1989年に『Guerlain(ゲラン)』の四代目調香師、ジャン・ポール・ゲランによって生み出された「SAMSARA(サムサラ)」。

「SAMSARA(サムサラ)」は、サンスクリット語でサンサーラ=“輪廻転生”を意味します。これは、ジャン・ポール・ゲランが最愛の女性に捧げた香りでもあります。

「Shalimar(シャリマー)」をはじめ『Guerlain(ゲラン)』にはオリエンタルノートの原点となる香りが存在します。

なかでも「SAMSARA(サムサラ)」はフローラルめいた甘みがあり、オリエンタル感がゆっくりと花開く「静」の色香を持った1本。

『Guerlain(ゲラン)』といえば、言わずと知れたフランスの老舗化粧品ブランドですが、その気高さを兼ね備えた香り、そして商品に込められた女性たちへのリスペクトの強さは他の追随を許しません。

母から娘、そのまた娘へと伝わる香りの数々。その多くがレジェンダリーな香水として、後世にも語り継がれることでしょう。

今回ご紹介するのは、「SAMSARA(サムサラ)」シリーズでもより明るく香るオードトワレタイプです。

手にした女性を最高に輝かせてくれる、フレッシュ・オリエンタルノートの香りをご紹介しましょう。

愛する人のために創った輪廻転生の香り

出典:『SEPHORA(セフォラ)』公式HPより

トップノート:イランイラン、ピーチ、ベルガモット、グリーンノート、レモン

ミドルノート:アイリス、ジャスミン、水仙、ニオイイリスの根茎、ローズ、ヴァイオレット

ラストノート:サンダルウッド、バニラ、アイリス、トンカビーン、アンバー、ムスク

調香師:ジャン・ポール・ゲラン

発表年:1991年

対象性別:女性

1989年にジャン・ポール・ゲランが最愛の女性のために創作した「SAMSARA(サムサラ)」。(オードトワレタイプは1991年)

サンスクリット語で“輪廻転生”を意味します。

つまり、「生まれ変わっても一緒になりたい」「永遠の愛」「ソウルメイト」といった壮大な愛をテーマにしたフレグランスなんです。

トップノートは一瞬で消え入るように香り立つのですが、イランイラン、そしてグリーン・フルーティーノートの構成はとても上品で健康的なものがあります。

「ジャン・ポール・ゲランが最愛の女性のために創作した」というエピソードに納得の、可憐で美しいイランイランを前面に打ち出したトップノート。

本当に愛してたんだろうなあ、とこちらまで幸せな気持ちになってしまいます。

大人の初恋のようなみずみずしさと、愛しい人に微笑みかけるような甘い感覚を詰め込んだ、センシュアルでキラキラとした明るい香りです。

出典:『Guerlain(ゲラン)』公式インスタグラムより

そしてイランイランの後を追うように、ジャスミンを中心とした華やかなミドルノートが数十分続きます。

ローズ、水仙、ヴァイオレットやアイリスといったスター級のフローラルの構成は、女性の美、たおやかさや女神めいた“品位”を感じさせるものです。

理想の女性、ソウルメイトといった、男性が最愛の人に抱くイメージを体現したかのような香り。恋の始まりのドキドキ感を表すドーパミンと、落ち着いた愛情のオキシトシンが同時に放出されるのでは?と勘ぐってしまう、何ともロマンチックなミドルノートです。

このうっとりするような香りが永遠に続いてほしい…と願わずにはいられないほど厚みがあり、ふっくらとした質感はやはり『Guerlain(ゲラン)』調香の美技たるところです。

その後は穏やかなラストノートが長持ちします。

天然のサンダルウッド、バニラ、アンバー、ムスクで奏でられたミルキーでパウダリーなラストノートは、まるでユートピアのような神秘性と安堵感を感じることでしょう。

愛のための人生を送りたい。例え前世の記憶を失おうとも来世で必ず君を見つけたい。

「永遠の再生」を誓う「SAMSARA(サムサラ)」は、このラストノートで最終章を迎えます。

それは、記憶に残るとても印象的な香り。

よほど愛する女性のことを考えて調香しなければ、この香りは創造できないでしょう。

ジャスミンやサンダルウッドの香りがどことなく東洋のオリエンタリズムを感じさせ、さらに神秘性を強く重ねています。

目の前にいる女性のヴィーナスのような美しさ、誠実さ。それが嘘か真か、どちらにしてもただただこの瞬間を共有していたい、夢心地のような今の気持ちを切らすことなくずっと持ち続けていたい。

強く、切なく、柔らかくて愛おしい、甘く幻想的なエンディングです。

一切の“苦”、そして“官能性”をも排除しているこのラストノートは、本当にノーブルで高尚なものです。

層の厚い調香ながらも、1本の香水として奇跡的にまとまっていて、トップノートからラストノート展開が非常にユニークです。

奇跡的に運命の人と出会うことができ、相思相愛で“恋”に落ちた瞬間から“愛”へと変わる軌跡を表現したかのよう。

「SAMSARA(サムサラ)」を贈る男性も、受け取る女性も、双方が幸せの頂に到達できるような、まさに愛の香りです。

相手へのリスペクトを感じる香りを身にまとって

オードトワレとはいえ、「SAMSARA(サムサラ)」は拡散性、持続性ともに高めなので、ウエストや太もも、足首など、低めの位置に少量つけるのがおすすめです。

香りの変化がかなりハッキリしているので、つけ直しはしない方が良いでしょう。

もちろんこれは女性にしかまとえない香りで、「オードパルファムよりも淡さが欲しい」方向けでもあります。

寝香水として使用する分には季節を問いませんが、お出かけの際にまとうのであればなるべく秋冬が良いと思います。

「SAMSARA(サムサラ)」はパウダリー感が長続きするラストノートが特徴なので、それを一番持続する季節、つまり気温の低い11月~3月頃がベストです。

その場合は、やはりきちんとしたメイク、きちんとした出で立ちが理想です。

50代以上の女性でしたら和装にも合うかもしれません。

熱情を帯びた恋が、しっとりとした愛に変化したような「静」を表す香りなので、落ち着いた雰囲気のマダムにはことさらお似合いになるでしょう。

まとめ

香りもボトルもラグジュアリーで、身にまとう女性を高みに上げてくれる『Guerlain(ゲラン)』の香水。

華麗なブランドヒストリーにふさわしい「SAMSARA(サムサラ)」は、女性の包容力、女性の丸みさえも連想させるものです。

それは、雑事に追われている時ではなくて、パートナーと会う日や一人静かな夜に着けたくなるような、深く静かな香り。

本当に自分が楽しむだけにある1本です。

「SAMSARA(サムサラ)」と一緒に、恋から愛へ変化していく、あの時が止まったような幸福な時間を思い出してみませんか。