1987年にオーストラリア・メルボルンで生まれた『イソップ(Aesop)』は、スキンケアやヘアケア、そして香水を取り扱う、自然由来のトータルケア・ブランドです。

『イソップ(Aesop)』のアイテムにはクオリティの高い植物成分が使用されているので、肌への負担も少なく、安心です。

またスタイリッシュなパッケージデザインも、『イソップ(Aesop)』の魅力の一つと言えるでしょう。

どんな空間にも溶け込む落ち着いた色合いは、『イソップ(Aesop)』ファンにはもちろんのこと、世界のインテリア・ラバーからも愛されています。

ジェンダーレスな香りも相まって、その愛用者は性別や国境を飛び越えるほどとなりました。

そんな『イソップ(Aesop)』には人気急上昇中のアイテムがあります。

アロマティックな香りが特徴の、フレグランス・シリーズです。

シリーズには現在、9種類の香りがラインナップしています。

「ヒュイル」、「タシット」、「ローズ」、「マラケシュ インテンス」、「エレミア」、「ミラセッティ」、「カースト」、「イーディシス」、そして「グローム(Gloam)」です。

調香のコンセプトにもあるように、その特徴は「香水の概念を覆す」ようなアロマティックな風情にあります。

一度まとえば、誰もが深いリラックス感を味わうことができるでしょう。

さて今回ご紹介するのは、2023年4月に発売された最新作の「グローム(Gloam)」です。

詩的で哲学的なそのコンセプトと一緒に、香りの特徴をご説明していきましょう。

夢と覚醒の狭間で。潜在世界を描き出した「グローム(Gloam)」

最新作の「グローム(Gloam)」は、「アザートピアス=此処ではないどこか」という香りのシリーズから発表されました。

『イソップ(Aesop)』には現在9種類の香りがラインナップしていますが、その内の5つが「アザートピアス」シリーズに入っています。

「アザートピアス」のコンセプトはこうです。

現実と非現実、此処と其処の境界が曖昧になる空間。現実と想像の領域を行き来する、“ボーダーライン上”にある空間。

調香師のバーナベ・フィリオンはこうした世界観に着想を得て、シリーズ名を「アザートピアス=此処ではないどこか」と名付けました。

香りは21年の「ミラセッティ」「カースト」「エレミア」に始まり、22年の「イーディシス」、そして今回「グローム(Gloam)」と続きます。

では「グローム(Gloam)」の世界観とはどういったものなのでしょうか。

それは、“潜在意識の情景”です。

カウチに横たわってまどろんだ時に見るような「白昼夢」。

さらには夢の中を漂い、空間と空間のあいだにいるような世界をイメージしているとのことです。

このコンセプトは哲学的で詩的、そして小説的とも言えます。

そんな幻想世界へは、スパイシー・フローラルノートの香調が、ゆっくりと手招きするように入り口の扉を開けてくれます。

それでは「グローム(Gloam)」の香りの構成について、詳しく見ていきましょう。

奥行きと複雑さのある夢の世界へ。物語性のある香りの展開

グローム(Gloam)オードパルファム

トップノート…オレンジフラワー、ネロリ、ピンクペッパー、カルダモン

ミドルノート…サフラン、ジャスミンサンバック、ミモザ

ラストノート…アイリス、パチョリ、コパイバ

発表年…2023年

調香師…バーナベ・フィリオン

対象性別…ユニセックス

「グローム(Gloam)」を一吹きすると、硬質なエスニックの香りがまず漂います。

カルダモンやピンクペッパーの「パチン!」という感触は、入眠時に覚える「落下感」にも似ています。

それでも心地よいと思える訳には、ミドルノートのジャスミンサンバックが関係しているからでしょう。

四肢と頭部がゆっくりとカウチに沈み込んでいくように、温かなお花の香りがまどろみの世界へといざなってくれます。

映像のイメージで言えば、黒澤明監督の映画『夢』となるでしょうか。

とても不思議な情景なのに、理想郷と言える世界がそこにはある。

もちろん、良い悪いで括れば良い方の夢、となります。

それはわたしたちの想像力が入りこむ、「秘密の花園」とも言えるでしょう。

ただ、ミドルノートのフローラルに甘さやフレッシュさはありません。

フローラルをここまで複雑にしたのも『イソップ(Aesop)』ならではだと思います。

ありのままとも脚色したとも言えない、抽象的なフローラルの香りが中央に佇んでいるのです。

ここで唯一現実的に感じるのは、ミモザの香りです。

モノトーンの背景にあって一つだけ鮮やかな黄色があるという、そんな存在感を保っているのがこのミモザです。

奥行きのあるミドルノートをかき分けて現れるのは、パチョリとウッディの深い香り。

深い森の中を彷徨っているような気持ちにもなります。

しかし怖いということはありません。

なぜだか落ち着く、ずっとここに留まっていたいというような、安らぎの香りを保つラストノートです。

「グローム(Gloam)」は全体を通して、複雑で物語性のある香りです。

香調はスパイシー・フローラルノートにあたるのですが、その一言では表しきれない個性もあります。

また「アザートピアス」シリーズ誕生以前の「マラケシュ インテンス」「タシット」「ヒュイル」「ローズ」より、香りが複雑なレイヤー構造になっていることも特徴です。

こうした多角的な表情は、現代ジェンダーレス香水の要となっていくのかもしれません。

個性がシンプルさを引き連れていないように、「べきである」という香水も少なくなっていく。

受け手の感性がどんどん翼を広げていく、そんな無限の解釈を可能とさせたのが「グローム(Gloam)」です。

その香りは叙事詩であり、人間と自然との複雑な関係性を問う物語でもあります。

お部屋で、音楽とともに、一人きりでまといたい

『イソップ(Aesop)』のスキンケアアイテムのように、「癒しの香り」と一括りにできないのも「グローム(Gloam)」の魅力の一つです。

「グローム(Gloam)」は先述したように複雑な香りですので、こういうファッションに、こういう人に、こんな場面に、と断定するのは少し難しいことかもしれません。

断定そのものを拒否してしまうような風情さえあります。

しかしまとうのならば、まさにそんな時、と言えるでしょう。

すべての肩書を外して「自分」という人間に戻りたい日に。

世にある情報をすべてシャットダウンしたい時に。

植物の深い香りが、空想という特異な体験への案内役をつとめてくれます。

敢えて言うのならばメンズライクでシャープな香りですが、だからといって「ワンピースには似合わない」、という訳ではありません。

むしろこの香りをつけたいからつける、そんなスタンスが「グローム(Gloam)」には似合います。

また空間を凌駕するような奥行きもありますので、お部屋で一吹きとしてみるのも良いでしょう。

インディーズの音楽を聴きながら、コーヒーを煎れながら。休日の大切な「おとも」にしたい、静寂的な1本です。

まとめ

『イソップ(Aesop)』フレグランスの中でもユニークな、潜在世界の香り「グローム(Gloam)」をご紹介しました。

ナチュラルな香りが揃うブランドにあって、こうした哲学的なフレグランスが見つかるのは興味深いことです。

これも植物と人間、両者の共存を目指す『イソップ(Aesop)』ならではの香りと言えるかもしれません。