フランスの高級ファッションブランド、『Dior(ディオール)』が最初の香水「ミス ディオール」を発表したのは、1947年のことでした。

「ミス ディオール」は発売以来、リニューアルを繰り返してきました。現代でも世界中で親しまれている香水の一つとなっています。

『Dior(ディオール)』は「ミス ディオール」の成功を受け、その後も香水業に力を入れるようになります。

同ブランドはファッションと同じように、香水・コスメの新しい商品を次々に生み出していったのです。

そんな「ミス ディオール」の発表から20年近くたった1966年に、『Dior(ディオール)』はメンズフレグランスの「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」を発売します。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」はブランドにとって初めてのメンズフレグランスでした。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」の意味は、“野生の水”となります。

初代広告モデルには仏俳優で映画『太陽がいっぱい』の主演を務めた、アラン・ドロンが招かれました。

その香りは「ディオールのエレガンスの代名詞」と呼ばれるほどで、発売当時はヨーロッパ中の男性がこぞって着けたといいます。

では現在もカウンターのセンターに並ぶ「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は、どれほどの魅力があるのでしょうか。

今回は香りの構成や特徴について、詳しくご紹介したいと思います。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」が“伝説の香水”と呼ばれるワケ

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は1966年、名調香師エドモン・ルドニツカによってリリースされたディオール初のメンズフレグランスです。

エドモン・ルドニツカはこの香りに、史上初めて「ヘディオン」という合成香料を加えました。

「ヘディオン」とは、ジャスミンに含まれる分子の一つです。

一説では「女性が嗅ぐと女性ホルモンが分泌される」と言われていますが、「ヘディオン」を加えることによって、香りにはさらなる繊細さや柔らかさ、丸みが与えられるということです。

そんな「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は、シトラス・フローラルの「元祖」とも呼ばれています。

また「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」にもある「オー(水)」という名は、今日たくさんのフレグランスに用いられるようになりました。

このように、「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は「ヘディオン」の採用そして世界的な成功を受けて、半世紀以上も愛される“伝説の香水”となっていったのです。

フレッシュな“野生”の香り、太陽を自分のものにするパワー

オー ソバージュ(Eau Sauvage)オードトワレ

トップノート…ベルガモット、レモン、バジル、ローズマリー、キャラウェイ、フルーツノート

ミドルノート…ジャスミン(へディオン)、パチョリ、カーネーション、コリアンダー、アイリス、サンダルウッド、ラベンダー

ラストノート…オークモス、アンバー、べチバー、ムスク

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」はオードトワレでありながら、香りの変化が存分に感じられる“伝統的”な1本です。

トップノートでは弾けるようなシトラスの香りが目立ちます。

しかしベースのベチバーやモスがすでに頭角を現しはじめており、スタートからメンズライクな表情がしっかりと感じられます。

これはいわゆるトニックのような香り、とも言えますが、その清潔感に古さはまったく感じられません。

『Dior(ディオール)』らしいエレガンスに満ちていて、「これから何かが始まる」といったドラマチックな雰囲気もあります。

数分後にはミドルノートがすぐに現れます。

シトラスはその存在感を保ったままで、ラベンダー、ローズマリーのアロマティックな香りが3時間〜5時間ほど、長く続いていきます。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」はオードトワレですが、この持続時間が素晴らしいところです。

そこにはヘディオンの効果が表れているのでしょう。

穏やかでやさしく、しかし野性味はきちんと残しながら、まるで太陽を味方につけた男性のように、キラキラと肌の上に残っていくのです。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」から派生した香りとして、21世紀の「ソバージュ」シリーズがあります。

ブルーのボトルが印象的な、人気のフレグランスラインです。

しかし「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」が新しいタイプと違うのは、ラストノートの重厚さにあるでしょう。

こちらはかなり低音なラストノートで、非常にメンズらしい雰囲気があります。

強いウッディ感と伝統的な香水によく見られる、クラシカルな表情も感じられます。

こうした表情は、『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンそのものです。

野性的でありながら、強さも、ちょっとしたもろさもある香りは、一周回って“今こそ感じたいメンズ本家の香り”となるのではないでしょうか。

世界ではこの香りを模倣したヘアートニックやオーデコロンがたくさん発売されましたが、元祖「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」の繊細さや、エレガンスにはかなわないかもしれません。

当時はメンズフレグランスとして発売された「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」です。

しかしその着けやすさとフレッシュさが受けて、女性もまとえると評判になりました。

現代では、ユニセックス香水が当たり前となっています。

ただ60年代でこのような香りを創造できたことはやはり偉大だと言えますし、「伝説の香水」と呼ばれる理由にも深く納得がいきます。

クラシックな雰囲気のルックに、海外旅行にも持っていきたい1本

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は、普段使いとしてはTPOを選びます。

オードトワレではありますが存在感が強めで、カジュアルとは無縁です。

カジュアルであっても、まとうとしたら『Dior(ディオール)』らしいクラシカルなルック、たとえばシャツとパンツの組み合わせなどがお似合いになるでしょう。

またヨーロッパへ旅行に出かける際もおすすめです。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は、ヨーロッパのクラシックなビストロや伝統的なレストランの雰囲気にもよく合います。

年齢層は、やはり大人の男性に。

太陽を独り占め、とコンセプトにはありますが、たとえ太陽が影っていても不思議と似合ってしまうのが「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」の魅力です。

「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」は優雅で、人生経験の豊富な、「太陽は自分の中にある」といった大人の男性にこそおすすめしたい1本です。

まとめ

『Dior(ディオール)』初のメンズフレグランスにして、「伝説の香水」と名高い「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」をご紹介しました。

現代では少なくなってしまった真のメンズフレグランス。

だからこそ感じられる力強さが、「オー ソバージュ(Eau Sauvage)」にはあります。