フランス・オートクチュール界のトップに君臨するファッションブランド、『ディオール(DIOR)』。

『ディオール(DIOR)』は1947年の誕生と同時に、香水部門である「パルファム・クリスチャン・ディオール」を立ち上げ、「ミス・ディオール」など数々の名香を発表してきました。

ファッションと香水を同時に立ち上げた理由には、「ファッションとは、服だけでは完結しない」という創業者クリスチャン・ディオールの哲学が関係しています。

つまり『ディオール(DIOR)』は、ファッションだけでなくヘアスタイルやメイクアップ、バッグ、シューズ、そして香りと、すべてにこだわりを見せた史上初のブランドだったのです。

そんな『ディオール(DIOR)』が誕生した翌年には、「ニュールック」と呼ばれるコレクションが発表されます。

「ニュールック」は第二次大戦後、疲れ果てていたパリのファッション界に希望と活力を取り戻しました。

その特徴は、柔らかい生地を贅沢に使ったドレスワンピースと、女性らしい砂時計型のフォルムです。

また2010年からスタートした『ディオール(DIOR)』フレグランスの最高級ライン、「メゾン クリスチャン ディオール」では、「ニュールック」にオマージュを捧げた香り「ニュールック 1947(NEW LOOK 1947)」が発売され、大ヒットとなりました。

それから14年後の2024年。

「ニュールック 1947(NEW LOOK 1947)」は、スター調香師フランスシス・クルジャンによって再解釈され、「ニュールック(NEW LOOK)」オードパルファムとして生まれ変わりました。

『ディオール(DIOR)』の起源であり真骨頂と言える「ニュールック」は、2024年の新時代にどう生まれ変わったのでしょうか。

今回は最新作「ニュールック(NEW LOOK)」の魅力について迫ってみたいと思います。

フェミニンだった香りがジェンダーフリーに。花を一切使わないという挑戦も

『ディオール(DIOR)』フレグランスの最高級ライン、「メゾン クリスチャン ディオール」から発表された「ニュールック 1947(NEW LOOK 1947)」は2010年、ブランドの初代調香師フランソワ・ドゥマシーによって調香されました。

この香りが2023年に廃盤となり、2021年に二代目専属調香師として就任したフランシス・クルジャンによって再解釈されることになりました。

『ディオール(DIOR)』の「ニュールック」とは、1947年当時ファッション界に革命をもたらした、ブランドならではの美しいスタイルを示す用語です。

当時は大戦後ということもあって、世の女性たちは質素で慎ましやかな服装を着るしか術がありませんでした。

そこで『ディオール(DIOR)』は、なだらかなショルダーラインに細く絞ったウエスト、腰に向かって広がるペプラムが特徴的な「ドレススタイル」を提案し、女性たちに新しい希望と憧れをもたらしました。

初代「ニュールック 1947(NEW LOOK 1947)」は、そんな古き良き『ディオール(DIOR)』のスタイルを香りで表現したものです。

しかし二代目専属調香師のフランシス・クルジャンは、この香りを時代の流れにのっとって、ジェンダーレス・フレグランスに改良します。

ということで2024年に発表された新「ニュールック(NEW LOOK)」には、“ジェンダーをクロスする”という深い意味が込められています。

驚くべきことに、今回の香りにはフローラルノートが一切使用されていません。

現代の「ニュールック」を意識して、香りに想像を越えるコンポジションを施したというフランシス・クルジャン。

まったく新しい『ディオール(DIOR)』の香りを、次で詳しくご紹介していきましょう。

ヨーロッパ然としたカッコいいノート。アンバーの美しさが光る香り立ち

ニュールック(NEW LOOK)オードパルファム

トップノート:アルデヒド

ミドルノート:フランキンセンス

ラストノート:ホワイトアンバー

発表年:2024年

調香師:フランシス・クルジャン

対象性別:ユニセックス

「ニュールック(NEW LOOK)」では、トップノートから『ディオール(DIOR)』らしい、ラグジュアリーな香りが漂います。

ここではアルデヒド(※)という人工香料が使われています。

しかしそれにも関わらず、どこか人間らしさを感じさせる香りの処方となっているのは、さすがフランシス・クルジャンと言えるでしょう。

次に来るフランキンセンスのお香っぽい香りが、先のアルデヒドによって立体的な広がりを見せています。

※アルデヒド…他の香料に奥行きを持たせ、引き立たせる性質を持つ人工香料。

さて、神秘的な香りのするフランキンセンスですが、このミドルノートでは元来の神秘性に加え、慎み深さと落ち着きが感じられます。

それはまるで、ヨーロッパの厳かなカテドラル(大教会)に佇んでいるかのよう。

静寂の中で聴こえるのは、まとった服の擦れる音だけです。

そんな状況で、ふと脳裏に浮かぶ美しい香り。

フローラルノートを一切使っていないのに、花のある風景を想像してしまう不思議。

想像の中の「パリ」が、ファッションの都そして香りの都だったことを思い出します。

ラストノートで香る、ホワイトアンバーのエレガンスにはため息が出てしまうほどです。

これぞオートクチュール、これぞ『ディオール(DIOR)』といった贅沢さで、銀幕のスターのような面影も残しています。

もちろん、古臭いということはありません。

贅沢でもトゥーマッチな感じがしないのは、研ぎ澄まされたホワイトアンバーが、「シンプルさ」そのものを表現しているからだと思います。

女性らしい、男性らしいという概念もなく、アンバーの美しさにただただうっとりとしてしまうことでしょう。

全体的に甘さはなく、モダンで、フォーマルな印象です。

2024年に発表された「ニュールック(NEW LOOK)」とは、このようにノージェンダー・シンプルさ・ミニマリズムを体現したものなのだと思います。

ファッションとの相性抜群。香りさえもファッションに

今回の「ニュールック(NEW LOOK)」は、ファッション抜きには語れない香りだと言えるでしょう。

非常にラグジュアリーなこの香りは、アンバーの美しい奥行きが特徴的です。

これがまとう人自身のもつ香りと合わさることで、唯一無二の個性を引き出してくれるのです。

ファッションがその人の個性を表しているように、「ニュールック(NEW LOOK)」もまた、その人の個性を表した上で、受け入れてくれます。

よってこの香りをまとう時にはぜひ、お気に入りのファッションとともに楽しんでみてください。

ジェンダーも年齢も問いません。

ファッションを愛するすべての人に。

『ディオール(DIOR)』ファンの方であれば、一度ぜひ試香してみることをおすすめします。

いずれにしろ「ニュールック(NEW LOOK)」は、ファッションと香りが連結した『ディオール(DIOR)』の新しいアイコン・フレグランスとなるでしょう。

まとめ

『ディオール(DIOR)』の最高級フレグランスラインから発売された「ニュールック(NEW LOOK)」は、新と旧、カジュアルとリュクス、ジェンダーとジェンダーが交錯する素晴らしい香りとなりました。

懐かしいのにとても新しい、「ニュールック(NEW LOOK)」。

この香りをまとえば、普段のコーディネートが一段と楽しくなることでしょう。