1962年に創業したイヴ サンローランは、女性のパンツスタイル流行の火付け役となったブランドです。

タキシードを女性服へと仕立てた「スモーキング」に代表され、これは当時のファッション界に旋風を巻き起こしました。

しかし当初の反応は否定的なものが多かったといいます。

今でこそ当たり前となったパンツスタイルですが、当時の人々にとって中性的なファッションは新しすぎたのかもしれません。

ただ今日では、イヴ サンローランは「男性衣装を女性でも身につけることができる」ということを広く示した功労者でもあります。

2008年にサンローラン氏は他界していますが、それから年月が経った今でも世のデザイナーたちに大きな影響を与え続けており、中性的・両性的スタイルの代表と言えるブランドとなっています。

さて香水の分野でも、イヴ サンローランにはたくさんの名香が存在しています。

代表作「スモーキング」の蝶ネクタイをあしらったボトルが魅力の「モン パリ」、恋が叶うと噂される「ベビードール」、コーヒーの香りが珍しい「ブラック オピウム」などです。

このようにレディース香水が有名ですが、一方でメンズ香水も負けていません。

イヴ サンローランのメンズ香水は、アロマティックな香りを基本としながら、セダクションな雰囲気を忠実に表現しています。

それらの香りからは、時には爽やかに、しかし時には危険な…という男性像をイメージさせるもの。

今回は、そんなメンズ香水からナンバーワンセレクトである「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」をご紹介します。

「男の夜」を意味する、その悩ましい香りについてご説明しましょう。

「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」の男性イメージ

「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」が発売されたのは2008年。

ちょうどサンローラン氏が他界した年のことです。

広告には仏俳優のヴァンサン・カッセル氏が起用され、「プレイボーイが夜に忍び寄っては、あっという間に女性を虜にする」というイメージのもと発表されました。

ヴァンサン・カッセル氏はイタリアの女優モニカ・ベルッチ氏と婚姻関係にあった男性でもあります。

母国フランスでは圧倒的な人気を誇るほか、ハリウッド映画「ブラック・スワン」「美女と野獣」「オーシャンズ12」に出演し、国内外で活躍の幅を広げています。

「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」の具体的なイメージは「プレイボーイ」である以上に、「ルールを破っても欲望を手に入れる男性」という、ちょっと危険に満ちたものです。

静粛と危険性、この2つの顔を持つ男性を演出しながら極端なギャップで女性を魅了させていく、というのがこのオードパルファムの肝です。

現在、ニュートラル&ユニセックスな香水がたくさん発表されていますので、これほど男性性を意識した香りは今日では珍しいかもしれません。

しかし逆を言えば、「力強く男性的な香りが欲しい」「往年の俳優を彷彿とさせるような香水が欲しい」という方には、この上なくぴったりな香りです。

徹底的にクール、大胆さとエレガンスの完璧なまでのバランス

La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)オードパルファム

トップノート:カルダモン

ミドルノート:ラベンダー、シダーウッド、ベルガモット

ラストノート:キャラウェイ、ベチバー

発表年:2008年

調香師:アン・フィリッポ、ドミニク・ロピオン、ピエール・ワーグニー

対象性別:男性

「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」のトップノートは、鮮やかなまでに徹底されたカルダモン(スパイス)の香りで始まります。

メンズ香水らしい、辛口でスッキリしたオープニングで、スッと鼻に抜けていく印象です。

このスパイスの激しさは、確かに「ルールを破っていく」男性の力強さと危険性を匂わせるものです。

キャラクターで言えば、あまり笑わない、大胆、仕事ができる、自由人だけど徹底したマイルールがある、といった感じでしょうか。

ミドルノートでは一転、ラベンダーやシダーウッドのミステリアスな一面が垣間見えます。

近寄りがたかったトップノートから、だんだんと癒やされるアロマティックな香りに変わることで、「この人は何を考えているのだろう?」というミステリアスさを周囲に与えていきます。

そしてミドルからラストノートにかけて、夜が深まっていくようにダークな香りへと変化していきます。

ほのかな苦味をもつキャラウェイにシダーウッドが溶け合い、不思議と甘いウッディ香に変わってゆく様子から見てとれるように、「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」は正真正銘の「二面性」を持つ香水だと言えます。

多くの女性がこの香りにクラクラっとしてしまうことでしょう。

とはいえ「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」はメンズ香水ですので、アーシーで力強いベチバーが、最後にしっかりとバランスをとっています。

イヴ・サンローランの考える「男の夜」、そして夜に生きる男のイメージは、女性を必死に追いかけたりしません。

少しクールなトップノートからも、その姿は冷たく感じられることでしょう。

でもなぜか惹きつけられてしまう、この男性のことをもっと知りたくなってしまう、そんな魅力を最後にはらんでいるのが、「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」の香りの真髄です。

紳士はもちろん、スパイシー好きな女性にもカッコよく決まる!

「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」はメンズ香水ですが、イヴ サンローランの「スモーキング」に賛同し、パンツスタイルをこよなく愛する女性にもなぜか似合ってしまう香りです。

また男女問わず、スパイシーさが好きで、甘くない夜用の香水を探している、という方には大変おすすめです。

いずれにせよ「クール」「ミステリアス」「エレガンス」といったイメージを所有する香水ですから、こうした分野に重きを置く人には響く香りとなるでしょう。

ただ少し香水上級者向けの香りではあります。

オンの日には向いておらず、やはり夜にまとうのに適しています。

オールシーズンOKですが、年齢層は20代後半以降が良いかと思われます。

またイヴ サンローランらしいエレガントさがありますので、ラフな服装よりはきちんとしたルックの方が似合います。

最高に似合うのはもちろん、夜のデートシーンとなります。

二面性を演出しながらギャップで魅了させる香りでもありますので、香水で差を付けたいという方にとっては「この上ない味方」となるはずです。

しなやかで、危険で、大胆でつれないのだけど、なぜかモテてしまう男性。

そういったイメージのある香水が、イヴ サンローランの「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」です。

まとめ

男性の内に潜む、隠された夜の魅力。

そんなミステリアスなテーマを持つ香り「La Nuit de l’Homme(ラ 二ュイ ド ロム)」をご紹介しました。

イヴ サンローランのメンズ香水は、男性の力強さというより、アロマティックで謎めいた雰囲気を持っているのが大きな特徴です。

今の時代は女性でもこうした香りを身に着けてまったく問題ありませんので、ぜひ、新しい香りにトライしてみてください。