『Calvin Klein(カルバン・クライン)』は1968年の設立以来、シンプルで機能的、それでいて洗練された都会的なテイストを貫くニューヨークブランドです。

アンダーウェアラインなどは生活感を感じさせないほどスタイリッシュで、私たちのライフスタイルをより垢ぬけたものにしてくれました。

1972年には同ブランドの香水部門が始動。

当時ののニーズにマッチしたユニセックスでシンプルな香りはまたたく間にヒットし、「CK ONE(シーケーワン)」など時代を超えて愛される名作を生み出しています。

『Calvin Klein(カルバン・クライン)』フレグランスのツートップに、この「CK ONE(シーケーワン)」ともう一つ「ETERNITY(エタニティ)」があります。

世界トップパフューマーの一人、ソフィア・グロスマンによって作られた「ETERNITY(エタニティ)」は、80年代を代表する香水として特に有名です。

発売からわずか一年後の1989年にはフレグランス・オブ・ザ・イヤーに輝き、2003年には殿堂入りするなど大快挙を成し遂げました。

長きにわたって愛されている「ETERNITY(エタニティ)」。

今回はこのフェミニンな香りの秘密を探ってみたいと思います。

フローラルノートの傑作

ETERNITY(エタニティ)オードパルファム

トップノート:フリージア、マンダリン、セージ

ミドルノート:スズラン、ホワイトリリー、マリーゴールド、スイセン

ラストノート:パチョリ、アンバー、サンダルウッド

発表年:1988年

調香師:ソフィア・グロスマン

対象性別:女性

「ETERNITY(エタニティ)」は、フローラルノートの傑作、と呼ばれています。

「永遠」という名のこの香り、程よく甘くまといやすいことで大変有名です。

フローラルノートは古来から多く調香されてきた香りなので、各ブランドの“腕の見せ所”と言いますか、よくある香りだけにバランスが非常に大事。

調合によってはもったりとした甘さが出てしまい、花がもともと持っている風雅な香りが消えてしまうことも。

なぜ「ETERNITY(エタニティ)」が程よい甘さを持っているかというと、トップノートのフリージアにあります。

フリージア(浅黄水仙)の香りの魅力といえば、何といってもそのフレッシュさとツヤ感です。

「ETERNITY(エタニティ)」はつけたての時、そのフリージアの快活なグリーン感が鮮やかに広がります。

そして中盤にスズランが加わることで、清潔感あふれるグリーン・フローラル風味となり、甘味を抑えた華やかさが重なるのです。

ミドルノートのブーケ感もまた素晴らしい。

花の香りだけでまとめたようなその香りは、徹底的に華やかで軽やか。

グリーン・フローラルが次第にセンシュアル感を帯び、そして後にゴージャスなホワイトリリー(白百合)に包まれます。

本当に上品な透明感を味わえるでしょう。

ラストノートでは、ムスクの石けんぽさが広がり、アンバーがちょっぴり身体を温めてくれます。

そして、パチョリのキリッとしたハーバル感が最後に活気を添えます。

このパチョリが全体に「知的さ」をプラスしていて、「ETERNITY(エタニティ)」の印象をグッと引き締めているのです。

永遠という名にふさわしい香り

出典:『Calvin Klein(カルバン・クライン)』公式インスタグラムより

さて、この香りのイメージは「透明」です。

漢字一文字で例えるなら「麗」。

「ETERNITY(エタニティ)」はよく女性らしい香りと評されるのですが、それは日本の女性らしさともヨーロッパの女性らしさともちょっと違います。

やはりこの香りは、アメリカらしいフェミニティが含まれていると思えてなりません。

「母性信仰」といった保守社会から解放されたアメリカ女性は、世界で一番リベラルです。

また、「その人らしくある」ことにこだわり、セルフ・コントロールの術に長けています。

「ETERNITY(エタニティ)」が似合う女性をイメージした時、世界的モデルのミランダ・カー氏を思い浮かべるのですが、この香りは彼女のようにセルフ・コントロールを得意とするストイックな女性に似合います。

「ジェンダー」という言わばセンシブルなテーマを肩ひじ張らずに捉えていて、ナチュラルな振る舞いがとても魅力的。

才気あふれ麗しく、何事にも動じません。

実は内面では不撓不屈の精神を持ち、大変な努力家でもあります。

それでいて「女」であることを心から楽しんでいる、そんな女性像を彷彿とさせるのです。

出典:『Calvin Klein(カルバン・クライン)』公式インスタグラムより

多くの女性にとってそれは「憧れ」であり、「目標」です。

そういう方には決まって裏表のない「透明性」があるものです。

「ETERNITY(エタニティ)」を調香したソフィア・グロスマン(この方も女性)自身がそのような女性だったのかもしれません。

このソフィア・グロスマンというアメリカの女性調香師は大変珍しい経歴の持ち主なのですが、アメリカに“嗅覚”の革命をもたらした偉人でもあります。

好かれる力のある香水

ソフィア・グロスマンは1945年に旧ソ連で生まれ、アメリカに移住した後、世界的な調香師に昇りつめます。

ナチスドイツ時代にソフィアの父が救ったというユダヤ家族の招きで米国に移住したという、異色の経歴の持ち主。

戦後アメリカの激動期をくぐり抜けてきました。

彼女の感性が鋭かったのはこういった経験があったからでしょう。

柔軟剤で有名な「ダウニー」の香りを創り出したのもソフィア・グロスマンであり、他の代表作には『Yves Saint Laurant(イブ・サン・ローラン)』の「PARIS(パリ)」、『LANCOME(ランコム)』の「トレゾア」があります。

出典:『Calvin Klein(カルバン・クライン)』公式インスタグラムより

『Calvin Klein(カルバン・クライン)』が「ETERNITY(エタニティ)」を作るにあたって提案したテーマは「愛、家族、平和」。

この香りからはその全てがしっかりと感じられるのです。

トップノートからミドルノートにかけての清潔感、ラストノートの安らぎ感はテーマにぴったりと当てはまっていますし、母となる女性が持つような神々しさもあります。

“派手やかなバブル期”に登場した香水とは思えないほど、素直で優しい香り。

30年以上も前に作られた香水ですが、しっかりと現代の女性像をもキャッチしている、「永遠」という名にふさわしいフレグランスと言えます。

また、性別年代問わず受け入れられる香りで、本物の“好かれる力”を持った香水です。

アウトドア派というよりは都会派、パンツルックよりはワンピースのスタイルに良く似合うでしょう。

オードパルファムなので持続性があり、濃度も高め。下半身に1~2プッシュ程度で品よく香ります。

まとめ

永遠を象徴する『Calvin Klein(カルバン・クライン)』の傑作フレグランス「ETERNITY(エタニティ)」。

ホワイトリリーやスズラン、フリージアなどで彩られた美しい花々の香りは、幸せそうな女性の表情を連想させるものです。

リピート率が圧倒的に高いのも、注目すべきポイントです。

石けんのような温かみがあり、上品な透明感や麗しさも感じられる「女性のための香り」は、これからもずっと愛され続けることでしょう。