フランス・パリ発祥のフレグランスメゾン、『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』。
ブランド名にもなっている創業者のセルジュ・ルタンスは、ファッション、メイク、写真、映像など、さまざまな分野でその才能を発揮してきた、異色のアーティストです。
そんなセルジュ・ルタンスがつくり出す香りは、過去の記憶や夢、架空のストーリー、そして自身が移住を果たしたモロッコという国がインスピレーション・ソースとなっています。
想像力を掻き立てるような香りも多く、一度身にまとえばセルジュ・ルタンスの持つ美の世界にグイグイと引き込まれてしまうことでしょう。
いずれにしろ哲学的で知性を伴う、大人向けの香りが多いと言われる『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』。
「気体の宝石」とも呼ばれるその香りに魅せられたファンも、世界にたくさん存在しています。
さて2023年11月には、よりモダンで個性の強いイメージを持つ「コレクションノワール」シリーズから、新作「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」が発売になりました。
「コレクションノワール」とは、本物の“美”は流行や時代を経ても色あせるものではないという『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』の思いが形になった、個性的なフレグランスのラインです。
新作「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は同ラインから誕生し、官能的で温かみのあるタバコの葉の香りが特徴的なオードパルファムとなりました。
では今回の新作は、一体どのような香りなのでしょうか。
香りのコンセプトや構成、香り立ちについて、詳しくご紹介していきたいと思います。
目次
燃え上がるように自由な人生を楽しむ人たちへ。絢爛と退廃が混じり合う香り
さぁ急いで!世界が終わってしまう!
我々はいつも、何かに追われるように今を生きる。
大砲の音に紛れ、シャンパンのコルクが弾け飛ぶ。これは爆発?
煙が立ち上る情景、今日という日は美しい。
ー『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』公式HPより
新作「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は、『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』らしい、とても哲学的な香りです。
香りのコンセプトは、「生ける今」。
あっという間に過ぎ去る時間を“煙”に見立て、人生を濃密に生きなければならないという刹那的な思いを香りに閉じ込めました。
「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」はまた、セルジュ・ルタンスが自身のイメージで創作したオードパルファムになります。
パンデミックから立ち上がった世界は今、ニューノーマルで必要とされた“癒しの香り”から一転、“どこか遠くへ”旅立たせてくれるような、個性的で力強い香りを求めています。
今回の「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」には、そんな強いアイデンティティのほかにも、プルースト的なアクセントが加わっています。
むしろ、この強い個性は文学的な一面を含んでいるからだと言えるでしょう。
人生は最大限の称賛をもって、これ以上ないほど濃密に生きなければならない。
失望の時はすぐに、容赦なく牙を剥きながらやってくるのだから。
というように「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」の香りには、今を生きる人々に向けた、刹那的で情熱的なメッセージが込められています。
カカオ、ラム、煙草の雰囲気ある香り、エレガンスとデカダンスを同時に
エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)オードパルファム
ノート:タバコ、カカオ、ラム
発表年:2023年
調香師:クリストファー・シェルドレイク
対象性別:ユニセックス
「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は、私たちのイマジネーションに火を付ける、とても芸術的な1本です。
そのトップノートは酒樽のような深みあるウッドと、ラムの香りでスタートします。
軽さやフレッシュさはありません。
仄暗い雰囲気に漂う、樹脂のような香りが特徴的です。
開幕から香るヘビーなノートには、驚いてしまう方もいるでしょう。
スモークが立ち込める地下室の中で、見えない誰かを待っているようなミステリアスさもあります。
つけたてから約一時間はこのような香りが強いのですが、肌に馴染んでくるとウッドノートが消え、カカオの香りが目立つようになります。
これはショコラ・ノワール(ブラックチョコレート)の香りに近いです。
近づきにくかったトップノートが、ここで緩和されるといった感じもあります。
カカオとラムの大人カッコいい雰囲気には、多くの人が釘付けになってしまうことでしょう。
煙草の香りは全体的に控えめです。
むしろ煙草を前に出さないことが、「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」のエレガンスを引き立たせているのだと思います。
また、とてもダークな印象で、デカダン文学を思わせる“退廃性”も特徴の一つです。
ラストノートにかかる頃には一転して、グルマンノート(お菓子のような甘い香り)が強まってきます。
そのオリエンタルな甘さは、まるで高級チョコレートを口に含んだ時のよう。
幻想的にフェードアウトしていくラストも、とても『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』らしいと言えます。
ただ最初から最後まで自己主張が強い香りですので、まとう人を選んでしまうかもしれません。
持続力も大変高く、およそ12時間は肌の上に残ります。
しかしそういった意味では、コンセプト通りの「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」です。
今回の新作「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は、“今”という時間を濃厚に、強く太く生きる人に向けて捧げられた香りとなります。
香り上級者、個性的なフレグランスを愛する方へ
「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は、香り上級者、『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』ファン、そして個性的なフレグランスを愛するすべての方に、深く刺さる1本だと思います。
個性で言えば、ブランドの中でも上位にランクインするでしょう。
神秘的、退廃的、そしてエレガントな空気を内包した香りですので、そういった世界観がお好きな方にもおすすめです。
季節は晩秋〜冬がマストです。
春夏の明るさ・気温では「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は重すぎて、せっかくの個性を活かしきれません。
香りに仄暗い雰囲気もあるため、やはり日照時間の短い冬の季節が似合います。
また「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は、男女問わず使用していただけるノージェンダーのオードパルファムです。
年齢は何歳でもOK。
ダークネスな雰囲気に、「この香りは何?」と質問されることも増えるでしょう。
ただ液体が琥珀色をしておりますので、まとう際は十分な注意が必要です。
まとめ
『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』の新作「エクランドゥフュメ(ÉCRIN DE FUMÉE)」は、冬の季節にまといたい個性的なフレグランスです。
その香りはダークで、エレガントで、文学的で退廃的。
『セルジュ ルタンス(Serge Lutens)』の美学をすべて詰め込んだような香りに、ファンの皆さんも喜ばれることでしょう。