フランスにおいて、香水を芸術の域に押し上げた初めてのブランド『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』。
“香りの巨匠”、“フランスの知性・哲人”、“人間国宝”とも呼ばれ、彼が現在のフレグランス業界に残した功績は計り知れません。
その多くは大人のための上質な香りばかりで、ニッチながらも重厚感あふれるフレグランスが多く並んでいます。
一つ一つの香りのテーマはとても哲学的で、感性と知性、その両方を駆使しながら私たちの嗅覚を楽しませてくれることでしょう。
『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』はフランス、モロッコ、日本と3つの国にインスパイアされた香りを創り続けています。
時を超え、歴史をはさみ、異国の風景が垣間見えるようなクリエイティブな香りには、『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』にしかできない匠の技が光っているのです。
そんなフランス最高峰のニッチフレグランスブランドで、とりわけ評価が高く世界中からラブコールを受けている香りが存在します。
その名も「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」。
「バニラの木」と名付けられたそのオードパルファムは、“究極のグルマン”と称される至高のバニラ香水です。
「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」は、黄金以上の価値を持っていたバニラを世に広めたアステカ帝国にインスパイアされた香り。
その華麗なる繁栄と終焉に想いを馳せた、芳醇で神秘的なウッディ・バニラの香りは世界中の香水ファンを虜にしています。
今回は、その純粋にして高貴な、“究極のグルマン”香水の魅力をお伝えしたいと思います。
西方の黄金バニラに思いを馳せる
Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)オードパルファム
シングルノート:サンダルウッド、ブラックリコリス、ココナッツミルク、ビーズワックス、ビターアーモンド、ムスク、バニラ、ベンゾイン、ガイアックウッド、トンカビーン
発表年:2003年
調香師:クリストファー・シェルドレイク
対象性別:ユニセックス
「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」はフランス語で“バニラの木”を意味します。
実はそれは、現代のバニラをイメージしたものではありません。
バニラの魅力をこの世で初めて発見したアステカ帝国を称え、その偉大な功績と神秘性にフューチャーした香りなのです。
もちろんただただ甘い香水というわけではなく、調香の各所に芸術的な技が光っています。
“財宝のように尊いバニラ”という、当時の感覚に近づけた上質でミステリアスな仕上がりは『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』の最も得意とするところ。
香りの変化が少ないシングルノートではありますが、トップノートはブラックリコリスに、バニラスイーツとキャラメルの香りが重なり合うという、勢いのあるスタートダッシュから始まります。
そしてここから、至高のグルマンノートの火蓋が切られるのです。
それはまるで、とろけるようなクリーミー・バニラと焦がしキャラメルのデュオが冴える、最高級のクレームブリュレのよう。
そんな誰もが恋してしまうクレームブリュレを目の前にすれば、理性はおろか抑止力も失ってしまいそうです。
事実、1519年アステカ帝国に上陸したスペイン人のコルテスは、泡状になったバニラドリンクと出合いその魅力の虜になってしまったのだとか。
アステカ帝国は資源として黄金にも恵まれました。かつては黄金の盃でこの飲み物を飲んでいたそうで、いかにバニラが高級品だったのかが分かります。
続くサンダルウッドがよりバニラに神秘性を与え、「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」をラグジュアリーなものに昇華させています。
焦げたバニラが余韻を残して温かく溶けていくイメージで、その溶け入る過程とウッディな香りのハーモニーが“アステカ帝国の衰退”を思わせます。
このふくよかさと奥行きこそが「究極のバニラ」としての神秘性を生み出していて、ただの“甘くてお菓子のようなグルマンノート”とは一線を画す香りとなっているのです。
もちろん「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」は、“グルマン香水”という一言では表せない素敵な香り。
時々顔を出すお香のような、深いウッディノートが全体を暗めのトーンに仕上げていて、甘さの中にも“貫禄”が見られる、大人のバニラ香水です。
大人のグルマンノート
「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」は甘い香りではありますが、かなり大人向けの高級バニラの香りなので男女問わず使用いただけるかと思います。
シックなグルマンノートで、 甘い香りが苦手でも一度試す価値はあるでしょう。
これまでスウィートな香りに抵抗があった方でも、「「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」だけは別」と噂するかもしれません。
年齢層としては、20代後半以降の大人の男女におすすめです。
『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』は香りの立ち方にも特徴があり、“香りが主張する”というよりは肌にフィットするようにまとわりつき、時々ふわっと上がってくる重厚さがあります。
さまざまな研究結果にもあるように、バニラは気分を落ち着かせ、イライラした心を落ち着かせる効力をもつ香り。
そのため、「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」の性格は主張が激しめの他の香りとは全く異なるものです。自分の嗅覚・脳の深い所まで働きかけてくれるので、心の充足感や落ち着きが欲しい方にはぴったりと言えます。
この香りは乾燥した空気に良く似合いますので、冬の季節とは相性が抜群に良いでしょう。
春秋の夕暮れから夜にかけてまとうのも、情緒があって良いかもしれません。
寒くなったらまといたくなる、濃くてかっこいいバニラ香水です。
まとめ
ウッディ特有の落ち着きが心地良く、甘いのに上品で知的な「Un bois vanille(アン・ボワ・バニール)」。
14世紀アステカ帝国の秘宝とされたバニラ、その黄金バニラの魅力を余すところなく表現した素晴らしいグルマンノートです。
実はこの香りから『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』のファンになったという人も多く存在するんですよ。
一筋縄ではいかないバニラ香水、大人のグルマン香水をお探しの方は必見です。
使うたび気持ちを高揚させてくれる『Serge Lutens(セルジュ・ルタンス)』の名香、ぜひお試しくださいね。