『Dior(ディオール)』には、「メンズフレグランス」の至宝と呼ばれる素晴らしい香りが存在します。

その名も「Fahrenheit(ファーレンハイト)」、これは温度を示す華氏を意味します。

1988年当時、パルファン・クリスチャン・ディオールの社長は、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を聴いた後にひらめきました。

ロボットに振りかけると「人間の心が生まれる」ような香りを創造したいと。

それが、「Fahrenheit(ファーレンハイト)」の誕生秘話です。

華氏を意味する「Fahrenheit(ファーレンハイト)」は、「温度の変化」が生み出す男性の魅力を演出するウッディー・フローラル・ムスクの香りとして、1988年に発売されました。

この香りを調香したミシェル・アルメラックは、数々の人気フレグランスを手がけてきた世界的に有名な調香師です。他の代表作に「クロエ」などがあり、パリのマレ地区に自身の冠ブランド「パルル・モワ・ドゥ・パルファム」のショップを構えています。

さて、「Fahrenheit(ファーレンハイト)」の香りは、とてもモダンでウッディー。

温度の変化を男性の「成長」に見立てた、非常に興味深くてカッコいい香りです。

今回は、この香りの秘密に迫ってみたいと思います。

男性の成長の歴史を香りに詰め込んだ「Fahrenheit(ファーレンハイト)」

Fahrenheit(ファーレンハイト)オードパルファム

トップノート:ラベンダー、シシリアンマンダリン、サンザシ、ナツメグフラワー、シダー、ベルガモット、カモミール、レモン

ミドルノート:ナツメグ、スイカズラ、カーネーション、サンダルウッド、バイオレットリーフ、ジャスミン、スズラン、シダー

ラストノート:レザー、トンカビーン、アンバー、パチョリ、ムスク、ベチバー

発表年:1988年

調香師:ミシェル・アルメラック

対象性別:男性

まず、「Fahrenheit(ファーレンハイト)」はトップノートからラストノートまでの変化が華麗で、とても完成度の高い香水といえます。

トップノートはマンダリンオレンジのジューシーな甘さに、ベルガモットがフルーティーな苦みと酸味を、レモンがすっきりとした明るさを表現しています。

ハーバル感の混じった明るい柑橘系の香りが、少し青いような、ちょっとくすぐったいような。そんなキラキラとした青少年を思わせる、淡麗な仕上がりです。

そしてミドルノートは、ビタースウィートで華やかなバイオレットリーフの香りへと高まり、「男性が自信をつけていく過程」を表現しているかのように、華やかで凛々しいものとなっています。

また、多くの人が評価しているように、「Fahrenheit(ファーレンハイト)」のラストノートで香るレザーには素晴らしいものがあります。

ここではレザーのスモーキーで力強いアニマル感があふれ出し、ベチバーが大地の香りのウッディ感を演出。

加えてムスクが甘さを、アンバーが温かみを、トンカビーンが繊細な芳ばしさを絡め、全体に深みを出しているのです。

ゆっくりと、スモーキーで甘いレザーノートに落ち着いていく様は、40代以降のダンディな男性が「他者を知り、己を制す」といったような深みを醸し出しています。

どうしようもなく官能的で、独特の心地よいマスキュリン感。

加えて『Dior(ディオール)』にしか出せないような「柔らかさ」、「人当たりの良さ」もありますから、男性にとってこれほど心強い香りはないことでしょう。

国内・海外問わず口コミ評価が高いこと、販売から30年以上たった今でもベストセラー香水であることも納得のいく結果です。

30代後半以降の真の男性へ。闘う男の相棒フレグランス

「Fahrenheit(ファーレンハイト)」は、今主流のライトでユニセックスな香水とは一線を画す、重めで個性の強い、男性的な香りです。

しかし、この香水は実際に肌に付けてみると、意外なくらい繊細に自身の香りと混ざり合って、何とも優美でセクシーな、確固たるマスキュリン感へと落ち着いてくれます。

「できる男」をアピールできる、誠実さと品格を備えており、女性ウケも抜群。

ボーイには決してまとえない、「本物の大人の男性」の香りなのです。

また、1本で素晴らしい香りの変化を味わえますから、朝着けたての頃は爽やかで明るく、昼下がりは華やかに、仕事が終わる頃にはセクシーで温かいキャラクターと、さまざまな表情を見せてくれるのも魅力の一つです。

ビジネスやフォーマルなシーンにもとてもよく合いますが、シンプルな私服にサラリとこの香りをまとわれたら、多くの異性が振り向いてしまうでしょう。

そして『Dior(ディオール)』らしい、そこはかとないエレガンスさをまとえるのも素敵。

アグレッシブで、仕事モードを高めてくれる、そんな香りをお探しの方にも最適です。

ただ、年齢層は30代後半以降の大人の男性限定といったところでしょうか。

自分のパワーと限度を知っていて、引くところは引き、押すところは押す。そんな、他者の痛みを分かち合える、精神年齢の高めの方にお似合いになることでしょう。

まとめ

「Fahrenheit(ファーレンハイト)」は、男性の成熟への歴史を語るような香りの変化をしていきます。

初々しい青さから、甘さを経て、官能的な成熟した大人の男性の香りへの変化です。

その香り立ちの変化が、多くの女性の心を捕らえて離さない「メンズフレグランスの至宝」たる地位を「Fahrenheit(ファーレンハイト)」に与えているのです。

古き良き時代の、映画に出てくるような粋な男性像を思わせる「Fahrenheit(ファーレンハイト)」の香り。

何者をも恐れず、屈せず。正々堂々と立ち向かうとき、心を鼓舞してくれる力強い相棒となってくれることでしょう。

このようなスパイシーな香水は、闘争心を高め勇気と活力を与えてくれる、「香りの鎧」です。

メンズの香水にも甘い香りや爽快な香り、ビタースウィートなセクシー系から、マッチョでダークな香りまで、その表情はさまざまです。

気分に合わせて、香水を着替えてみましょう。