出典:『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』公式HPより
日本で知られていない香水のなかには、アッと驚くほど素晴らしい香りが存在するものです。
その一つが今回ご紹介する『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』の「Sinner(シナー)」。
アメリカで大人気の『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』は、タトゥーアーティストとして活躍するKatherine Von Drachenberg(キャサリン・ヴォン・ドラシェンベルグ)独自の世界観があふれた、ゴシック&ロックなデザインが特徴のコスメブランドです。
そんな『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』は、2017年に「Sinner(シナー)」(罪人)というセンセーショナルなオードパルファムをリリースしました。
重厚感のあるゴシック調なボトルデザインに、大変興味深いネーミング。
これだけでも購買意欲を掻き立てる、実に魅力的な香水です。
「Sinner(シナー)」(罪人)と名付けられたその香りとは?
『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』のブランド哲学もご紹介しながら、その魅力に迫っていきたいと思います。
タトゥーアーティストがクリエイトした異色のコスメブランド『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』
出典:『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』公式インスタグラムより
まず、興味が惹かれるのが『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』は現役のタトゥーアーティストが設立したコスメブランドという事実です。
タトゥーアーティストの他にもモデル、テレビパーソナリティとしてもマルチな才能を見せるディレクターのKatherine Von Drachenberg(キャサリン・ヴォン・ドラシェンベルグ)。
このブランドは他の追随を許さないユニークで独特な世界観を持った製品で一躍有名になりました。
キャサリン自身が製品開発からカラーのネーミング、パッケージデザインまで担当したというアイテムたちは、自身が今までクリエイトしたタトゥーにインスピレーションを受けたもの。
そのブラックを基調としたデザインのコスメは世界中のコアなファンから熱狂的に支持されています。
出典:『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』公式インスタグラムより
特筆すべきは、『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』が100%ヴィーガンなブランドてあるということです。
自身も熱心なヴィーガンであることを公表しているキャサリン。
『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』は動物由来の原材料を一切使用せず、原材料のテスト段階で動物実験を一切行わない100%ヴィーガンを実践しているブランドなのです。
他に類を見ないほどの個性的なブランドでありながら、環境問題にもしっかりと向き合っている『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』。
そんなクリーンなブランドが生み出した「Sinner(シナー)」(罪人)は一体どんな香りがするのでしょうか?
人間の性とも言える、背徳感のある香りにご注目。
罪深きフローラル・グルマンノート
出典:『SEPHORA(セフォラ)』公式HPより
Sinner(シナー)オードパルファム
トップノート:マンダリン、カラメル、ミラベル
ミドルノート:ジャスミン、ティアレ・フラワー、バニラ、ホワイトフローラル、シナモン
ラストノート:ベチバー、パチョリ、ウッド
発表年:2017年
対象性別:女性
『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』は「Sinner(シナー)」と対になるもう一つのフレグランスをリリースしています。
全く同じボトルで、ホワイトカラーが眩しい「Saint(セイント)」(聖人)です。
そしてその対極にある香りがブラックカラーの「Sinner(シナー)」(罪人)なのです。
宗教的な意味合いの「対比性」が私たちの知的好奇心をくすぐります。
どちらのフレグランスにも同じフローラルノートを共有していますが、「Sinner(シナー)」にはもっとスパイシーなひねりが加えられています。
まずトップノート。
マンダリンとミラベルがアロマティックさを演出しつつ、カラメルのパンチが効いています。最初から甘く、何やら官能的な気配が見え隠れするトップノート。
他の香水にはあまりない、強烈な幕開けです。
まるで堕天使に「こっちへおいで」と誘われているような。駄目だと分かっていても身体は反応してしまう。理性というブレーキをのっけから取り除かれてしまいます。
あまりにも印象的なトップノートから、3分ほどするとこの自堕落的な甘みはまろやかなスイート・フローラルの香調に変わっていきます。
出典:『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』公式HPより
バニラの華やかさに、ティアレ・フラワーのトロピカル感。
そして蜜のようなジャスミンの芳香はさながら極楽浄土を思わせるような心地よいフローラルノートなのですが、ここで加えられたシナモンがまさに「罪」。
その夢のようなお花畑感にピリついたスパイシーさが存在することによって、ダークな気配がもうもうと香りに立ち込めているのです。
ですがここでは、白の「Saint(セイント)」が天使、黒の「Sinner(シナー)」が悪魔、というような端的なキャラクター付けをしていないと思います。
どちらの香りも中心にあるのはホワイトフローラル。
どちらかというと、人間という一つの生き物のなかに潜む「聖と罪の2つの側面」を表しているのでしょう。
「Sinner(シナー)」はそのダークな「罪の側面」を、甘さとスパイシーさで絶妙に表現しており、そこには嗅覚さえ虜にしてしまいそうなパワーがあります。
ラストノートではすっかりカラメルの甘さは消え、ベチバー、パチョリのドライなウッディ感だけが残ります。
持続時間はとても長く、次の朝もかすかに手首から香るほど。
あのトップからミドルにかけての背徳美のような香りは何だったのか?
と激しい余韻を残すラストノートです。「罪」な自分が残した爪痕、足跡を遠くから眺めて安堵している。そんなちょっとしたノスタルジックな一面やスモーキー感も魅力です。
まとうなら気温が低い日に!
出典:『Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)』公式インスタグラムより
「Sinner(シナー)」は万人受けするフレグランスではありません。
春夏やビジネスシーンには向かない香りではありますが、秋冬の乾いた空気の中では、このグルマンな甘さはものすごく綺麗に香らせることができるでしょう。
着ける場所は下半身がおすすめです。ウエスト、太ももの内側、ひざ裏あたりからじんわりと香りを上へ向かわせていくようなイメージです。
手首や耳の後ろには着けない方がベターです。
甘さやパンチが強いので、「Sinner(シナー)」の「人の心の罪な部分」というゴシックっぽい素敵な感性が、単なる「悪魔」となってしまうかもしれません!
年齢や服装は問いませんが、「ひと捻りあるグルマン香水」をお探しの方、「個性を重んじる方」にはストライクに胸に刺さるような、インパクトのある1本です。
まとめ
誰もが心に2つの側面を持っていると思います。
清らかで優しい心、ダークで濁った心。その両方のバランスを取りながら私たちは生きています。
ディレクターのキャサリンは、ヴィーガンという神聖さを求めつつも人の身体にタトゥーを彫り続ける自身の「ギャップ」に思うところがあるのかもしれませんね。
「Sinner(シナー)」の甘く危険な香りは、中毒になってしまいそうなほど魅惑的。
時にはその「罪」な部分がスパイスとなって、自分の「聖」の部分をより輝かせてくれることでしょう。
香水上級者さんに是非とも楽しんでいただきたい、独創的で前衛的なオードパルファムです。