独特なほろ苦さと幻想的な甘さが癖になる、おとぎ話のような不思議なフレグランス。

1997年の発売より圧倒的オリジナリティーで人気の「ロリータレンピカ」は、香水界のアカデミー賞「FIFI賞」を2年連続で受賞した優秀な香りです。

「ロリータレンピカ」は、フランス人デザイナーのジョジアンヌ・マリーヌ・ピヴィダが立ち上げたアパレルブランド。

1983年に29歳でブランドを創立したジョジアンヌは、そのブランド名を、ウラジーミル・ナボコフの小説『ロリータ』と、アール・デコの女流画家、タマラ・ド・レンピッカを組み合わせ、「ロリータレンピカ」と名付けました。

子供の頃から童話の世界に憧れ、洋服のデザインをしていたというジョジアンヌは、1997年に自身の愛する世界観を投影したフレグランス「ロリータレンピカ」を発表します。

フローラル・フルーティー・グルマンノートという、女性を惹きつけて虜にしてしまう香り。

その甘くて不思議で、独特な世界観を持つ「ロリータレンピカ」の香りの秘密と、一番上手に香らせる方法をご紹介したいと思います。

童話の世界に誘われるようなトップノート

Lolita Lempicka mon premier parfum EDP(ロリータレンピカ・ファースト・フレグランス・オードパルファム)

トップノート:ヴァイオレット(スミレ)、セイヨウキヅタ(アイビー)、スターアニス

ミドルノート:アイリス、アマリリス、リコリス、ニオイ・イリスの根茎、チェリー

ラストノート:トンカビーン、バニラ、ベチバー、ホワイトムスク、プラリネ

1997年発表

調香師:アニック・メナード

対象性別:女性

「ロリータレンピカ」のトップノートは、ヴァイオレット(スミレ)のパウダリー感と、スターアニス(八角フェンネル)のほろ苦さのハーモニーから始まります。

それはまるで、グリム童話の「白雪姫」が森の中で7人の小人に出会った時のような、不思議なラビリンスに迷い込んでしまったかのよう。

スターアニスはヨーロッパのスイーツによく使用される、ほろ苦くてスモーキーなハーブなのですが、乾燥した気候と大地に良く似合い、さらには郷愁感を与えてくれるエモーショナルな香りが特徴です。

一般的なフレグランスのトップノートに用いられるシトラス系の香りが全くしないことから、「ロリータレンピカ」の幕開けは「他の香水と違う」と意外性を持ったスタートダッシュを切るのです。

スイートで妖しく光るミドルノート

出典:ロリータレンピカ公式インスタグラムより

少し時間が経つと、ハーバルなアイリスと個性的なリコリスが登場します。

リコリスとは、スペインカンゾウの根とアニスオイルで味付けされた、黒色でグミのような食感を持つお菓子のこと。

そしてチェリーがフルーティーな甘酸っぱさを、アマリリスの香りが全体に可憐さを添えてくれます。

「ロリータレンピカ」のミドルノートが見事なのは、童話の世界に登場するような少女の幼さと、成熟した女性のアンバランスさをグルマンノートで表現しているところにあります。

森に迷い込んだ白雪姫と、彼女に嫉妬する美しき王妃が、もし敵対せずに手を取りあったのなら、このような妖しい甘く妖しい香りとなって大勢の人を惹きつけてしまうに違いありません。

非日常な情景を思い出させ、私たちをワンランク上の高みに上げてくれる香水は多く存在しますが、「ロリータレンピカ」のミドルノートのように現実離れした香りは前代未聞です。

トップノートのヴァイオレット(スミレ)を追いかけて森に入り、魅力的なリコリスに見とれているうちに現実世界に戻れなくなってしまう…

そんな、「ロリータレンピカ」の妖しい世界に誰もが足を踏み入れてしまうかもしれません。

グルマンノートとは本来、甘くおいしそうな香りで、身にまとう人や周囲の人に多幸感を与える香りなのですが、「ロリータレンピカ」は一味も二味も違います。

どちらかというと暗くて妖しく、一度味わったら癖になるダークなグルマンノートです。

可愛いだけじゃない、陰陽の深みを秘めた高度な香りだからこそ、今なお多くのファンが一途に追い求めるフレグランスなのだと思います。

行きつく先は桃源郷。いつまでも包まれていたいラストノート

クライマックスのラストノートでは、物語の終盤のような優しいハッピーエンドが待っています。

バニラのふっくらとした甘さ、ベチバーのウッディ感、プラリネの香ばしさに、ホワイトムスクとトンカビーンがゆっくりと優しく重なっていきます。

トップノートからミドルノートの間を覆っていた幻想世界から抜け、この桃源郷のようなラストノートに辿り着く頃にはすっかり「ロリータレンピカ」の虜になってしまうはず。

出典:ロリータレンピカ公式インスタグラムより

エンディングに香ってくる「ロリータレンピカ」の甘さは、白雪姫が王子様に見出されて息を吹き返した時に感じるような、甘美で心地良いものです。

合成香料を一切使用していないためか、その甘さも粘着力のある甘さではありません。

滑らかでリッチで、これがもし夢なら永遠に覚めないで、と願うほどの気持ち良さです。

「ロリータレンピカ」はまさに、白雪姫に登場する“毒リンゴ”のような役割を果たしているから驚きです。

誰かを陥れようとして作ったものが、結果として誰かをハッピーにさせてしまう。

コロンとした可愛らしいボトルデザインの奥に潜む、ドラマティックなストーリー展開には女性なら誰もが惹かれてしまうでしょう。

ロリータレンピカの長所を活かすまとい方

香りの構成が素晴らしい一方、独特な甘さが強く香るフレグランスなので、つける位置や時間には細心の注意を払わなければなりません。

「ロリータレンピカ」の良さを最大限に活かすには、少し離れた位置からそよ風にのせてふわっと香らせる方法が向いています。

ですが現実的に難しいので、お勧めのまとい方としてはズバリ「寝香水」。

出典:ロリータレンピカ公式インスタグラムより

お風呂あがり、就寝前に身体のお好きな位置に一吹き。

朝目覚める頃には「ロリータレンピカ」が体温と馴染んで、最高にチャーミングな香りとなってくれることでしょう。

パートナーがいて難しいという方は、お出かけ前に足の甲に着けるのが良いかもしれません。日中でしたらなるべく、身体の中心から離れた部位にまとうことをお勧めします。

本当に素晴らしいフレグランスなので、ただただ「強くてクセのある香り」とレッテルと貼られてしまうのは大変もったいない気がします。

また、オフィスよりもプライベート、マスキュリンよりもガーリーな衣装ですと「ロリータレンピカ」思いっきり楽しめると思います。

もちろん湿度の低い秋冬にもってこいの、スイートで麗しいグルマンノートです。

まとめ

甘いだけのグルマンノートとは一線を画す「ロリータレンピカ」。

「FIFI賞」を2度受賞しただけあって、その実力は香水界のお墨付きです。

ノスタルジックでファンタジックなこの香りは、一度ハマってしまったら抜け出せなくなるかもせれません。

明らかに女性のみが理解できる、不思議な魔力を持った「ロリータレンピカ」の香りの世界をぜひ堪能してみて下さい。