香水通が一目置くパリのフレグランスブランド、フレデリック マル。

「リップスティックローズ(口づけの薔薇色)」、「ムスクラヴァジュール(破滅のムスク)」「アウトレイジャス(常識外れ)」などなど、ミステリアスで知的な名前の香水をいくつも発表しています。

創立は2000年。今年で22年を迎えるフレデリック マルのオーナーは、クリスチャンディオール・パルファムの創業者の孫にあたる人物です。

まさに香水界のサラブレッドであり、かつ、現代におけるラグジュアリー香水の先駆者でもあります。

フレデリック マルのコンセプトは、「エディション・ドゥ・パルファム(香りの出版社)」。

12人の著名な調香師を束ねる「編集者」として、文学的な香りを世に送り続けているのです。

そんなフレデリック マルの最新作は、自然の恵みにインスパイアされた「STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)」です。

自然とはいっても、植物や庭園の香りではありません。

世にも珍しい、「ジャングル」の香りなのです。

現実を超越した、活力あふれるジャングル。

私たちのイメージするジャングルと、フレデリック マルが提案するジャングルの違いとは。

「エディション・ドゥ・パルファム(香りの出版社)」が挑戦する、新たな自然の香りが2021年に誕生しました。

合成香料によるジャングル・自然の香り

「天然香料が良くて、合成香料が悪いという考えに私は異を唱えます。そもそも合成香料を使わない調香師に良い調香師はいません。天然香料だけを使用するということは古臭いフレグランスを生み出すことに他ならず、時代は変わっているのです」

と、フレデリック マルは述べています。

つまり、現代においては天然香料のみを使用することは不可能。

言い換えれば、合成香料でイメージ通りの香りにすることこそが、調香師の腕の見せ所となっています。

合成と聞くと「不純物が混じっている」というイメージを抱いてしまいますが、香水界においてはごく当たり前のことです。

たとえばアンバーやムスク。

今は動物保護法で昔のように動物から香料を採取することはできません。

スズランやカーネーションもほぼすべてに合成香料が用いられています。

現在、どれだけ素晴らしい香料が人の手によって生み出されているか、(それを教えてくれるメディアもあまりないのですが)というのを知らしめてくれるのが、フレデリック マルなのです。

そしてこの「STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)」は、「合成のジャングル」という意味になります。

フレグランスブランドの多くがネーミングに用いたくない「シンセティック」という言葉を、フレデリック マルはあえて採用しました。

しかし、その香りは驚くほどの素晴らしさです。

森でも庭園でもなく、本当にジャングルの鬱蒼としたイメージが働いてしまうのだから不思議です。

ナチュラリスト、オーガニックコスメ愛用者にもおすすめしたい「STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)」の香りをさらに深く解説していきます。

本格的なグリーンの香り、みなぎるワイルドさも

STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)オードパルファム

トップノート:ガルバナム、ブラックカラント、バジル

ミドルノート:スズラン、ヒヤシンス、ジャスミン、イランイラン、アーモンド

ラストノート:オークモス、パチョリ

発表年:2021年

調香師:アン・フィリッポ

対象性別:ユニセックス

「STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)」の世界観は、とてつもない勢いでスタートします。

辺りに煙が立ち込めて、瞬時にジャングルに飛ばされたかのようにグリーン一色に情景が変わるのです。

トップノートで使われているガルバナムは、旧約聖書に出てくるとても古い香りの一つ。

旧約聖書ではフランキンセンスと一緒に混ぜて使われたことが書いてあるほどです。

グリーン系ノートの代表格で、深い深い森の奥地で深呼吸をしているような気分になります。

ブラックカラントやバジルのピリリとした香りがアクセントになり、「フレッシュさ」よりも「生命力あふれる新緑」の方が目立ち、エネルギーに満ち溢れています。

ミドルノートはスズラン、ヒヤシンスのフローラル感が少し加わりますが、「可愛い」感じにはなっていません。

ワイルドさはそのままに、奥行きが出ていき、ジャングルの奥地で水場に辿りついたようなシャープなイメージです。

肌の上では不思議な化学反応が起こります。

というのは、イランイランとアーモンドのスイートさが、えぐみのある先のグリーン感をマイルドにさせており、より肌に「くっつく」ように上手くブレンドされているのです。

アウェイだったジャングルが、気が付けば自分の敷地内にいるように、居心地がどんどん良くなります。

ラストノートではオークモス(苔)とパチョリが加わり、さらに深淵部へ。

鮮やかで豊か、ミステリアスで挑発的。

合成香料で、これほどヴィヴィッドな世界観を出せるのは、やはりフレデリック マルだけかもしれません。

これまでの文学的な香りからは想像もつかないほどワイルドで、力強い1本です。

新しい森林の香り。グリーンノートを愛するすべての人へ

「STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)」は、グリーンノートの中でもひときわ鮮やかでモダン、そしてミステリアスさを誇る香りです。

グリーンノートで有名な香水にはシャネルの19番、エルメスのナイルの庭がありますが、

「STNTHETIC JUNGLE(シンセティック ジャングル)」はそれらがもっと「カラフル」に、現代風になったイメージです。

そしてそれはナチュラル系というよりも、きちんとした香水です。

ほのかに香らせたいという方にはいささかパンチのある香りですが、シャネルの19番以降、良い香りが見つからないという方にはかなりお勧めできるオードパルファムです。

自然からインスピレーションを取り入れながらも、ハイクオリティな合成香料をブレンドするというフレデリック マルらしいアプローチから始まっていますので、グリーンノートがお好きな方には必ずや目に留まる香りとなるでしょう。

年齢層は、他のフレデリック マル香水と同じように、高めの方が合うと思います。

優しさはありますが甘さはありませんので、春夏の汗ばむ季節にも良く似合います。

自立した印象や「デキる人」の印象を演出したい時に、ぜひ使ってみてほしい香りです。

まとめ

香りは気持ちをあげてくれるアイテムであるとともに、「こうなりたい」という憧れに近づけてくれるアイテムです。

フレデリック マルには特に、その力があるように思えてなりません。

調香師に一切の制限を設けず、最高のテクノロジーで香りを創造していく「香りの出版社」に皆さまも触れてみてはいかがでしょうか。