ニューヨークを代表するファッション&コスメティックブランド、トムフォード。

ファッションもさることながら、フレグランス人気の勢いが止まりません。

今ではたくさんのラインナップが揃っており、新作を出せば出したでいつもヒットを飛ばします。

その香りの一番の特徴は、トムフォードらしい「セクシーさ」にあると言って間違いないでしょう。

今回は数ある香りの中から、トムフォード初の香りにしてシグネチャーフレグランスとなっている「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」をご紹介したいと思います。

2006年の発売から16年。褪せることなく常に口コミ評価で高得点をマークする、「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」の魅力をご紹介しましょう。

「黒い蘭」が生まれた背景

「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」は日本語で「黒い蘭」という意味になります。

もちろん実際の黒い蘭の花からインスピレーションを得て作られた香りで、トムフォードでも一番妖しく、一番官能的な香りとなっています。

トムフォードは、近年の世の中が「より透明性を求めている」ことに気づいたと言います。

ところが彼は、それによって神秘性やグラマラスな魅力が消えてしまった、とも述べました。

新作の香水ボトルは透明なものばかり。加えて香りもクリーンなものばかり。

しかしトムフォードは逆に考えました。「一瞬で心を掴むようなエキゾチックで、秘めたる魅力を開花させる香りを作りたい。クラシックな女性用パルファムに戻りたい」と。

透明の反対とは、「黒」です。

黒を愛し、黒に魅力を感じる全ての人へ。

全ての色を混ぜると「黒」となるように、人をダークサイドへ落とさんばかりの危険な香りを作りたいと、こう考えたのです。

そしてトムフォードは、スイスの植物学者が黒い蘭の交配に成功すると、世界でも数少ないその苗木を即座に買い取りました。

「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」という名前が付いたのはこれがきっかけです。

蘭の気高さ、「美しい淑女」という花言葉に、黒の闇を添えて。

こうして時代に逆らうようにして生まれたのが、「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」の香りなのです。

濃厚な甘さに酔いしれる、香水界NO.1の官能フレグランス

出典:TOM FORD BEAUTY 公式インスタグラより

BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)オードパルファム

トップノート…トリュフ、カシス、ベルガモット、マンダリン、レモン

ミドルノート…オーキッド、スパイス、ガーデニア、フルーティーノート、ロータス

トップノート…チョコレート、パチョリ、バニラ、インセンス、アンバー、サンダルウッド、ベチバー、ホワイトムスク

発表年…2006年

調香師…デビット・アピル

対象性別…女性

まず初めに申しますと、「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」は、トップノートの一秒から最後に尽き果てるまで、徹底して確かな官能性をはらんでいます。

ワンプッシュしたその瞬間から、全ての人が「黒いベルベットのカーテン」に身を包まれてゆきます。

トップノートで特筆すべきところと言えば、ほんの数分のために配合されたブラック・トリュフの香りでしょうか。

もちろんそれは大変高級なものです。

少しスパイシーで、少し土の香りがして、アーシーで、最初からダークです。

カシスの深い香りと相乗効果となって、なまめかしい官能の世界にずいずいと引き込まれていきます。

例えるなら、まとった人は「黒いベルベットのカーテン」の中にいる観客。

「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」がこれからどんなスペクタクルを見せてくれるのか、ワクワクしながら次の展開を待っています。

ミドルではラグジュアリーなショーがさらに深遠なものに。

ここでも圧倒的なパンチ力があります。主役はもちろんオーキッドで、オリエンタルな印象のフローラルノートへ少しずつ変化していきます。

今にも滴り落ちそうな“花蜜”に見とれていたら、うっかり向こう側に落ちてしまったー

とでも言えるでしょうか。

自分でも気づかないうちにダークサイドへ落ちてしまう、というよりむしろ、落ちたくて落ちてしまう、そのような“本当の意味での妖艶さ”があります。

「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」は、そんな観客をクスクス笑いながら見ています。

彼女が転がす、というより、こちらが転げたくなってしまうような罪作りな香り。

下へ下へと“したたる”感じ、圧倒的な吸引力、肌の深部の甘い香り、こういった官能性については間違いなく香水界ナンバーワンの香りと言えるでしょう。

ラストはグッと肌の香りに近づきます。

しかしそれは、石けんやスキンノートといった類の香りではありません。

チョコレート、パチョリ、バニラ、お香…非常に複雑で、救い難いほど妖艶です。

確かな甘さはあるのですが決してグルマン系とはならず、苦味とウッディが調和して、かなり重厚な面持ちでフィニッシュとなります。

なお、「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」はマイケル・ジャクソンが愛用していたことで瞬く間に世界に知れ渡るようになりました。

彼が天に召されてから10年以上が過ぎましたが、この香りは歴史に残る名香として必ずや刻まれることでしょう。

扱いもトムフォードの中で一番難しい。しかしハマる人は数知れず

「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」は先述したとおり非常に濃厚で複雑で、持続時間がシリーズの中でも一番長いものとなっています。

そのためビジネスシーンやパブリックには全くお勧めできません。

また女性用ではありますが、マイケル・ジャクソンが使用していたように、美を追求する男性もしくはトランスジェンダーの方にもぜひ使っていただきたい香りです。

年齢層は20代後半以上でしたら何歳でもOKです。

夜用、セクシーな服装の時にまといたい香り、と申し上げたいところですが、「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」に限っては“逆を行く”方がその良さが出るのではないかと思います。

つまり、「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」自体がとてつもない存在感・官能性を持ち合わせているため、露出の多いファッションと化学反応を起こして一気に下品になってしまうからです。

そのため肌の露出が少ないか、むしろ全身を生地で覆っているような服装が一番この香りの“妖艶性”を引き出せるのではないかと思います。もしくは、対極の“一糸まとわぬ姿”か。

いずれにしてもグレー(中間)が似合わない香りです。

黒を愛してやまない、世界中の紳士淑女の皆さんにお勧めしたい1本です。

まとめ

「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」は、トムフォードフレグランスの原点にして未だに色褪せない至極の香りです。

妖艶さを追求する方、トムフォードファンの方、世界で最も官能的な香りと言われる「BLACK ORCHID(ブラック オーキッド)」をぜひ手に取ってみて下さい。