グタールは、パリ生まれのフレグランスブランドです。

元ピアニスト兼モデル、という異色の経歴を持つアニック・グタールによって1980年に設立されました。

彼女は当初、美しきシングルマザーでもありました。

フレグランスの世界に飛び込んだのには理由があります。アニックは一人娘カミーユを出産した後、たまたま化粧品クリームの仕事に携わり、その製品の香りとパッケージが粗雑なことが気になってしまいます。

「自分だったらどうするだろう…」という想いを募らせ、ついには自分のブランドを立ち上げてしまおうとモデル業を辞め、調香師として7年間の修行に入るのです。

そして一人前の調香師となったアニックは、自らの名前を冠したフレグランスブランド「アニック グタール」を創設します。

アニック亡きあとは、娘カミーユがその意志を継ぐことに。

母譲りの感性や確かなこだわりを元にヒットフレグランスを連発。さらにブランドを発展させていきました。

2018年にはブランド名をアニック グタールからグタールへ変更し、ボトルデザインやラインナップが大きくアップデートされました。

グタールにはメンズ・レディース両方の香りが揃っていますが、レディースの香りには大変特徴があります。

まとうだけで幸福感や満足感、リラックス感などを得られる魔法のような香りで、母娘の愛情と絆を思い出させるようなハッピーなフレグランスばかりなのです。

さて今回ご紹介する「L’lle au The(イル オ テ)」は、“自然”にインスパイアされたグタールの中でも珍しい香り。

これは、カミーユが韓国の済州島を旅した際にインスピレーションを得て作られたフレグランスです。

金木犀とお茶の香りをメインとする「L’lle au The(イル オ テ)」は、グタールのどんな思いが込められているのでしょうか。

グタール初のティー・フレグランス。金木犀の香りも添えられる

「L’lle au The(イル オ テ)」は、フランス語で「お茶の島」という意味になります。

アニックの娘で現在の代表であるカミーユと、調香師イザベル・ドワイヤンが韓国の済州島を訪れた際に、茶畑と密柑が同じ土地で栽培されていた状況に感激したことから始まりました。

カミーユはブランドで“お茶の香り”を発売することを使命としていましたので、この旅によって彼女の夢がまたひとつ叶うことになります。

フランス、特にパリではお茶が大変好まれています。

もともとはエスプレッソ文化なのですが、ここ数年ではお茶ブームが到来しています。

紅茶をはじめ、日本の抹茶、中国のジャスミンティーなど、午後のリフレッシュタイムにお茶をコレクションする人も増えてきました。

また「L’lle au The(イル オ テ)」には金木犀の香りも添えられているのですが、こちらはアジアを連想させる香りとして仏香水界でも火が付き始めています。

ただグタールの発祥地フランスでは金木犀が存在していません。

そのため金木犀の香りは彼らにとって大変エキゾチックなもの。

日本人は金木犀の香りにノスタルジーを感じますが、欧米ではそもそもその記憶がありませんので、「ユートピアの香り」「アジアに思いを馳せる香り」となって現れているのです。

壮大なテーマですが、「L’lle au The(イル オ テ)」はグタールの中でも一、二を争うほどまといやすく、オフィス向きの香りでもあります。

それでは香りの構成を詳しく見ていきましょう。

主張しすぎないグリーンティーと金木犀が優しい印象に

L’lle au The(イル オ テ)オードトワレ

トップノート…マンダリン、レモン、プチグレン

ミドルノート…マンダリンブロッサム、オスマンサス、グリーンティー、フリージア、ジャスミン

ラストノート…ホワイトムスク

発表年…2015年

調香師…カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン

対象性別…ユニセックス

「L’lle au The(イル オ テ)」は、柑橘系のマンダリンと、リラックス感のあるグリーンティーがメインの、シトラス・フローラル・ウッディノートです。

トップノートからお茶の香りがフワッと浮き立ちます。

グリーンティーの苦みが柑橘系のマンダリンと綺麗に調和しており、非常に気持ちの良い香りです。

徐々に金木犀の香りがミドルノートで増していきます。

「L’lle au The(イル オ テ)」での金木犀は、どちらかというとアプリコットのようなフルーティー感が強く出ています。

全く誰からも嫌われない、爽やかな香りで、霧のように静かに広がっていくイメージがあります。

「L’lle au The(イル オ テ)」はユニセックスフレグランスですが、男性がまとうと金木犀が硬く出ることもあるそうです。

金木犀がフルーティーな半面、終始香るグリーンティーがスモーキーさも多少含んでいますので、人によっては肌の状態で印象が変わることもあると言います。

ラストノートは優しい印象のホワイトムスクがずっと残り、金木犀とお茶の香りをさらにまろやかにしていきます。

「L’lle au The(イル オ テ)」はオードトワレとありますが持続は長めです。

特にラストノートの余韻は長く、5~6時間は最後の優しいホワイトムスクを肌の上で感じることができるでしょう。

オンの日に最適。知的で優しい香り

「L’lle au The(イル オ テ)」はどんなシーンにも邪魔にならない、おとなしめな香りです。

しかし裏を返せば強い主張のない、深呼吸したくなるほど安らぐ香りだと言えます。

自然を見た時に感じるのと同じような感覚、心を撫でてもらうかのように穏やかな気持ちになれるのが、この香りの長所なのです。

似合う年齢層は20代後半以降の男女でしたらどなたにでも。

イメージは、白いスーツをさらっと着こなして避暑地へ出掛けられるようなジェントルマンや、白いロングワンピースと麦わら帽子で海辺を歩くマダム。

優雅で、自分の時間をこの上なく愛する大人の男女に似合います。

そしてもちろんオフィス向きでもあります。

グリーンティ、マンダリン、オスマンサス、ホワイトムスクと、香料は嗅覚に優しいものばかり。周囲も和むことでしょう。

お茶の香りがメインで金木犀の甘さは控えてあるので、知的な印象も与えることができますよ。

季節は問いませんが、春から初夏にかけては「L’lle au The(イル オ テ)」の優しさ、特にホワイトムスクが大変心地よく香ってくれます。

まとめ

「L’lle au The(イル オ テ)」はグタールでも人気の高い香りです。

済州島の風景から生まれた香りは、アジア人の私たちにしっくり馴染みます。

自身でまとうのはもちろん、ルームフレグランスとして部屋中に香らせたいくらい、本当にリラックス効果の高い香りです。

金木犀の優しい香りをお探しの方は是非チェックしてみて下さい。