アメリカ発のラグジュアリーブランド、『トム フォード(TOM FORD)』。
メンズ・ウィメンズファッションからアイウェア、コスメまで揃う『トム フォード(TOM FORD)』は、「ラグジュアリー」という言葉をを21世紀に再定義することをブランドのミッション(理念)としてきました。
デザイナーのトム・フォード氏は、苦難にあえいでいたかつての「グッチ(GUCCI)」を立て直したことでも有名です。
そんなスター・デザイナーが立ち上げたブランド『トム フォード(TOM FORD)』は、セクシーさ、時代を超越したエレガンス、上質な素材と確かな加工技術で、瞬く間にファッショニスタたちの憧れの的となっていきました。
しかし現在では、トム・フォード氏もファッション界から身を引いているといいます。
ビューティー部門はエスティ・ローダーグループに売却されましたが、コスメ・フレグランスは彼の意志を引き継いだままの形で残っています。
特に『トム フォード(TOM FORD)』のフレグランスはニッチ寄りの複雑な香りが多く、デザイナーズでありながらも芸術的な香りだと評判です。
2024年初頭には、「バニラ」を軸とした官能的なフレグランスが二本、発表になりました。
一つはバニラを官能的に表した「バニラ セックス(VANILLE SEX)」、もう一つはウッディミックスの渋さが光る「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」です。
後者の「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」は、既存の香りにパッケージがアップデートされて再登場しています。
今回はこの「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」について、詳しくご紹介していきたいと思います。
マダガスカルのバニラを使った深みある香り
「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」は、『トム フォード(TOM FORD)』の高級フレグランスライン、「プライベート ブレンド コレクション」から発売となった香りです。
最初の発表は、2018年のことでした。
この素晴らしいフレグランスに使われた香料には、マダガスカル産のバニラが含まれています。
マダガスカルは、世界市場の80%を占める一大バニラ生産地です。
『トム フォード(TOM FORD)』はその中でも品質の良いバニラをチョイスし、スパイシー、フローラル、ウッディの香料で「魔性のバニラ」を完成させました。
調香師は同ブランドの「ヴェルヴェット オーキッド」、「サンタル ブラッシュ」などを調香したヤン・ヴァスニエです。
コクと深みのあるマダガスカル産のバニラを駆使した「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」は、バニラ好きにはもちろんのこと、普段バニラを好まないという人にも驚きと感動を与えた、大人気フレグランスの一つとなりました。
2024年2月には、そんな「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」のパッケージが刷新されます。
ボトルは以前のダークブラウンカラーから、ハニーカラーと深いチョコレートブラウンをかけ合わせた二層のデザインに。
「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」の香りによく似合う、ラグジュアリーな装いです。
それでは香り立ちについて見ていきましょう。
難解なトップノート、孤高のバニラがスエードと混ざり合う
バニラ ファタール(VANILLE FATALE)オードパルファム
トップノート:ミルラ、オリバナム、ラム、サフラン、コリアンダー、オレンジ、ライム
ミドルノート:大麦、コーヒー、プラム、フランジパニ、スイセン、アルテミシア、ローズ
ラストノート:バニラ、スエード、マホガニー、パチュリ、オークモス、ヴァイオレット、タバコ
発表年:2018年
調香師:ヤン・ヴァスニエ
対象性別:ユニセックス
バニラの先入観を持って「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」を嗅ぐと、その期待は見事に裏切られます。
まず最初に香るのは、寺院系のオリエンタル・スパイシーなノートに、樹脂系のくぐもった匂いのアンサンブルです。バニラの香りはまだ感じられません。
イメージとまったく違うトップノートですので、多くの方が呆気に取られてしまうかもしれませんね。
そしてこのトップノートは、少し難解でもあります。
寺院系の香りと樹脂系の香り、次に現れる焼き菓子のようなサフランの香りが、レイヤードされたような形で鼻腔を通り抜けます。
しかしそれを紐解くのは至難の業。
明確に輪郭を感じ取ることもできません。
むしろ「香り上級者向き」として、篩(ふるい)にかけられているような気持ちになります。
「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」は、この難解さが強みだと言えます。
可愛らしく従順なバニラ香水では物足りない、という人のために。
複雑怪奇な香りが、大人向けのバニラ・フレグランスとしてじわじわと本領を発揮していきます。
主役のバニラはミドルノートでようやく姿を現すのですが、これは、バックに大麦とフランジパニを伴った粋な仕上がりになっています。
クリーミーで、香ばしく、でもちょっと手を伸ばしたら払いのけられてしまいそうな緊張感も感じられます。
後から来るコーヒーの苦みがそうさせているのでしょう。
「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」の名にふさわしい、「孤高のバニラ」の完成です。
そして香りは最後、スエードと混ざり合うことで、より魔性の雰囲気に変わっていきます。
イメージカラーはやはり、ダークブラウン。
ドラマチックな香りの移り変わりも、「ファタール(運命、魔性)」のイメージにぴったりです。
冬、フォーマル、ジェンダーレス。一筋縄ではいかないバニラ香水
「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」は、重めの香料をふんだんに使ったフレグランスですので、空気の乾燥する冬がいちばん綺麗に香ります。
イメージ通りの「こげ茶バニラ」を出すには、空気も肌も乾燥していればしているほど良いでしょう。
装いはもちろん、『トム フォード(TOM FORD)』らしくフォーマルで。
年齢は20代後半以降の男女であれば、上はいくつでもOKです。
バニラ単体を愛するバニラ香水ラバーの方には、ウッド・スパイスの香りが効きすぎていて「甘みが足りない」と思われるかもしれません。
しかし甘さ控えめのバニラは、意外にも汎用性が高いものです。
冬だけの特別なフレグランスとして、または勝負香水として、ラインナップに加えるのも名案だと思います。
逆にウッド・スパイス系が普段の好みだという人にも、使いやすい香りだと言えるでしょう。
いずれにしろ一筋縄ではいかない「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」、中毒性のある魔性の香りであることに間違いはありません。
まとめ
『トム フォード(TOM FORD)』のプライベート レーベル コレクションから、魅惑の香り「バニラ ファタール(VANILLE FATALE)」をご紹介しました。
いつもは可愛らしくなりがちなバニラですが、『トム フォード(TOM FORD)』によって見事なファタールの香りへと変貌を遂げています。
ここでしか香ることのできないバニラを、ぜひ手に取ってみてくださいね。