フランスが誇るトップメゾン『CHANEL(シャネル)』は、世界中の女性の心をいつまでも掴んで離さない偉大な存在です。
創業は1910年と歴史あるメゾンですが、100年以上もこうしてトップを走り続けるブランドもなかなかないのではないでしょうか。
もともとは孤児院育ちで歌手を目指していたというココ・シャネル。
孤児院での退屈しのぎに制作した帽子のデザインが認められ、帽子のアトリエを開業したのが始まりです。
1915年にはパリのカンボン通りに「メゾン・ド・クチュール」をオープンし、コレクションでも大成功を収め、シャネルは成長を続けました。
また、ファッションだけではなくフレグランスやコスメの分野でも世界的なベストセラーを多く輩出しています。
「香水をつけない女性に未来はない」、この鮮烈なキャッチフレーズとともにココ・シャネルが送り出した香水「5番」は、今や「世界一の名香」として殿堂入りも果たしました。
さて、「5番」の他にも『CHANEL(シャネル)』にはファンを多く持つフレグランスが存在します。
それが、今回ご紹介する「19番」です。
『CHANEL(シャネル)』の香水の誕生秘話は、いつ聞いても大変興味深いもの。
日本でも愛用する人が多く、アットコスメでは口コミ評価が満点という「19番」の全てを、ここでご紹介したいと思います。
どうやって生まれた?名香「19番」

「19番」が発売されたのは、1970年のクリスマスの日です。
ココ・シャネルの誕生日が8月19日だったことから「19番」と命名されました。
「5番」がココ・シャネルが初めて創り出した伝説の香水だとしたら、「19番」は彼女の最後の作品で傑作と言われています。
ココ・シャネルは「5番」同様、比類ない個性を表現する香りを新たに作ろうと考え、2代目専属調香師アンリ・ロベールに自身のプライベートフレグランスを作るよう依頼しました。
しかし、彼女は発売から数か月後に亡くなってしまいます。
ココ・シャネルの自らの意思を感じさせる、大胆で凛としたこの香りは、彼女遺作にして傑作となり、発売から50年経った今も、多くの女性に愛され続けています。
「5番」と「19番」のあいだには、実に50年もの開きがあります。
実は、ブランド内で新作の案が多数出ていたものの、「5番」の記録的ヒットにより、そのイメージを損なわないか、『CHANEL(シャネル)』に悪影響を及ぼさないか、かなり慎重に議論されていたそうです。
ところが、1960年代のアメリカにおいて、ココ・シャネルの自伝的なミュージカルを女優キャサリーン・ヘップバーンが演じ大成功を収めました。
こうして再びシャネル人気に火が付き、『CHANEL(シャネル)』は「19番」の発売にGOサインを出したのです。
深く濃厚な香りなのにデリケート。『CHANEL(シャネル)』が打ち出すグリーンノート

19番オードパルファム
トップノート:グラース産ネロリ、ガルバナム、ヒヤシンス、ベルガモット
ミドルノート:グラース産アイリス、ローズドゥメ、水仙、イランイラン、ジャスミン、スズラン
ラストノート:ムスク、オークモス、シダー、ベチバー、レザー、サンダルウッド、ガイアックウッド
発表年:1970年
調香師:アンリ・ロベール
対象性別:女性
「19番」を生み出した調香師のアンリ・ロベール氏は、かなりの職人気質だったといいます。彼は調香学校で勉強したわけではありません。しかし、嗅覚は超一流。
想像を絶するほど天然香料の目利きが効く人だったそうです。
こうして、厳選された天然香料から作られたのが「19番」だったのです。
まず、トップノートは少し特徴があります。
ネロリとガルバナムの、鋭くも激しいグリーンノートにベルガモットが交錯するようにしてこの香りは始まります。
厳選された天然香料を使用していますから、このトップノートを「えぐい」と感じる人も少なくないかもしれません。
しかし、トップノートからミドルノートの移り変わりを肌の上で楽しむ、それこそが「19番」の醍醐味と言えるでしょう。
ミドルノートのアイリス、5月のバラ、ジャスミン、イランイラン…
そういった、『CHANEL(シャネル)』フレグランスの「肝」といえる素晴らしい香りたちが、先のグリーンノートを包み込んでいくのです。
青くて若いつぼみが、段々と成長しゴージャスな花となる姿(女性に例えられます)を、側で見守るような気持ちにもさせてくれますし、自身と重なる部分もあるでしょう。

美しいライトグリーンカラーの「19番」、香りはその色のままのイメージです。
それは、凛としたクールな強い女性を思わせる、まさにココ・シャネルが追い求めていた女性像そのもの。
何ものにも媚びずに、自由意思で伸び伸びと生きる枝葉や樹木。
太陽に当たって輝く植物の香りと、大地の恵みを受けて成長する植物の香り、そのどちらも感じ取れるグリーンノートなのです。
ということで、「5番」が「女性らしさ」を表現した世界一有名な香水なのに対し、「19番」は「自由で意思の強い女性」を表現しています。
実際、ココ・シャネルは晩年にこの香りをまとってパリの街を歩いたところ、「何の香水をつけているのですか?」と複数の男性に声をかけられたそうですよ。
砕けて言ってしまうと、『CHANEL(シャネル)』の香水は万人に受け入れられるような無難な香りではありません。
ゆえに、個性や主張が強い香りであり、他ブランドの香水とも一線を画しています。
しかし格の高さはやはり『CHANEL(シャネル)』が頭一つ抜きんでていると言って良いでしょう。
いつもと違う自分になれる、そしてなりたい女性像に近づく、そういった意味では「19番」は「5番」と並び、香水界のお手本となる香りです。
30代以降の女性へ。品格と清潔感のある香り

「19番」は、大人の女性が清潔感と品を醸し出したい時、かなり強力な味方になってくれます。そして手首といった拡散性の高い部位に着けてもすぐに穏やかな花の香りになりますから、安心です。
強すぎる香りではありませんが、やはり『CHANEL(シャネル)』らしい品格は漂います。
例えて言うなら、「母の若い頃の香り」。
決して古臭いという意味ではなく、クラシックで落ち着く、安心感のある香り。
ただ、オフィスに勤める方にとっては「19番」の出番は少ないかもしれません。
大人の女性がリラックスした時、バカンスに出かける時、プライベートで美術館などの文化的な場所におもむく時などにすごくマッチするかと思います。
シャキッとしたトップのグリーンノートは、真冬には冷たく感じることもあるかと思います。しかし、温かみのあるお花の香りが体温と混じることで、徐々に華やかになっていきますので、比較的一年を通して使えるフレグランスといえるでしょう。
そして『CHANEL(シャネル)』らしい、ツイードのジャケットやローパンプスに非常に良く似合います。
『CHANEL(シャネル)』香水に共通することですが、いずれにしてもカジュアル過ぎないスタイルがぴったりとはまることでしょう。
まとめ
『CHANEL(シャネル)』のフレグランスは、女性を一段も二段も“格上げ”してくれる魔法のような香りだと思います。
すでに「19番」のフレグランスを身に着けている方も、検討されている方も。
『CHANEL(シャネル)』ならではの素晴らしいグリーンノートで素敵に輝いてくださいね。
