フランス・パリ生まれの『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』は、「香りの編集者(エディション ドゥ パルファム)」というコンセプトを掲げる、唯一無二のフレグランスブランドです。

創設者フレデリック・マル氏の祖父は、パルファム・クリスチャン・ディオールを立ち上げたあのムッシュ・ディオール。

彼の親族にはさらに、調香師や実業家、映画監督などが名を連ねていました。

そんなフレデリック・マル氏は幼い頃から香水のある環境で育ったため、香りが人に与える影響・香りの芸術的側面を早くから理解していたそうです。

2000年には、真のラグジュアリーパルファムの制作にこだわった『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』をパリで立ち上げます。

そこでフレデリック・マル氏は、これまで影の存在だったという「調香師」にスポットライトを当てました。

彼らにはマーケティング戦略や時間、原料、コストなどにとらわれず、クリエイティビティーの自由を与え、芸術的な香りを作ることを依頼します。

こうして発売された香水の数々は、そのコンセプトの通り「調香師自身が本当に作りたかった香り」として、フランス国内外の顧客に広く受け入れられていきました。

さて2023年には、そんな『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』の長年のパートナーで調香師の、ジャン・クロード・エレナ氏が「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」を手がけ、発表します。

ジャン・クロード・エレナ氏といえば、「ナイルの庭」「モンスーンの庭」などを手がけた世界的調香師です。

その彼が「抱擁の香り」と謳うのが、今回ご紹介する「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」です。

「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」については、フレデリック・マル氏自身も「おそらく彼の最高傑作のひとつになるだろう」と語っています。

それでは「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」は一体、どんな香りがするのでしょうか。

香りのコンセプトとともに、構成・香り立ちを詳しくご紹介していきたいと思います。

クラシックなフランスの香水をモダンにアレンジ

「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」は、“香りと肌の融合”を目指したオードパルファムです。

この香りが表現するのは、「センシュアル」と「温かみ」の共存。

そして、控えめながらも気品漂うパリジェンヌの様子を香りの中に閉じ込めました。

「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」を調香したジャン・クロード・エレナ氏は、これまでに5種のフレグランスを『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』から発表しています。

人気香水の「ローズ&キュイール(ROSE&CUIR)」、「ロー ディヴェール(L’EAU D’HIVER)」などがそれに当たります。

しかし今回の新作「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」は、その中でもいちばん“喜び”に満ちた香りだと言えるでしょう。

というのも、フランス人であるジャン・クロード・エレナ氏と、フレデリック・マル氏の二人は、今回の「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」を即興的に作っています。

これは二人が幼い頃から慣れ親しんできたフランスの、リッチでセンシュアルな香水を「モダンにアレンジする」ことを意味しました。

かつて流行した「抱擁の香り」を、現代風に再現したのです。

そこに躊躇はなかったのでしょう。

“過度な自己主張は避け、控えめな官能性を”

“フットワークの軽いパリっ子のように、飾り気なく”

と、現代のフレンチ・フレグランスについて意気投合する二人の会話が聴こえてくるようです。

このように「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」は、マイナス要素を一切含まない、明るい喜びと幸せに満ちた香りです。

では次で詳しく香りの構成を見ていきましょう。

まろやかなアイリスの香りに抱かれる。親密な空間でのひとときを香りで表現

ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)オードパルファム

トップノート:クローブ、アンブレット、キャロットシード

ミドルノート:アイリス、ベチバー

ベースノート:バニラ、ムスク、ピーチ

発表年:2023年

調香師:ジャン・クロード・エレナ

対象性別:ユニセックス(女性寄り)

「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」ー「天国は待ってくれる」という素敵な名前が付いたこのオードパルファムは、ムスキーなアンブレッド(※)の香りでスタートします。

ラグジュアリーパルファムらしく、鼻腔に引っかかるような雑味も一切残りません。

※アンブレッド…ハイビスカスの仲間、トロロアオイ属の黄色い花から取れる種子で、ムスクに似た香りを持つ。

しかし数分経つと、今度はクローブのスパイシーな香りが顔を出し、スモーキーな香りもちらほらと漂いはじめます。

元の柔らかいアンブレッドの香りは、ここで早くもトーンダウンしてしまうのです。

この予想外の展開には、フランス香水によくある「複雑さ」を想像してしまうことでしょう。

周囲を翻弄するミステリアスな女性も彷彿とさせます。

ただ、昔の香水のようなどっしりとした複雑さは「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」にはありません。

「懐かしい」香りはしますが、とてもソフトで軽快なので、2020年代でまとってもまったく違和感がないのです。

さて「懐かしい」香りの正体は、ミドルノートのアイリス(あやめ)です。

パウダリーな香りのアイリスは、70〜90年代の“マダム香水”によく使用されていました。

エルメスの「イリス」、ゲランの「サムサラ」などがそうです。

ところが「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」では、そんなアイリスにピーチやプラムの陽気な甘さが加わっています。

つまりアイリスの気品はそのままに、フルーティなアクセントが加わることで香りに「人懐っこさ」が現れるようになったのです。

この香りを嫌う人はなかなかいないと思います。

情に厚く、懐の深い人物像もイメージできます。

しかし「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」全体の印象が“引き締まった”ように感じるのは、アイリスの気品が「プライベートな空間に入ることを許さない」といったような、ちょっとした距離感を醸し出しているためでしょう。

ここに『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』らしい、崇高なるサヴォワール・フェール(職人技)を感じます。

ラストノートは消え入る夕陽のように、バニラとムスクの香りが緩やかに広がっていきます。

ここでの香りは本当に人肌のよう。

午睡している時に、ふっと誰かの腕に包まれているようなやさしい感覚です。

香りの持続時間としてはかなり長めで、約12時間は続いていきます。

香りの立ち込め方が複雑なので「難しい」と感じるかもしれませんが、五感を刺激するという意味では素晴らしい香水です。

ダークな要素もありません。

「天国は待ってくれる」との文字通り、天国のように幸せで親密な空間を演出してくれるフレグランスです。

何気ない一日に特別感を。みなに似合うリュクス香水

「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」は、年齢・性別・シーンを問わない、万能タイプのリュクス香水だと言えるでしょう。

『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』の中では、いちばん着けやすい香りかもしれません。

そのためTPOは問いませんが、特にリラックスした気持ちの日に肌に添えたくなるのは、多くの人に共通することだと思います。

一度まとってしまえば、自分も相手もその香りにうっとりと。

『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』の中で最も着けやすいというのはつまり、言い換えれば最も「人たらし」な香水だということです。

もちろん、寝香水としてもピッタリ。

ベッドやソファ、寝具との相性も抜群です。

何気ない一日を特別なものにしたい時に、ぜひまとってみて下さいね。

まとめ

『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』の新作「ヘブン キャン ウェイト(HEVEN CAN WAIT)」は、どなたにでもまとっていただけるような、やさしく気品あるフレグランスです。

もちろん『フレデリック マル(FREDERIC MALLE)』のファーストフレグランスとしても大変おすすめです。

世界最高峰の調香師が贈る「天国の香り」で、嗅覚の扉を開いていきましょう。