に過ごす日なので、スズランを贈ったり贈られる習慣が今でも引き継がれているのです。
花言葉は「幸せの再来」。
プレゼントされた人には幸せが訪れると言われています。
この日のフランスは、スズランの花でいっぱいになります。(5月1日だけは、一般の人も年齢を問わず好きな場所でスズランを売って良いそうです。)
花屋さんにはブーケや鉢植えが並び、スズランを抱えて家路を急ぐ男性の姿もあります。
もちろん香りも素敵。
清楚で気品に満ちたホワイトフローラルの代表格で、グリーン系のすっきりとした香りが特徴です。
カルティエは、フランスで愛されるスズランの香りに、どのような解釈を加えたのでしょうか。ピュアなスズランと、ハイブランドのコラボをご紹介します。
シャープで繊細。グリーン調のリアルなスズラン
Pur Muguet(ピュール ミュゲ)オードトワレ
ノート:ベルガモット、スズラン、ジャスミン、ローズ、ムスク
発表年:2020年
調香師:マチルド・ローラン
対象性別:ユニセックス
「Pur Muguet(ピュール ミュゲ)」を調香したマチルド・ローランは、「スズランはこの世で最も儚い花のひとつ」と話しています。
そのため、このフレグランスはとても繊細で、デリケートな一面を持っています。
「自然の力強さ」といったものは表現されておらず、小さなスズランの花の、触れれば落ちてしまいそうなピュアネスを再現したものです。
初めはベルガモットの明るくフルーティーなシトラス感がゆったりと広がり、スズランの瑞々しさとよく絡み合っています。
そしてスズランの清潔感あふれる、グリーンニュアンスのフローラル感が溢れ出します。
ジャスミンは蜂蜜に花粉を混ぜたようなほのかな甘さを、ローズは光沢のあるスパイシーさを与えています。
大草原に咲くすずらんを絵画に描いたような、写実性と芸術性が混じり合った香り。
クリアで甘さは控えめです。
スズランのスッキリとしたグリーンニュアンスが煌びやかに表現されている反面、あたたかな陽光を思わせる、優雅でフェミニンなフローラルがしっかりとベースに効いています。
生花のようにリアルな「スズラン」らしさを楽しめると同時に、香水としての完成度や使い心地も抜群。
特徴的なのは、「Pur Muguet(ピュール ミュゲ)」が「香り」というよりは「気配」のように辺りを漂うことです。
上品なのにどこか妖艶で、独特の存在感があり、非常にカルティエらしい1本と言えるでしょう。
ただ、そのグリーン感がどう出るかで評価の分かれやすい香りなので、試す際にはムエット(試香紙)でなく、直接お肌につけてみることをおすすめします。
大人の女性のマストフレグランス。清潔感と優雅さが生まれる
「Pur Muguet(ピュール ミュゲ)」は、すっきりとした清潔感のある香りであると同時に、カルティエのラグジュアリー性も感じられるオードトワレです。
これはおとぎ話のような香りでも、生花に寄せようと無理に頑張った香りでもありません。
『レ・ゼピュール・ドゥ・パルファム』(香りのスケッチ集)というシリーズ名に恥じない、すっと背筋の伸びた、キラキラと朝露に濡れたスズランをそのまま写し取ってボトルに詰めこんだような、崇高な香りなのです。
30代後半以降の女性には「自分にも周囲にも」非常に心地のよい香りとなるでしょう。
清潔感をプライオリティの一番とする方に、香水で自己主張をしたくない方に。
若干女性向けではありますが、大人の男性にも大変おすすめです。
マッチョなメンズフレグランスが苦手という方には「Pur Muguet(ピュール ミュゲ)」のさりげないエレガンスを身に着けるのも一案です。
少し「朝露」のようなアクア感もありますので、春から夏の「香水不毛期」にはとても重宝する香りとなるでしょう。
ラフなファッションにもきちんとした品を与えてくれ、香りが重く残ることもありません。
非常に繊細なので、肌も繊細な場所に、耳の後ろや腕の内側などにフワっと着けてみてください。
持続時間は短めですが、その儚さも本物のスズランと同じく、一興です。
まとめ
実はスズランは、ローズ、ジャスミンとならぶ世界3大フローラルと呼ばれています。
なかでもスズランは香料を採取するのがとても難しく、天然の香料はほとんど使われていません。
どの香料を用いて、どこまでスズランの香りに近づけることができるか、その香り作りも調香師の腕の見せ所なのです。
その点ではカルティエのスズランは頭が一つ抜けているといっても過言ではないでしょう。
スズランは幸福を運ぶ香りと信じられています。
「Pur Muguet(ピュール ミュゲ)」でスズランの魅力を再発見してみてくださいね。