香水業界の“不自由さ”に異論を叩きつけ、“自由”を追い求めた先に行き着いた、革命的なフレグランス・ブランドがあります。
その名は『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』、日本語に訳すと「オレンジ自由国」です。
この「オレンジ自由国」とは、1854年にボーア人によって南部アフリカに建国された実在の共和国の名前で、南部国境の“オレンジ川”にちなんで名付けられました。
創始者で調香師エチエンヌ・ドゥ・スワールは、南アフリカ出身。
そしてその後フランスに移住し、『パルファム・ジバンシィ』に身を置きながら長年ラグジュアリー香水に携わってきた人物です。
2006年には香水業界の大きな力と戦うたの独立宣言として、自身の冠ブランド『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』を立ち上げます。
南アフリカ出身のスワール氏は、大国の干渉を受けながらも自由を求めて闘った「オレンジ自由国」と大いに共鳴したのだとか。
彼がクリエーションするフレグランスは、「香りの常識を逸脱し、禁止されたものを乗り越える。規則を破るため、反抗するため、ただ存在するために作られた香り」を提唱しています。
それは、「オレンジ自由国」をめぐる人々と文化の融合や衝突、破壊、美、そして自由をテーマにし、自身の理想を重ね、香水を通してそれらを表現するというものでした。
なかなかに反骨精神にあふれたコンセプトです。
大手ファッション香水とニッチフレグランスが対峙する現在のフランスでは、後者のように“自由”を追い求める香りが増えてきるのも事実。
今回ご紹介するのは、そんな香水業界の反逆児『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』が「賢者をも狂わす魅力」と謳う香り、「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」(=クリスマスのバルコニー)です。
一筋縄ではいかない『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』の香りの世界をご紹介しましょう。
どんな賢者も陥落するバニラの香り
出典:『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』公式インスタグラムより
NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)オードパルファム
シングルノート:ハニー、タンジェリン、バニラ、スリランカ産シナモン、ニゲラ、レッドペッパー、アプリコット、パチュリ、ムスク
発表年:2007年
調香師:アントワーヌ・メゾンデュ
対象性別:ユニセックス
反骨精神にあふれたコンセプトとは裏腹に、実はとてもエレガントな『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』の香り。
調香において一切の制限と妥協をせず、香りの表現にのみ才能と情熱を集中させていることがうかがい知れます。
「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」とは、フランス語で「クリスマスのバルコニー」を意味しますが、こちらは伝統的な西洋のクリスマス・デザートを思わせる甘い香り。
リビングから漂う甘美なスイーツの香り。
バルコニー越しのサンタクロースが、仕事も忘れてしまうほどその甘美な香りに引き込まれてしまった…というような微笑ましい情景が浮かんできます。
実際にヨーロッパのクリスマスは特別なもので、一年に一度のごちそうを家族で楽しむ日でもあります。
そのデザートも格別なもの。各家庭でとっておきのケーキを用意したりします。
そしてこの「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」の香りは、まさにキャンディ系の美味しそうなグルマンノート。
ですがやはり、ただ甘いだけの香水ではありません。
「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」では最も香り高く高品質のシナモンとされるスリランカ産シナモンを使用しています。
甘い香りのするグルマン香水はたくさん存在しますが、「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」は全体的にスパイシーさを含んだふくよかなバニラが香り、人工的な“量産型”バニラとは全く異なるものなのです。
「賢者をも狂わす魅力」のあるフレグランスとは、この最高級のバニラの香りのことを指します。
人間の本能に直接働きかけ、どんな賢者もその誘惑に勝てない、甘く美しいバニラの香り。
レッドペッパーやパチュリ、ムスクといった香料がバニラの存在感をほどほどに留まらせていて、“重い”というよりは“深い”甘みが感じられることでしょう。
日本のデザートにはない、上品な西洋菓子の香りです。
香り全体の印象としては、天然香料をふんだんに使用したリッチな癒し系。きちんと感のある大人バニラなのに、とても柔らかく、この香りともに毛布に包まれたくなるような愛おしさ。
これは調合して「作られた」ような香りではありません。
ファンタジー映画に出てくる魔法使いが、愛してはいけない人間のためを思って、この世の幸を集めて1本の瓶に閉じ込めた…そんな、愛する人にプレゼントしたくなるような珠玉のグルマンノートなのです。
バニラもシナモンもパチュリも、それぞれがそれぞれの意味を持って有機的に繋がり合い、心地よい居場所をその「香りの宇宙」の中に見い出している。
協調の成果ではなく、家族のように、どの素材も伸び伸びと個性を発揮しつつも仲が良い。
そんな、ハッピーで気持ちの良いブレンドです。
とても不思議な甘い香りの体験ができることでしょう。
グルマンノートが一番綺麗に香る冬に
「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」は、上品な大人の甘さなのでシックな服装に合わせても違和感はなく、どんなシチュエーションやファッションにも対応してくれる使いやすい香りだと思います。
特に冬の澄んだ空気、寒い季節にはグルマンノートは映えます。
「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」も例外なく冬のシーンにぴったりで、冬の到来が逆に楽しみになりそうな香り。
年齢問わず、性別も超えてお使いいただけるでしょう。
「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」は、究極の癒しと安心感を追い求めた『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』からの贈り物と言えます。
“自由を愛し、自由に愛される、ある種別次元の知性を感じさせる全く新しい香水”作りをモットーとする『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』。
バニラフレグランスがお好きな方は、既存のバニラのイメージを覆す香りとして重宝しますし、甘い香りが苦手という方にも決して後悔させない1本となっています。
フランスのニッチフレグランスの本気度を確かめられる、至高の香りです。
まとめ
『ETAT LIBRE D’ ORANGE(エタ・リーブル・ドランジェ)』は、香水を“香りのジュース”と表現しています。
“香りのジュース”は最高級の“なまもの”であり、皮膚と融合されたときに初めて、それを身にまとう者と一体となり得ます。
調香や原料、製作方法からネーミングに至るまで、このような既成概念にとらわれない自由な発想はこれからも私たち香水ファンを魅了してやまないことでしょう。
リベラルに調香された「NOEL AU BALCON(ノエル・オー・バルコン)」の愛すべき香りを、ぜひお楽しみください。