2024年2月、『エルメス(HERMÈS)』からメンズ向けフレグランス「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」が発売になりました。

これは、2021年に初登場し話題を集めたオードトワレ「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」と同じシリーズです。

「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」は、女性調香師のクリスティーナ・ナジェル氏が担当した香りで、これまでウッディ系がメインだったメンズ向け香水を「根本から変えた」として評判になりました。

ハーブの効いたグリーンノート、ウォータリーなみずみずしさと冴えるメタリックブレンド。

「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」のボタニカルな香りはまさに、新時代の男性像(ノージェンダーライク)を彷彿とさせるものだったのです。

そんなシリーズから新発売となった今回の「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」は、「雨上がりに漂う自然の香り」をイメージして作られました。

老舗メゾン『エルメス(HERMÈS)』が新たに発表したメンズ・フレグランスには、一体どのような思いが込められているのでしょうか。

香りのコンセプトとともに、その構成・香り立ちを詳しくご紹介していきたいと思います。

『エルメス(HERMÈS)』の思いをミニマルに表現

まずは「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」の名前について振り返ってみたいと思います。

「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」のH(フランス語の発音でアッシュ)は、HERMÈS(エルメス)、HOUR(時間)、HUMAN(人)の頭文字から取られました。

数字の24は、『エルメス(HERMÈS)』の第一号店があるパリ・サントノーレ通りの番地、つまり本店の住所となります。またこれは一日が24時間であることにも関係しています。

このアルファベット+数字だけというシンプルな名前は、ミニマリズムのほか、時間に従属しないという『エルメス(HERMÈS)』ならではの男性像を表現したものです。

現代風のアロマティック&ボタニカルな香りが評判で、エルメス・マンの新しい顔として今も人気を集めています。

今回の「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」は、「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」よりもさらにフレッシュで、さらに使いやすい香りとなって登場しました。

「エルブ ヴィーヴ(HERBES VIVES)」は日本語で「生きた草葉」を意味します。

調香を担当したのは、「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」と同じクリスティーナ・ ナジェル氏。

雨上がりの日に漂う濡れた草葉の香りをイメージしており、すがすがしくもリラックスムードにあふれた1本となりました。

それでは次で香りの構成を詳しく見ていきましょう。

ハーブがやさしい、ジェンダーニュートラルな香り

H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)オードパルファム

ノート:クラリセージ、セイボリー、パセリ、ヘンプ、ソレル、洋ナシ、ミント・フィスクール

発表年:2024年

調香師:クリスティーナ・ナジェル

対象性別:ユニセックス(男性寄り)

「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」は、とてもすがすがしいハーブの香りでスタートします。

鼻腔にスッと通り抜けるのは、クラリセージとパセリ、セイボリーの薬草的な香り。

上質なハーブティーを思い出します。

しかしそんなハーバルさにも『エルメス(HERMÈS)』らしい高級感が表れています。

植物系の香りですが洗練されたイメージで、きちんとカッコいい。

シャープで先鋭的で、現代アートのようでもあります。

20〜30分で肌に馴染んでくると、洋ナシの甘い香りが勢いを増していきます。

ですが甘みはそこまで強くありません。

かすめる程度のほんのりとした甘みで、端正です。

ここで先ほどのハーバルノートにしなやかな感覚が加わります。全体的な印象もぐっと近づきやすくなりました。

マスキュリンさは前回の「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」と同様、非常に控えめです。

80年代から近年まで、メンズ・フレグランスには「ウッディで力強さを、レザーやタバコノートでセクシーさを」といった風習・定説がありました。

ところが今回の『エルメス(HERMÈS)』は、メンズフレグランスの主役を“植物”としています。

『エルメス(HERMÈS)』のメンズ部門のアーティスティック・ディレクター、ヴェロニク・ニシャニアン氏はこれに対し、「メンズフレグランスに植物を使ったのは、確かに大胆な選択でした。しかしこれが、新たな時代の前兆となると私は信じています」と語りました。

このように、既存の概念がすっかり取り除かれた「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」。

非常にニュートラルで、自然そのものの生きた香りが特徴です。

体温と混ざったラストノートでは、ほんのりムスクのあたたかい香りが漂います。

雨上がりのすがすがしい草葉の香りから、人間味あふれる情緒的な香りへ。

「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」では、1本の中にさまざまな男性のイメージがミニマルに描き出されています。

しかしながらここに攻撃性はありません。誰かを惹きつけるという媚薬的な感じもありません。

どんな形にも当てはまらず、むしろ形に当てはめられることを嫌うといったニュアンスが含まれています。

「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」では、まとった本人がいかに心地良くいられるか、そしてその心地良さがどう人へ伝播していくか、そういったことが追求されているのだと思います。

いい意味での「自尊心」「独立心」が表れていると言えるでしょう。

そんな「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」では、都会と自然、自国と他国、現実世界と仮想世界など、いろいろな場所を舞台とする現代人の柔軟性が表現されているようです。

オフィスにもテレワークにもオフの日にも。いつでもどこでも、好きな時に

前回の「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」は、大都市に暮らすメトロセクシャルな男性がイメージできましたが、「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」では一転、肩ひじ張らない・力まない印象を持ちます。

香りも強すぎないので、オンでもオフでもテレワークでも、ご自身の好きな時に気軽にまとっていただけるでしょう。

アロマ的な使い方に近いかと思います。

もちろん年齢も、ファッションも問いません。

パーカーなどカジュアルな服装であっても、「H24 エルブ ヴィーヴ(H24 HERBES VIVES)」の香りが『エルメス(HERMÈS)』らしさを打ち出してくれます。

女性も問題なくまとっていただけますので(女性なら少し洋ナシの甘さが強まります)、カップルで共有することも可能です。

ハーブの香りが好き、穏やかな香りが好き、そしていかにもなメンズ香水に疲れてしまった、などという方にはピッタリの香水と言えるでしょう。

まとめ

2020年代に発表された「H24(アッシュ ヴァンキャトル)」シリーズは、瞬く間に『エルメス(HERMÈS)』の新しい顔となりました。

今も昔も愛される植物の香りですが、今回は自然とテクノロジーが大胆に融合された香りとなっています。

そんな『エルメス(HERMÈS)』新時代のメンズフレグランスを、ぜひ試してみてくださいね。