イギリス発のフレグランスメゾン、『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』。
英国王室御用達の称号を与えられた由緒あるメゾンの一つで、2020年には創業150年を迎えました。
創業者のウィリアム・ペンハリガンが残した「創造的かつ革新的な香水作り」のコンセプトを元に、現在でもイギリスで香水を製作しています。
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』の香りには品格がありながらも、現代アートのようにエキセントリックな一面があります。
そんなイギリスらしいフレグランスに魅了される香水ファンも多いのではないでしょうか。
また、ボトルデザインも本当に素敵です。
水晶のような丸いキャップに、リボンやボウタイがあしらわれた、クリアで美しい香水ボトル。
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』のフレグランスを見ていると、「ボトルデザインの大切さ」に改めて気付かされます。
さてそんな『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』から、新たな香りが仲間入りを果たしました。
2023年9月に発売になったオードパルファム、「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」です。
こちらは「ポートレートコレクション」という高級ラインからの登場になります。
「ポートレートコレクション」とは、『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』の中でもリュクスで物語性に富んだ、特別なシリーズの総称です。
一家の秘密を握る“執事”をイメージした香り、とされる今回の「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」は、どんなフレグランスなのでしょうか。
「ポートレートコレクション」の特徴とともに、その魅惑的な香りをご紹介したいと思います。
イギリスの「劇場型」フレグランスシリーズ、ポートレートコレクションとは?
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』では、通常のフレグランスのほかに、ゴールドのキャップがまばゆい輝きを放つ、特別なラインが存在します。
動物を象ったユニークなボトルキャップは、彫刻のようでもあります。
一体これは何なのでしょうか?
「ポートレートコレクション」と呼ばれるこの高級ラインは、2016年に初登場を果たしました。
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』の創業一家は、イギリスの老舗フレグランスメゾンという一面とは別に、古くからヨーロッパの芸術家たちと交流があったといいます。
その面々はオペラの演出家、舞台監督、画家などです。
そんな多方面で活躍する芸術家にインスパイアされ、「物語風」として発売されたのが「ポートレートコレクション」です。
コレクションの各香水は、物語を構成する登場人物を表しています。
舞台は19世紀後半のイギリス、田園地帯に建つ大邸宅。
「ポートレートコレクション」は、そこに住む家主のジョージ卿とその一族の秘密、英国上流階級の絡み合う人間模様を香りで表しているのです。
発売当初から人気を博し、2023年には19種類もの香りが揃いました。※日本未発売のものを含みます。
そんな「ポートレートコレクション」の最新作が、今回ご紹介する「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」です。
執事が握る「秘密」のような、ミステリアスなフローラル・アンバーの香り
THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)オードパルファム
トップノート:ラヴァンディン、ピンクペッパー、エレミ
ミドルノート:ゼラニウム、ブラックペッパー、アイリス
ラストノート:バニラ、セサミシード、オークウッド
発表年:2023年
調香師:ファニー・バル
対象性別:ユニセックス
「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」は、少しスモーキーな香りをバニラやセサミといったクリーミーな香りが包み込む、“秘密めいた”フレグランスです。
このフレグランスのイメージは、ジョージ卿の優秀な執事である、ミスター・トンプソン。
香りは、彼が握る一家の「秘密の鍵」を象徴したものだといいます。
これだけでも興味深いのですが、香り立ちは非常にジェントルで、誠実そのものです。
信頼できる執事のような、「控えめな力強さ」もあります。
トップノートはラヴァンディン(ラベンダーの一種)とピンクペッパーの、華やかなスパイシー・ノートで始まります。
そこにエレミ(樹脂)の香りが乗ることで、幕開けからエキゾチックな表情を醸し出しています。
口数は少ないけれど、「大物の予感がする」という執事のイメージにもピッタリです。
ミドルノートでは、アイリス(あやめ)のパウダリーさとハーブのゼラニウムが混ざり、上流階級で漂うような高級感が生まれていきます。
このミドルノートは品も良く、そつがありません。
紳士・淑女のどちらもまとえそうな、「備えあれば憂いなし」といった有能な香りのイメージです。
ミスター・トンプソンは一家の秘密を絶対に漏らしません。
また影のように控えめでありながら、素晴らしい情報収集能力を持っています。
その卓越した能力で貴族一家を取り巻く状況を察知し、一家の名誉が傷つかぬよう巧みにトラブルを回避するのが彼の仕事です。
ここまでの香りのイメージは、そんなストーリーを思わせるように、「信頼のおける人」「仕事のできる人」といった感じです。
しかも自分が前に出る、ということはなく、あくまでも黒子に徹している。
主役ではないけれど、ともすれば物語に絶対に必要な、かつ物語に劇的なスパイスを与えるような、キーパーソン的な香りが「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」です。
ラストノートはバニラとセサミ(ゴマ)、オークウッドの深い香りに変化していきます。
「部屋を出た後も心配はいりません。残り香がわたしの存在を示しています」
とでも言うように、ラストノートはミステリアスでセンシュアルな余韻を残しながら、肌の上で静かにその幕を閉じます。
品を与えるマチュアな香り
「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」はとても品のある、マチュアな香りです。
従って年齢層も20代後半以上の方に。
重い香り、という訳ではありませんが、少しの複雑さがありますので、ファーストフレグランスとしては難しいかもしれません。
キャリアに打ち込む人には大変おすすめしたい香りです。
香水がOKな職場であれば、これほど心強い香りも珍しいかもしれません。
しかし人に好かれる香り(ソープ系などライトな香り)というよりは、ちょっと内向きな香りと言えます。
つまり内省に向いているといいますか、自分が何かに集中したい時、自分を再発見する時などにまといたい香り、となります。
ファッションは英国王室御用達ブランドである『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』らしい、セミフォーマルな装いが良いでしょう。
人懐っこい香りではなく少し「距離を感じさせる香り」でもありますので、香水にそうした雰囲気を求める方には是非おすすめしたい1本です。
まとめ
「THE OMNISCIENT MR THOMPSON(ジ オムニシエント ミスター トンプソン)」のイメージは「有能な執事」でした。
もちろん、まさにその通りな香りが今回の新作です。
オフィスに、オンの日にまといたい優れた香りを、ぜひお試しください。