2021年7月、『Aesop(イソップ)』は新たなフレグランスコレクション「Othertopias」(アザートピアス)を発表しました。

この「Othertopias」は、「過去と現在」「現実と非現実」「この場所とあの場所」など“曖昧な境界線”がインスピレーション源となっているのだとか。

イソップのフレグランスを長きに渡り担当してきたバーナベ・フィリオンとのコラボレーションのもと、「Miraceti(ミラセッティ)」「Karst(カースト)」「Elemia(エレミア)」の3種類のオードパルファムがラインナップされました。

このコンセプトは非常に興味深いものです。

「Othertopias」は、ある空間の中には対照的に別の空間が存在するという概念に着想を得ています。

つまり、境界線を曖昧にすることで私たちの感覚を刺激するという、かなり芸術的なコンセプトを持っているのです。

また3つの香りのどれもが哲学的で、SF映画や小説のような世界観さえ彷彿とさせます。

そして、「Othertopias」とは“もうひとつの楽園”の意をもつ造語。

『Aesop(イソップ)』は、“ここではないどこか”という思いを込めて、その名をつけたといいます。

オーガニックなオーストラリアのブランド、というイメージの強かった『Aesop(イソップ)』。フレンチブランドのような哲学的ニュアンスを持つ「Othertopias」の発表な正直なところ意外でした。しかし、その香りはどれも、「なるほど」と唸ってしまうほど素晴らしいものばかりだったのです。

3つの哲学的なテーマ

「Miraceti(ミラセッティ)」は“船”がコンセプトです。海の静けさと荒れ狂う大波、振り子のように揺れ動く水平線、平和でありながらも孤立した世界を表現しています。

そして「Karst(カースト)」は“海岸”がイメージソース。地中海の荒々しい海岸や、海岸に咲く花に着想を得た香りです。

3つ目の「Elemia(エレミア)」は海岸を越えた先にある“荒廃の地”をインスピレーション源としています。

コンクリートを表した硬い香りと、生命力あふれる苔や野草の香りのコントラストが、文明と共存する“世界”を表現しています。

今回ご紹介するのは、この3つのなかでもいちばん柔らかくて温かい香りの「Karst(カースト)」です。温かいといっても、ムスクやアンバーなどのアニマリックな温もりと同じものではありません。

「Karst(カースト)」には、オーガニック、とりわけ植物をリスペクトを置く『Aesop(イソップ)』ならではの技が光っているのです。そしてその香りからは今まで知ることのなかった、植物の豊かな「表現力」を感じ取ることができるはずです。

それでは、『Aesop(イソップ)』が考える“海岸”とはどんな香りなのか、ご紹介しましょう。

地中海の石灰、リズミカルな波を感じる香り

Karst(カースト)オードパルファム

トップノート:ジュニパー、ピンクペッパー、ベルガモット

ミドルノート:ローズマリー、セージ、クミン

ラストノート:ベチバ―、サンダルウッド、シダー

発表年:2021年

調香師:バーナベ・フィリオン

対象性別:ユニセックス

ミネラルノートが特徴の「Karst(カースト)」は、“海岸”に焦点を当てたオードパルファムです。

そしてこの香りは、地中海沿いに咲く「花」や、地中海の「石灰質」に着目したウッディノート。少しスモーキーなところが特徴です。

日本とは違い、ギリシャやトルコなど、多くの地中海沿岸の土地には石灰がかなり含まれています。現地では石灰が安く手に入ったため、壁の素材としてよく使われました。ギリシャの海沿いの家壁が白いのはそのためです。

「Karst(カースト)」のトップノートからは、そんな石灰の「ミネラルの香り」が感じられます。熟成ワインののような、そのミネラル香はとてもアロマティック。

そしてアロマティックな中にも、シャープで、やや埃っぽい香りが感知できます。

ジュニパーベリー、ピンクペッパーは香水によく用いられる香料ですが、なんだか「Karst(カースト)」の奥底には「渇き」があるのです。

それは、波の飛沫(しぶき)をひたすら待っている、海岸の石灰石を表現しているかのようでした。

太古から繰り返されてきた海岸の「営み」のようなものを、このドライなトップノートから感じるでしょう。そして少し「遠い」印象も受けます。

ミドルノートからラストノートにかけては「嵐」を思わせる香りが広がり、断崖に根を下ろす草木と海岸のダイナミックさを想起させます。

初めは海辺とその奥にある草の香り、そしてそれから、どこか金属質のほろ苦さのようなものが出てくるのです。

今までになかった「海」の香り

「Karst(カースト)」は海岸を表現した香水ですが、いわゆる「マリンノート」とは似て非なるもの。イメージは、海やビーチという単純なものではなく、もっと奥深くて広大です。

ありとあらゆる海岸が今までに辿った軌跡、そして気の遠くなるような「時間」を表現する、遠く情緒的な香りでもあります。

そこにはリズミカルな潮の満ち引き、すぐに過ぎ去る一瞬のはかなさも存在しているといえるでしょう。

晴れ渡った、天真爛漫な地中海というよりは、早朝の(しかも靄のかかったような)、幻想的な海辺の風景を思い起こさせる香りです。

それは、「Othertopias」のコンセプト通り、「現実と非現実」「日常と非日常」の狭間を行ったり来たりするような、ちょっと曖昧なもの。

全体的に、冷えていて透明で無機質、ですが柔らかさもあります。

しかし特筆すべきは、植物系の香料だけでここまでの奥深さを表現する『Aesop(イソップ)』の実力と言えるでしょう。

他の香水メゾンが打ち出す「海」の香りとは一線を画す香り、そして単純ではない何かを感じさせる香り。

『Aesop(イソップ)』ファンの方もそうでない方も、「そう来たか!」と感嘆せずにはいられない、素晴らしいオードパルファムです。

自己の在り方を模索するあらゆる大人へ

出典:『Aesop(イソップ)』公式インスタグラムより

「Karst(カースト)」は、自己の在り方を模索するリアリストのための香りです。

この豊かな表現力を持つ香りは、五感を徹底的に刺激するものであり、感性豊かな大人の男女にこそおすすめです。

年齢層や季節は全く問いません。

しかし、『Aesop(イソップ)』らしいお洒落さとラグジュアリーさがありますので、清潔なルックですとその良さが発揮されると思います。

落ち着いた音楽とともにこの香りを身にまとえば、普段の暮らしがもっともっと素敵なものとなるでしょう。

また寝香水にも向いています。

いずれにしろ、「動」よりは「静」、「陽」よりは「陰」の雰囲気を持っているので、自分の内側を見つめ、自己と向き合いたいときに最適な香りであると断言できます。

まとめ

ボタニカルスキンケアで人気の『Aesop(イソップ)』から新登場した「Othertopias」シリーズは、どれも深い世界観が魅力的です。

その香料も厳選された素材で作られたナチュラルなものなので、安心して使うことができますね。

今、旬のユニセックス香水、大人気の『Aesop(イソップ)』でしたら、メンズへの贈り物としても喜ばれるはずです。大変ユニークで哲学的な「Karst(カースト)」の香り、ぜひこの機会にお試しくださいね。