ベストセラー香水を数多く抱える、クリスチャン ディオール。

ディオール・フレグランスの代名詞ともいえる名香「ミス ディオール」、世界一の売上を誇る「ジャドール」など、老舗メゾンの快進撃は21世紀の今も続いています。

創設者クリスチャン・ディオール氏はフランスのノルマンディ地方に生まれました。

芸術家に憧れパリの工房で働くうちに、木綿王と呼ばれていた財閥マルセル・ブサックの目に留まります。

1946年には彼の支援を受け、「クリスチャン・ディオール・オートクチュール・メゾン」をパリのモンテーニュ通りに開業します。

これがクリスチャン・ディオールブランドの始まりです。

ディオールは、1947年にパルファン・クリスチャン・ディオール社を設立しました。

「私が作ったドレスと香水をつけた女性が通り過ぎたとき、誰もが振り返ってしまうような香水を作りたい」

クリスチャン・ディオール氏はこのような言葉を発し、精力的に商品開発に携わりました。

80年代には「プワゾン」が世界を座巻しますが、90年代に入るともう一つの名香が誕生します。

その名は「DUNE(デューン)」。

「プワゾン」の意味が「毒」であるのに対し、「DUNE(デューン)」は「砂丘」を意味します。

創設者クリスチャン・ディオール氏が少年時代に過ごしたノルマンディー地方の砂丘をイメージしたとのことですが、ディオールが掲げた「大自然」へのオマージュとは一体?

「恐ろしいほど美しい」と言われる名香、「DUNE(デューン)」を徹底解説いたします。

モン・サン・ミッシェル湾の潮の満ち引き、「変化」を表す「DUNE(デューン)」

1991年に発売となった「DUNE(デューン)」は、フランス語で「砂丘」を意味するものです。

その砂丘とはどこにあるのでしょう?

それは、創設者クリスチャン・ディオール氏が生まれ、15歳まで過ごしたモン・サン・ミッシェル湾に面したグランヴィルという土地です。

世界遺産でもあるモン・サン・ミッシェルですが、その周囲の湾はヨーロッパでも一番「潮の満ち引き」が激しい所です。

その差は最大で4メートルにも及びます。

また年に一度か二度は「大潮」と呼ばれる満潮が訪れます。

その際モン・サン・ミッシェルは周囲を海で囲まれ、完全に孤立した修道院となります。

2022年9月10日にはこの光景が見られました。

中秋の名月をバックに、海に浮かぶ中世の修道院の姿。この世のものとも思えない幻想的な光景だったといいます。

クリスチャン ディオールの「DUNE(デューン)」は、この潮の満ち引きによる砂浜の「変化」を表した香水です。

2020年代に入った今、変化のある香水は少なくなってきました。

ところが20世紀は変化のあるフレグランスが主流で、トップノート、ミドルノート、ラストノートと劇的に変わる香りが流行したのです。

その中でも「DUNE(デューン)」の変化は群を抜いていると言えます。

アルデハイドとアイリス(あやめ)の幻想的なオープニングは、どのようなラストに着地するのでしょうか。

香水に変化を求める人々にうってつけの、「DUNE(デューン)」の香りを紐解いていきます。

「変化」そして「境目」がなくなる瞬間。女性と自然が一つになる「DUNE(デューン)」

DUNE(デューン)オードトワレ

トップノート:アルデヒド、ピオニー、マンダリンオレンジ、ベルガモット、ローズウッド、アイリス

ミドルノート:ユリ、ジャスミン、イランイラン、ローズ、ニオイアラセイトウ

ラストノート:サンダルウッド、アンバー、パチョリ、ムスク、ベンゾイン、バニラ、オークモス

発表年:1991年

調香師:ドミニク・ロピオン、ネジラ・バルビル、ジャン・ルイ・シュザック

対象性別:女性

トップノートはハーブのローズウッドが非常に目立ちます。

自然と調和した海岸の香りとも言えますが、力強く少し男性的で、いきなり意表を突かれてしまいます。

そのローズウッドに、90年代に大流行したアルデヒド(合成香料、洗濯物のような石けんの香り)とシトラスが重なっていきます。

どちらかというとユニセックス香水のようなオープニングで、「中世的」という概念を意識しているのがここで見受けられます。

ところがミドルノートでは劇的に香りが変化します。

豊かな花々の香りが広がり、先のハーブは「縁の下の力持ち」的な存在に身を引いてゆきます。

このフローラル群が非常に綺麗なハーモニーを奏でています。

トップノートのアルデヒドと相まって、パレスホテル(五つ星以上)で使われるような上品で優しい石けんの香りに。

このミドルノートは美しいという言葉が陳腐に聞こえるほど美しいため、トップノートで諦めてはいけません。

そしてラストノートは心身の緊張がほぐれていくような、癒しのウッディに変わります。

さてここまで来ると、「変化」はなくなり境目もなくなります。

自身の心・肉体が自然と一体化し、迷いや悩みが潮の満ち引きの中に溶けていくような瞬間です。

トップノート、ミドルノート、ラストノートの変化は激しいものですが、不思議と主張は強くありません。

1本のフランス映画を見ているような、哲学的で穏やかで美しい香水となります。

20代以降の女性に。香水愛好家は持つべき香り

クリスチャン ディオールの香水を一度は試したことがある、という女性は多いと思います。

「DUNE(デューン)」はディオールを愛する人はもちろん、そうでない香水愛好家にも、ぜひとも試してもらいたい1本です。

というのも、今後このような香りは発表されないかもしれない、という理由によるものです。

変化に富み、女性らしい香水がどんどん姿を消している現在。

フェミニズムの対極にあるような香りですが、これはこれで、「在りし日の名香」として大切に持っておきたいフレグランスと言えるでしょう。

「DUNE(デューン)」のイメージは正統派の美人。

美人であるが故、近寄りがたい香水だとも言えます。

しかし、モノクロの映画に出てくるような正統派美女をイメージするのにこれほどぴったりな香りは他に存在しません。

なおかつ高級石けんのような香り立ちをしますから、柔らかく知的で「人当たりの良い」印象を周囲に与えることができます。

そのためオンでもオフでも活躍しますし、例えば“一回り上の年代の方と約束がある日”などにも使えます。

季節はオールシーズンOKで、20代以降の女性であればどなたでも。

ただただ「美しい」香水をお探しの方に胸を張ってお勧めしたい1本です。

まとめ

クリスチャン ディオールの名香の一つ、「DUNE(デューン)」をご紹介しました。

90年代以降の著名な香水たちに影響を与えたこの香りは、もはや「一つの文化」と言えるかもしれません。

口コミサイトでも高い評価を持つ「DUNE(デューン)」の魅力を、ぜひとも感じてみて下さい。