photo:フランス発のコスメセレクトショップ『SEPHORA(セフォラ)』にて取材しました。

フランスといえば、香水の発祥地。

なんとフランス国内では1,6秒に1本の割合で香水が売れているそうです。

「香り文化」が根付いているといっても過言ではないほど、フランス人と香水は切っても切れない関係なのです。

フランス発の香水ブランドだけでなく、著名なパフューマーにはフランス人がとても多いのも事実。

そんな香水愛の強いフランス国内で、2020年上半期に最も売れた香水ランキングが発表されました。

「服を着るのと香水をつけるのは同じ感覚」と語るフランス人が多く手に取った香水とは?

トップメゾンが誇る名香が続々とランクインするなか、見事TOP3に輝いた香水をご紹介したいと思います。

第三位 『CHANEL(シャネル)/COCO MADEMOISELLE EAU DE PARFUM (ココ・マドモワゼル・オードパルファン)』

2001年発表

調香師:ジャック・ポルジュ

対象:女性

トップノート…シチリア産オレンジ、カラブリア産ベルガモット、マンダリン

ミドルノート…ローズ、ジャスミン、ミモザ、イランイラン

ラストノート…パチュリ、ベチバー、バニラ、ホワイトムスク

かつて世界の三大調香師の一人として名を馳せた、ジャック・ポルジュの名作「COCO MADEMOISELLE(ココ・マドモワゼル)」。

シャネルの三代目専属調香師である彼は、シャネル香水の「古めかしい」イメージを覆し、「最も新しいフレグランス」に生まれ変わらせたのです。

2001年に発表された「COCO MADEMOISELLE(ココ・マドモワゼル)」は、瞬く間に話題の香りとなり、翌2002年には香水界のオスカー賞であるFIFI賞でグランプリに輝きました。

この香りを擬人化して表現するならば、「社交的で協調性のある人気者の女性」と言えるでしょう。

「COCO MADEMOISELLE(ココ・マドモワゼル)」の持つ“陽”の雰囲気は、着けている本人だけでなく、周りの人をも魅了します。

さて、気になるのが「マドモワゼル」というネーミングですが、本来ならばフランス語で未婚の若い女性に使用される敬称を意味します。

ところがこの香水の特徴は、若い女性向けというよりは30代、40代以降の女性にこそ似合うエレガントな香りなのです。

シャネルの創業者ガブリエル・シャネルは生涯独身で「マドモワゼル・シャネル」と呼ばれていました。そう、「COCO MADEMOISELLE(ココ・マドモワゼル)」はガブリエル・シャネル本人をイメージした香りなんですね。

嫌われようのない清潔なトップノートから始まり、まるで花びらだけを集めたような芳醇なミドルノート。そしてシャネルらしい、パチュリが効いたラストノートが圧巻です。

このパチュリが全体的に“キュートさ”を排除していて、物腰柔らかながらも一筋の知性を感じさせます。

シャネル特有の複雑な香りのハーモニーを奏でているのに、嗅ぐ人には不思議と難解な印象を与えたりしない。

そして、とてもフェミニンなのに媚びやセクシュアルさが無いところも「COCO MADEMOISELLE(ココ・マドモワゼル)」の大きな魅力です。

年齢を重ねても自分を卑下することなく、誰のこともうっすら愛しているような温情に満ちた女性。そんな真の品性とエレガンスが「COCO MADEMOISELLE(ココ・マドモワゼル)」にあるのです。

一度手に取ったら最後、ずっとリピートしてしまう、という方も多いようです。

そんな吸引力のある香りだからこそ、20年もの長い間愛され続けているのでしょう。

第二位『YVES SAINT LAURENT(イヴ・サン・ローラン)/BLACK OPIUM(ブラック・オピウム)』

2014年発表

調香師:オリヴィエ・クレスプ、ナタリー・ローソン、オノリーヌ・ブラン、マリー・サラマーニュ

対象:女性

トップノート…ペアー(洋梨)、ピンクペッパー、オレンジブロッサム

ミドルノート…コーヒー、ジャスミン、ビターアーモンド、リコリス

ラストノート…パチュリ、シダー、バニラ、カシミアウッド

グルマン系フレグランス(バニラやキャラメルなど、お菓子のような甘い香り)のなかでも、世界的に大ヒットした『YVES SAINT LAURENT(イヴ・サン・ローラン)』の「BLACK OPIUM(ブラック・オピウム)」。

