2019年に初のフラッグシップショップがオープンした、フレグランスメゾンの『ドルセー(D’orsay)』。
パリ7区にショップを構える『ドルセー(D’orsay)』は、実は200年近い歴史をもつ由緒あるブランドです。
スタートは19世紀、ナポレオン時代のことでした。
創業者アルフレッド・ドルセーは、ナポレオンに仕えた将軍の息子であり、芸術的才能に恵まれていたといいます。
そのドルセーが、後に恋人と同じ香りを身にまとうために作った香水が『ドルセー(D’orsay)』の起源です。
こうして2世紀にわたる歴史をもつ『ドルセー(D’orsay)』ですが、素晴らしいクリエイションにもかかわらず、その存在は長いあいだ、ファッションブランドやニッチフレグランスメゾンの台頭によって埋もれたままの状態となっていました。
しかし、2015年にパリジェンヌでジュエリーデザイナーのアメリー・フイン氏が『ドルセー(D’orsay)』に新しい命を吹き込みます。
新CEOの彼女が掲げたのは、ブランドのアイデンティティを保ちながら、香りを現代風にアレンジして進化させることでした。
かくして生まれ変わった『ドルセー(D’orsay)』は香りを愛する人々に支えられ、瞬く間に人気ブランドとなっていきます。
2020年にはパリの一号店に続き、東京・南青山に二号店もオープンしました。
今回ご紹介するのはそんな『ドルセー(D’orsay)』から、“性別を問わずにまとえる香り”としてローンチされた「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」です。
粋なネーミング、そして“大人の魅力を演出できる”と評判の「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」。
香りの辿った歴史も含めて、詳しくご紹介していきたいと思います。
二面性を楽しめる、ふたりの“ダンディ”
『ドルセー(D’orsay)』の各フレグランスには、それぞれにイニシャルが付与されています。
これは、創始者であるアルフレッド・ドルセーの「秘密の恋」から生まれました。
アルフレッドは当時、既婚女性と恋に落ち、彼女との手紙のやり取りに「秘密のイニシャル」を使っていたそうです。
2015年のリローンチ時にはこれがインスピレーション源となり、副題としてそれぞれのフレグランスに表記されることになりました。
「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」の場合は、G.A.です。
G.A.というのは、創始者アルフレッド・ドルセーのオリジナルネーム、グリモー・アルフレッドを意味します。
アルフレッドがブルジョワ出身だということは先述した通りなのですが、彼はそれ以外にも才能と容姿に恵まれた上、女性からも大変人気があったそうです。
「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」は、そんな創始者アルフレッドの「恋物語」を連想させるフレグランス。
最初に登場したのは、約一世紀前の1925年です。
当時は「女性がつけるダンディな香水」というコンセプトでした。
それを1999年に調香師のドミニク・プレサスが再解釈して、ラムやウイスキー、パイナップルを使った男性向けのフレグランスへと変化させます。
さらに2022年には、新たに気鋭の調香師、シドニー・ランセッサーが配合比率を変え、「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」を新時代のジェンダーレス香水として生まれ変わらせました。
メインのアコードは、シトラスとレザーです。
つまり「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」は、フレッシュで刺激的な香りと、エレガントで落ち着いたムードの「二面性」が楽しめる香りなのです。
シトラスとレザーの自由で気ままな影に潜む、一抹のダークネス
ダンディ オア ノット(Dandy or not)オードパルファム
トップノート:グアテマラ産カルダモン、グレープフルーツ
ミドルノート:ブラックティ、オレンジブロッサム
ラストノート:ヴァージニアシダー、インドネシアンパチュリ、レザーアコード
発表年:2022年
調香師:シドニー・ランセッサー
対象性別:ユニセックス
「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」を肌にのせてまず感じるのは、意外性にあふれたフレッシュ・シトラスノートです。
香りの正体は、グアテマラ産カルダモンとグレープフルーツ。
「ダンディ」という言葉の意味を根本から覆すような、軽やかなスタートです。
これには驚く人も少なくないでしょう。
ヨーロッパのメンズフレグランスによくある、あの「ダンディ」っぽさがないのですから。
この意外性はもう少し続きます。
紅茶とオレンジブロッサムの香りが後に漂うと、雰囲気は一気に「都会的」なものへとチェンジ。
香りはもちろん、軽いままです。
渋さも、骨太さも、複雑さもありません。
あるのは「一分の隙もない身だしなみ」をした人物を思わせる、きりりとしたイメージです。
知的なブラックティー&シダーのノートが、肌の上で心地良く香っていきます。
さて、ここまでの香りは完全に“ノージェンダー”です。
それはまるで、女性か男性かを問うのではなく、「この香りの自由さ」に賛同するかどうか? を問われているよう。
「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」というネーミングの意味を、ここで改めて考えさせられます。
そんなミドルノートでは、ラストで香るレザーノートが前倒しで現れます。
リュクスな雰囲気を内包したその香りには、由緒正しい『ドルセー(D’orsay)』の気概を感じずにはいられません。
しかし、エレガントなレザーノートに落ち着きを覚える一方で、ふと「ダークネス」な一面があることに気づきます。
普段は自分の内にある狂気を飼い慣らしているのに、一度外に出ると手がつけられない、
1990年代のジョニー・デップのようなイメージです。
「毒のような香り」とも言えるでしょうか。
ところがそれが何とも魅力的なのが、「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」の良いところ。
ここまでくると、「ダンディ」は「ダンディ」の意味を成していません。
ダンディと聞いて思い浮かぶ「耽美主義」や「伊達男」のイメージはゼロです。
男性のロマンティシズムを雄弁に語るような雰囲気も、まったくありません。
「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」にあるのは、メトロセクシャルな男女のオーラと、プラスの意味でのナルシズム。
自由でフットワーク軽く、ジェンダーの垣根もなく。
と、このように「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」は、快適さと複雑さをちょうど良い割合で楽しめる、「ジェンダーレス香水の鏡」のようなフレグランスです。
日本の気候にもおすすめ、嫌味のないユニセックス・フレグランス
「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」は、ジェンダーレス香水の先駆けである『ドルセー(D’orsay)』が提唱する、正真正銘のユニセックス・フレグランスです。
フレッシュなシトラス、レザー、そしてウッドの組み合わせがとても快適なため、湿度の高い日本でも問題なくまとっていただけます。
ただ『ドルセー(D’orsay)』の中ではいちばん香り立ちが強く持続力が高いので、オフィスには残念ながら向きません。
一方で、カップル香水としては抜群の威力を発揮します。
もともと『ドルセー(D’orsay)』は、「恋人と同じ香りを身にまとうために作られた」フレグランスメゾンです。
そのためプライベートな空間でまとう方が、香りの哲学とも合っているのかもしれませんね。
いずれにしろ香水ラバーのみなさんにも満足いただける、アーティスティックで奥深いフレグランスが今回の「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」です。
まとめ
人気急上昇中のフレグランスメゾン『ドルセー(D’orsay)』から、人気香水「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」をご紹介しました。
この香りは一般的な市場にある香水のように強くは香りませんので、繊細で肌になじむ「スキンパフューム」としてもお使いいただけます。
1925年の誕生から100年もの時を超えて、現代に蘇った香り「ダンディ オア ノット(Dandy or not)」を、ぜひ手に取ってみてくださいね。