フランス・パリの馬具工房から始まり、世界的なトップメゾンとなった『HERMÈS(エルメス)』。

ファッション、バッグ、ホームプロダクツ、ジュエリーに至るまであらゆるアイテムがラグジュアリーの極みとされ、世界の「本物志向」たちを魅了してきました。

そんな『HERMÈS(エルメス)』が2000年代に入ってから大躍進するきっかけとなったフレグランスがあります。

通称「庭シリーズ」と言われる『HERMÈS(エルメス)』の「庭園のフレグランス」です。

「屋根の上の庭」「地中海の庭」「モンスーンの庭」「李氏の庭」「ナイルの庭」と、5つの香りが存在しますが、そのなかでも「ナイルの庭」は日本で一番人気。

エジプト・ナイル川の壮大で美しい自然をテーマにしたこの香りは、男女問わず「品があって心地よい香り」として高い評価を得ています。

そして「ナイルの庭」は絶対に嫌われない香りです。

香水ビギナーも上級者も安心してまとえるフレグランスはなかなか無いのではないでしょうか。

なぜここまで好まれる香りなのか、「ナイルの庭」の香りの構成とコンセプトについて詳しくご紹介します。

妥協しない『HERMÈS(エルメス)』の初代専属調香師が提案した香り

ナイルの庭(Un Jardin Sur Le Nil)

トップノート:人参、グレープフルーツ、トマト、グリーン・マンゴー

ミドルノート:オレンジ、ピオニー、ガマ、ヒヤシンス、蓮(ロータス)

ラストノート:ラブダナム、アイリス、シナモン、ムスク、インセンス

2005年発表

調香師:ジャン=クロード・エレナ

対象性別:ユニセックス

「ナイルの庭」は、『HERMÈS(エルメス)』の庭シリーズ第二弾のフレグランスとして、初代専属調香師のジャン=クロード・エレナによって調香されました。

文字通りエジプトのナイル川にインスパイアされたものです。

ジャン=クロード・エレナは、クルーズ船に乗ってナイル川のふもと、イシス神殿のあるフィラエ島に向かっていました。

その道中に茂るマンゴーを発見し、その魅力的な青々しい香りに思わず足が止まったそうです。

風光明媚なナイル川と、自然の恵みとも言えるフルーツの優しい香り。「この喜びの瞬間を皆で共有したい」と感じたジャン=クロード・エレナは「ナイルの庭」をテーマにしたフレグランスの制作に着手。

ナイル川のフィラエ島の象徴でもあるグリーン・マンゴーをはじめ、エジプトの国花であるロータス(蓮)をメインに、エジプトへのオマージュでもある香りがこうして誕生したのです。

格調高い香りの変化

出典:エルメス公式HPより

「ナイルの庭」は、人参、グレープフルーツ、トマト、グリーン・マンゴーの4つの調和から始まります。

相反するグレープフルーツの酸味とマンゴーの甘味を、人参とトマトの香りで見事に調和。

トップノートからミドルノートにかけての、まるで空間が広がっていくかのようにフワッと花開くロータスは、心が洗われそうなほど清らかです。

実はエジプトにおけるロータスの歴史は古代まで遡ります。

朝日が昇ると開花し、夕方には閉じるという習性や、放射線状の形をしていることから、「太陽神」としてあがめられてきました。

古代エジプト遺跡の壁画にも描かれ、当時より香水(古代の香料・焚き物)として愛されていたようです。

やはり「ナイルの庭」の素晴らしさは、このロータスと中心としたフローラルの存在感。

オレンジとピオニーのクリーンで甘い香りがゆったりと広がり、ロータスが草の葉にも似た爽やかなグリーン感を重ねます。

ちょっとした清涼感があるのは、真っ青な色が美しいヒヤシンスが効いているからです。

本当に清らかな香りで、まるで早朝のナイル川で朝日を臨むような、優雅で荘厳な気持ちにいざなってくれることでしょう。

ラブダナム、シナモン、インセンスという中東エリアのエッセンスをラストノートに加え、ミドルノートの余韻をそっと束ねていくラストは、とても静かで秀逸な幕引きです。

それぞれが控えめに香りつつ、ウォータリーでアロマティック。

「ナイルの庭」が奏でる芳香には、年齢・性別問わず誰もが引き込まれるに違いありません。

日本人にとってパーフェクトなユニセックス香水

「ナイルの庭」は、完璧なユニセックス香水と言って過言ではありません。

オーデトワレなので持続性は長くないのですが、それもまた「ナイルの庭」の個性です。

香水にありがちな、むせかえるような重厚感がないのはさすが『HERMÈS(エルメス)』の実力といったところでしょうか。

着けている自分自身も満たされた気持ちになり、周りの人たちにも多幸感をお裾分けできることのできる香りです。

男性向けと囁かれている「ナイルの庭」ですが、女性も違和感なくまとえます。

高温多湿な日本の夏季に使用しても問題ありません。もちろん夏以外の季節でも気持ちよく香らせることができるでしょう。

女性フレグランスのパウダリーさや、男性フレグランスのウッディ感がないところもポイント。まだユニセックス香水を使ったことがない方も、「思っていたのとは違った…」となりにくいはずです。

オフィス、フォーマルな席、オフの日、バカンスなど、どんなシーンにも適応する万能型フレグランス「ナイルの庭」。

この香りの好感度はずば抜けて高いので、かなりの確率で「どこの香水をつけているの?」と話題になるはずです。

大人の男女におすすめです

2005年の発売当初から絶大な人気を誇る、『HERMÈS(エルメス)』の「ナイルの庭」をご紹介しました。

クラシカルなシトラスグリーン&フローラルの調香に現代的な透明感を与えた逸品。

『HERMÈS(エルメス)』フレグランスのなかでも、ひと際愛されている香りです。

こんなにもさり気なく、ふんわりと肌に馴染んでくれる香りにはめったに出会えないかもしれません。

年齢を重ねて味覚が研ぎ澄まされるように、嗅覚も敏感になります。やはり「心地よい香りをさりげなくまとえる」大人は素敵な印象を持たれますよね。

そんな時、「ナイルの庭」を迷わずおすすめしたいと思います。これ以上なく洗練された、時代も性別も超越した傑作を是非試してみて下さい。