1870年、イギリスはロンドンで理髪師だったウィリアム・ペンハリガンにより創業された『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』。英国王室御用達のフレグランスブランドです。
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』には「華麗なるイギリス文化」を彷彿とさせる高貴な香りが多く、これまで「エレガンス」を追求した名香を数多く生み出してきました。
品格漂う、その上質な香りに魅了されている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
英国王室御用達のフレグランスブランドとのことですが、『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』の独特な雰囲気はフランスにもイタリアにもないものです。
ラグジュアリーなのはもちろんのこと、店舗に一歩踏み入れると、なんとなく“古き良きイギリスの伝統映画”を観させられているような気分になります。
そしてなにより、香りが超一流です。
今回ご紹介するのは、そんな『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』でも根強い人気を誇る「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」。
黄金の1920年代へのオマージュとして、当時のロンドンを象徴する最もムーディーなお酒、ドライ・ジンに着想を得た、色気のあるメンズ香水です。
女性がぜひとも男性にまとってほしいと感じる、英国紳士の香りをご紹介します。
1920年代を称えるフレグランス、ドライ・ジンの香り
JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)オードトワレ
トップノート:アンジェリカ、シナモン、オレンジ、ジュニパーベリー
ミドルノート:カルダモン、ニオイイリスの根茎、レザー、ペッパー
ラストノート:ベチバー、チェリー、シュガー、アンバー
発表年:2011年
調香師:オリヴィエ・クレスプ
対象性別:メンズ・ユニセックス
「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」は巨匠オリヴィエ・クレスプによって調香されました。
そしてこの香りは、かつてのロンドンが黄金時代と呼ばれていた1920年代の息吹が感じられるフレグランスです。
この頃、イギリスは第一次世界大戦に勝利。パリでは1925年に第1回シュルレアリスム展が開かれるなどヨーロッパの芸術分野も百花繚乱を極めました。
パブロ・ピカソをはじめサルバドール・ダリやココシャネルといった歴史的アーティストが活躍を始めたのもこの頃です。
「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」は、そんな狂乱の1920年代を称えるフレグランスとして、当時ロンドンで大流行していたドライ・ジンとジャズエイジから着想を得た香りとなっています。
ジンといえば、「オランダ人が生み、イギリス人が洗練し、アメリカ人が栄光を与えた」と評される蒸留酒。スッキリとしていて、ハーバルな香りが漂うジンは今もなお世界中で愛されている嗜好品のひとつです。
この香りを担当したのは調香界の巨匠、オリヴィエ・クレスプ。
彼はグルマン・ノートを世界で初めて生み出したフランス人調香師です。
代表作にはドルチエ&ガッバーナの「ライトブルー」、イヴサンローランの「モン・パリ」など名作が名を連ねています。
かつてロシアの香料工場で働いていたというオリヴィエ・クレスプは、「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」にロシア産のジュニパーベリーを登用しました。
トップノートではこのジュニパーベリーが全面に香ります。
このジュニパーベリーこそがドライ・ジンの香りであり、「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」の持ち味でもあります。
トップノートの鋭いジンの香り、ミドルノートの尖ったスパイスの香り。
微笑みながらも決して胸の内は明かさない、という頭脳プレイヤーめいた紳士のイメージです。
草原や森を感じさせる清涼感もあります。
ここからは都会も自然も行き来する、「人生の楽しみ方」を知り尽くした大人の男性像が感じ取れるでしょう。
そして、どことなくロンドンの硬質さも感じます。
中盤までは、人との「程よい距離感」を保ったような、クールな香りが続きます。
出典:『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』公式インスタグラムより
ところがミドルノートの後半からラストノートにかけては香りが一変。
チェリー、シュガー、アンバーといった人肌めいた甘い香りに変わり、最初の刺々しさはいつの間にか消えてしまいます。
徐々にまろやかさを帯びて、女性にとっては非常に好ましい甘い香りとなるでしょう。「リッツ・ロンドン」といったハイエンドなホテルのバスルームで香りそうなイメージです。
「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」は、トップノートからラストノートまでかなり変化のあるオードトワレですが、このギャップにハマる人も多いのではないでしょうか。
男性にこうしたギャップがあると「つい気になってしまう」ように、ちょっと刺激的なエッセンスを含む1本です。砕けていうと、男性版の「ツンデレ」です。
とはいえ、ラストノートの得も言われぬセンシュアルさは、トップノートの刺々しさがあってこそ。
スッキリ&セクシーの王道を行く香りですが、最高級の香料を使用していてとても上品なので、大量生産型の香水とは格が違います。
紳士で上品だけど、狙った獲物は逃さない、というような熱量も感じる男前な香りです。
男性寄りのユニセックスフレグランス
出典:『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』公式インスタグラムより
「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」は、「肌の上で楽しむカクテル」と言えるべき香りです。
30代以降の大人の男性にこそまとってほしいオードトワレであり、逆を言うと年端もゆかぬボーイには到底つけこなせない難易度の高い香りでもあります。
ドライ・ジンのハーバルさと清涼感、そして人肌のような柔らかい甘さがあるので、暑い夏でも鼻腔に引っかかることなくまとえることでしょう。
逆に冬ならば、体温を高めに保っていられる、二の腕の内側や太ももなどにワンプッシュするとよりセクシーに香ると思います。
一年中気持ち良くまとえるオードトワレですが、やはり身なりの清潔感は大切です。
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』のブティックの門をくぐる時はいつも背筋が伸びるものですが、「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」もしかり、着けるたびに姿勢を正したくなるような、由緒正しき香りです。
間違ってもスウェット素材には似合わない香り。
黄金の1920年代、ロンドンの街なかを闊歩するような、ロマンと情熱とほんの少しの冷たさが感じられるフレグランスです。
まとめ
『PENHALIGON’S(ペンハリガン)』はちょっと高価なフレグランスですが、それに納得できるだけの芸術的価値があると思います。
「JUNIPER SLING(ジュニパー・スリング)」のような、上品でカッコいい香りを日常に取り入れることができれば本当に素敵ですね。
お酒ならぬ、身にまとうことで相手を酔わせる、粋な香り。
この素晴らしいジュニパーベリーの香りを通して、ロンドンの夜風が薫ってくるようです。
一年を通して楽しめる香りなので、ぜひとも試してみてくださいね。