フランスで一番人気のあるグルマン系の香水と断言できます。

またグルマン系フレグランスは、女性の美しい部分を強く引き出し「男性を魅了する香り」とも言われています。

「BLACK OPIUM(ブラック・オピウム)」を訳すと、「黒いアヘン(阿片)」。

ちょっとドキッとするこのネーミングの香りを紐解いてみましょう。

「黒いアヘン(阿片)」からは思いもつかない、洋梨の香る端麗なトップノートに一度面喰います。トップノートにありがちなキリっとした清涼感はありません。どちらかというと秋の夕暮れ時を彷彿とさせ、美しいながらも一瞬で消えてしまう儚さがあります。

ミドルノート以降でガラッと性格が変わるのは、さすがイブ・サン・ローランといったところでしょうか。

コーヒーのアロマティックな深みと、ジャスミンのセンシュアルさが花開きます。

ラストノートでは肌色のように優しく、甘いバニラに身を包まれるでしょう。

「BLACK OPIUM(ブラック・オピウム)」のトップノートからラストノートまでの劇的な香りの変化は、まるで「誰もが経験したことのある、忘れられない一夜」をフラッシュバックさせるものです。

それは、“思わず駆け出したくなる衝動に駆られる香り”なのです。

グルマン系と言っても、ハッピーオーラの漂う可愛らしい甘さは皆無で、濃密で深い、香水でしか味わえないような甘さが特徴的。

都会の夜の喧騒のなか、衝動に突き動かされて自分を満たす「何か」を探しているような、そんなエモーショナルで甘美な香りは、まさに「BLACK OPIUM(ブラック・オピウム)」の名に相応しいと言えます。

もちろん昼より夜、ビジネスシーンよりもプライベートに向いています。空気の乾いた秋冬にこそグルマン系の香りが冴えるでしょう。

東京、パリ、ニューヨーク、上海といった世界の主要都市に住まう、キラキラとした若い女性に良く似合うフレグランスです。

第一位『DIOR(ディオール)/J’ADORE(ジャドール)』

1999年発表

調香師:カリス・ベッカー

対象:女性

トップノート…マグノリア、メロン、ピーチ、セイヨウナシ、マンダリンオレンジ、ベルガモット

ミドルノート…チュベーローズ、イランイラン、プラム、オーキッド、ヴァイオレット、フリージア、ジャスミン、ダマスクローズ、スズラン

ラストノート…バニラ、サンダルウッド、ムスク

「もしゴールドを香りにしたら、どんな香りになるのだろう?」

という思いを香りに詰め込んだのが「J’ADORE(ジャドール)」です。

その後「フルーティー・フローラル香水の傑作」と呼ばれ、2013年度には世界で最も売れた香水となりました。そして発表から21年たった現在のフランスでも一番売れた香水として、その不動の地位を確立しています。

「J’ADORE(ジャドール)」は、フランス語で「大好き」の意味を持ちます。

まるで“永遠の恋人”のような、美しく色褪せない存在。

生花よりも芳しい、このフローラル香水はもはやパーフェクトとしか言いようがありません。

その香りを例えるなら、「バレエシューズのように軽く快適な履き心地でありながら、セクシーなピンヒールの装いを兼ねている」と形容できます。

花は女性に似合うものです。様々な種類の花の粋を尽くした、華やかで柔和な香り立ちを身にまとえば、「女に生まれて良かった」とひそかに笑みがこぼれることでしょう。

全体を通して軽やかな甘さが漂いますが、しつこくありません。

不思議と石鹸のようなパウダリー感がラストノートで漂うので、誰もがどこかで知っているかのような、安心感をも与えてくれます。

香りの構成がパーフェクトなだけではなく、使い勝手が良いのも魅力の一つ。

春夏秋冬、季節を問わず、幅広い年代の女性に似合います。「J’ADORE(ジャドール)」にはオードトワレやヘアミストもあるので、TPOに合わせた香りを楽しめます。

“万人受け”や“好感度アップ”といった浅はかな言葉は当てはまりません。

それぞれが主役級の花の香りを見事に調和し、ゴージャスさをあえて控えめにしているのです。

金塊のようなギラギラとしたゴールドではなく、大洋に昇る朝日の煌めきのようなゴールドを香りで表現したのでしょう。

そこに居合わせた人の心をギュッと掴んでしまう、穏やかながらも麗しい香水です。

決して敷居は高くなく、人懐こい存在なのに、しっかりと“女度”を上げてくれる「J’ADORE(ジャドール)」は、頼もしい相棒となりそうですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

世界的に有名なファッションブランドのアイコン的フレグランスがやはり人気を博していました。

多くの女性に愛される香水は、時代を超えて語り継がれるものですね。

この香水情報が「香り選び」の参考になれば幸いです。