1988年にパリで設立されたファッションブランド『メゾン マルジェラ(Maison Margiela)』は、実験的なデザインと確かな技術で、世界中から支持を集めています。
このブランドのもう一つの特徴は、「匿名性」にあります。
たとえばデザイナーのマルジェラは成功の道を辿っても、表舞台へ現れることは決してありませんでした。
メディアへのインタビューはすべて書面を通して行われ、顔写真もほとんど公開せず匿名性を貫き、2008年にはひっそりと引退していきます。
このように大変ミステリアスな『メゾン マルジェラ(Maison Margiela)』ですが、フレグランスラインを発表したのは誕生から10年余りが経った、1994年のことでした。
フレグランスのシリーズ名は「レプリカ(REPRICA)」といいます。
そのコンセプトは、“時代を超越する普遍性”。
こうして『メゾン マルジェラ(Maison Margiela)』は、ある都市、ある時代の思い出を「ヴィンテージアイテムの一つ」として、ファッションに取り込んでいったのです。
そんな「レプリカ(REPRICA)」シリーズも発売から30年が経ちました。
今ではジェンダーフリーな万能香水、ファッション香水として、世界中でファンを獲得しています。
さて2023年11月には、「レプリカ(REPRICA)」シリーズに最新作が仲間入りを果たしました。
琥珀色の液体が美しいオードトワレ、「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」です。
では今回はどの場所が、どの情景が、どんなムードが香りのベースとなったのでしょうか。
「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」の場面設定とともに、香りの詳細をご紹介していきたいと思います。
ナミビアの星空の下で。大切な人と焚火を囲みながら
「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」の舞台は、アフリカ南部にある国、ナミビアです。
時刻は夜更け。
目の前にあるのは雄大なナミビア砂漠と、満天の星空です。
そんな星空の下、焚き火を囲みながら自分自身や大切な人と分かち合う特別なひとときをイメージしたのが、「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」です。
年代はボトルのラベルにもあるように、2022年と最近のことです。
世界がパンデミックに苦しんでいた時のことですから、満点の星月夜での語り合いは特別な感情を呼び起こしたのかもしれません。
「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」は、そんなナミビアの地のあたたかく神秘的な空気をつくり出す、ウッディ調のフレグランスです。
ウッディが身に染みる、冬らしい香り
アンダー ザ スターズ(Under the Stars)オードトワレ
トップノート:ピンクペッパー、ブラックペッパー、シナモン・リーフ
ミドルノート:フローラル・ジャスミン・アコード、シプリオル、シダーウッド・バージニア
ラストノート:パチョリ、ベンゾイン、ラブダナム、ウード・インフュージョン、レザーアコード
発表年:2023年
調香師:不明
対象性別:ユニセックス(やや男性寄り)
「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」は深いウッドの香りが特徴的な、ミステリアスなオードトワレです。
トップノートはペッパー系の、ピリリとスパイシーな香りでスタート。
この幕開けは、自然の厳しさを思わせるような、夜空に浮かぶ星のきらめきを思わせるような、少し強めの印象です。
フローラルやシトラスの表情はゼロなので、驚く方も少なくないかもしれません。
この渋みは肌に馴染み、ドライダウンが始まると、さらに深まっていきます。
ここまででも分かるように、「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」は「レプリカ(REPRICA)」シリーズの中でもかなりメンズライクなフレグランスだと言えます。
ミドルノートで現れるウッドの香りには重厚感があり、“燻し”の雰囲気も感じられます。
それはまるで、本当に暖炉の側に立っているかのようです。
しかし高貴で希少なウッドの香料が効いているからでしょうか、スピリチュアルな側面も「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」には見られます。
ラストノートにあるラブダナム(葉から出る、あたたかみのある樹脂の香り)が顔を出すと、「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」はより神秘的な印象に変わっていきます。
総じて明るい香りとは言えないのですが、壮大で物語性のある香りとしては「レプリカ(REPRICA)」シリーズの中でも一、二を争うほどです。
渋みの中にある落ち着いた表情と、侘び寂びすら感じるミステリアスな雰囲気からは、大人の男性の物思いの風景が浮かんできます。
薪の香りと残り火の温もりに包まれて。
どこか遠い場所で、冬の星空を見ている時にふっと漂ってきそうな、情緒的な香りが今回の「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」です。
高い持続性と渋み。冬の装いと相性の良い香り
「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」はオードトワレですが持続性が高く、香りが長持ちするタイプのフレグランスです。
ウッド、レザーの渋みある香りが特徴で、なおかつ拡散しにくいので、冬のファッションとの相性も抜群だと言えるでしょう。
タートルネックセーターや、チェスターコートの中に忍ばせるのも素敵だと思います。
体温であたためられた「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」の香りが外気と触れる時には、センシュアルな雰囲気を周囲に与えるはずです。
年齢層は30代半ば以降の大人の男女に。
男性寄りのフレグランスではありますが、ウッド系の香りが好きな女性にはぜひともお勧めしたい1本です。
また、「レプリカ(REPRICA)」シリーズには同系統の香りとして「バイ ザ ファイヤー プレイス」があります。
こちらは2015年に発売された、同じウッド系(暖炉・薪)の香りです。
しかし「バイ ザ ファイヤー プレイス」とは違い、甘さが一切ないのが「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」の特徴です。
そのため「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」は、『メゾン マルジェラ(Maison Margiela)』でも一番渋みのある香りだと言えるでしょう。
香りも深く、持続性も高いので、一人きりor親密な距離感で相手と過ごす時にその魅力を発揮します。
いずれにしろ「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」には、「雰囲気のある」「ミステリアス」「センスのいい」といった言葉がよく合います。
ファッションブランドの『メゾン マルジェラ(Maison Margiela)』らしい、洋服に似合う香りというのも嬉しいところです。
まとめ
『メゾン マルジェラ(Maison Margiela)』の「レプリカ(REPRICA)」シリーズは、年代や場所、時刻、天気、ムードや感情の揺らぎまで、さまざまな記憶を鮮やかに再現する“メモリー・フレグランス”だと言えるでしょう。
今回の「アンダー ザ スターズ(Under the Stars)」はナミビアの砂漠・満天の星空の下で、という神秘的な設定でした。
シリーズにはほかにもたくさんの設定があるので、季節やTPOに合わせて、香りをオーラのように身にまとってみてくださいね。