パリでスタートしたニッチフレグランスブランド、セルジュ ルタンス。

異色のアーティスト、セルジュ・ルタンス氏が率いるメゾンで、彼はファッション、メイク、写真、映像など、さまざまな分野でその才能を発揮してきました。

セルジュ ルタンスのフレグランスはすべて独創的なコンセプトを持ち、オリジナルでクリエイティブ。

フランスではもちろん、日本でもハイクラス&個性派フレグランスとして香水ファンのハートを捉えて離しません。

たとえば、フランスではあまり好印象ではない花をわざとメインの香料にしてみたり、ルタンス氏が大好きだったバタートースト、はたまた毒性の高い植物を香水にしてみたり…。

素材にこだわるだけでなく、こうした一捻りあるテーマ性で芸術性の高い作品を発表し続けています。それらを納得いくまで調香するのは、ルタンス氏の片腕である調香師のクリストファー・シェルドレイク氏。

セルジュ・ルタンス氏が自らアコードを作り出し、調香師であるシェルドレイク氏がそれを忠実に再現するのです。

こうして数々の名香が存在するセルジュ ルタンスですが、中でも名香中の名香と誉れ高いオードトワレがあります。

それが、今回ご紹介する「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」です。

「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」は、力強く雄々しい“ウッディ”を女性的にした革命的香水です。

2022年は、そんな名香が誕生してから30周年という記念すべき年でもあります。

今だけ限定で発売されているボトルデザインもご紹介しながら、その香りの魅力についてご紹介していきます。

ウッディノートを初めて女性用香水に

「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」が発売された1992年は、香水界の革命の年でもありました。

香水界にはこの年、3つの新しいノートが加わっています。

1つはイッセイ・ミヤケの「ロー ド イッセイ」による“オゾンノート”。

もう1つはティエリー・ミュグレーの「エンジェル」による“グルマンノート”。

そして最後に「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」の“ウッディノート”となります。

ちなみに「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」の意味は、日本語に訳すと「木のフェミニティ(女性らしさ)」です。

つまりこれは、従来メンズ香水にのみ使用されていたウッディノートが、セルジュ ルタンスの手によって初めて女性用香水に使われたことを意味します。

1990年代は世界でユニセックスブームが巻き起こった時代でもありました。

カルバンクラインのCKワンも世界的大ヒットとなりましたが、セルジュルタンスはそれよりも前に、女性にとっての「メンズライク」な香りをシダーウッドによって表現していたのです。

しかし実は「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」は、セルジュ ルタンスが資生堂のために創った香りでした。

1992年、パリのルーブル美術館近くにあるサロン・ドゥ・パレ・ロワイヤル・シセイドー(現在のルタンス本店)で最初に発売されています。

従ってこれは完全に資生堂のヨーロッパ戦略の商品であり、逆に日本での販売はなかったそうです。そんな神秘性もあり、この女性向けウッディ香水という斬新さが当時の香水業界に与えた衝撃は大変大きいものでした。

それから30年経った今も、衰えることなくファンの間で愛されているのが「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」です。

気体の宝石、気品あるクラシカルなウッディノート

Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)オードトワレ

トップノート:シダーウッド、シナモン、プラム、ピーチ

ミドルノート:クローブ、イランイラン、ヴァイオレット、オレンジフラワー、ジンジャー、ターキッシュローズ

ラストノート:バニラ、ムスク、サンダルウッド、ベンゾイン

発表年:1992年

調香師:クリストファー・シェルドレイク

対象性別:ユニセックス

「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」のトップノートは、最初から雄々しいシダーウッドとスパイスの香りが漂います。

「これが本当にフェミ二テ(女性らしさ)なのか?」と、女性らしいウッディを期待している人は少し不安になるようなオープニングです。

ただ圧倒的な品の良さはあります。数分ほどこのまま上質な木のイメージが続き、スパイスと混ざることで針葉樹のすっとした清涼感も感じられます。

そしてミドルノートでは、驚きの展開が待っています。

ファンの方の多くは「この展開にやられた」といっても過言ではありません。

ここで「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」は、一気に女性らしく変化するのです

男らしいシダーウッドはプラムやピーチの果汁と花々に包まれて柔らかな香りに。

ほんのり甘く、けれどダークで静かな、冷たいフローラル&フルーティの香りが漂います。

「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」の一番の魅力は、この完璧なバランスにあると言って良いでしょう。

クローブやシナモン、ジンジャーといったスパイシーな香りも健在ですので、人によってはお香のようなスモーキーな香りと感じるかもしれません。

まろやかなのに、すっきりしたウッドの香り。

その上にそっとベールをかぶせたような、やや内省的なフローラル。

静かで、落ち着いていて、透明感があって、時間がまどろんでいくような、儚くも美しい香りです。

ラストノートでは、ふくよかなサンダルウッドとベンゾイン、ムスクが肌に残ります。

力強いトップノートには多少びっくりしますが、ミドルからラストにかけて、「木のフェミニティ」を存分に堪能することができるでしょう。

男性も女性も。ユニセックスという枠を超えた中立的な香水

「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」のコンセプトは、本来男性香水に使用されていたウッディノートに女性らしさを見つける、というものですので、当然男性が使っても女性が使っても何の問題もない香りです。

ただもう少し付け加えますと、このフレグランスはユニセックスというより、女性が「男性らしい心になりたい時」、逆に男性が「男であることを忘れたい時」につけたくなるような香りをしています。

男(または女)であることも、年齢も、顔も、社会的地位や立場も、この香りの前では意味をもたない、気にする必要がない…。

我々が日頃行っている“カテゴライズ”の問題を、「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」は一切忘れさせてくれるのです。

ふたつの思いは同次元に同列で存在して良い。どちらかに振り切らなくても良いのだ。

そういった「曖昧」の良さを、素晴らしいバランス感覚で教えてくれるのが「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」です。

年齢層は高めの方が良いでしょう。

20代後半以降でしたら何歳でもOKです。季節は特に問いませんが、イメージ的にも秋が一番良さそうですね。

上品な1本ですので、オンでもオフでも活躍するのは間違いないでしょう。

まとめ

2022年は、「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」の30周年を記念し、限定仕様のボトルも登場しています。

“木の女性”をイメージしたグラフィック風のイラストは、これぞルタンス!というようなクラシカルなムードが漂っています。

ファンの方も、これから試したいという方も、名香「Féminité du Bois(フェミ二テ デュ ボワ)」の素敵なデザインと香りをご覧になってみてください。