『BVLGARI(ブルガリ)』の「POUR HOMME(プールオム)」ほど、世界中の男性を虜にした香りは無いのではないでしょうか。
1990年代のメンズフレグランス界を座巻した、キングオブキングな存在の香水です。
「POUR HOMME(プールオム)」のすごいところは、当時のティーンエージャーを“香り”に目覚めさせ、そして60代以降の男性が着けると“若く見える”といった、変幻自在な「万能型性質」にあります。
そして、照れることなく気軽にまとえるカジュアルさも人気の秘密と言えましょう。
この香りを作ったのは、世界三大調香師の一人、ジャック・キャバリエです。(現在のルイ・ヴィトン専属調香師)
「香りが見える」というジャック・キャバリエは、自身の役割について「香水によって人々の欲望を生み出すこと」と語っています。
「POUR HOMME(プールオム)」は、誰もが秘かに持つ、淡い欲望を再確認させた香りかもしれません。
男性自身が好きな香水、というより、女性側が「POUR HOMME(プールオム)」の香る男性を好きなのです。
それでは『BVLGARI(ブルガリ)』初の香水にして、代表作「POUR HOMME(プールオム)」の香りを分析していきたいと思います。
ジェンダー差をはっきりと意識させる香り
皆さんの周りにも『BVLGARI(ブルガリ)』の香水やお財布、時計、ジュエリーなどを持っている人がいるのではないでしょうか?
『BVLGARI(ブルガリ)』は、創業者であるソティリオ・ブルガリが1884年にイタリアのローマに高級宝飾品ブランドとして創業しました。
香水を初めて販売したのは、1993年のことです。
1990年代は、世界的にも様々なムーブメントが生まれた時代です。
音楽や映画など世界中で名作が生まれ、バブル崩壊にもめげず、人々は「感動」や「熱気」を求めていました。
現在はジェンダーレスなフレグランスが主流ですが、この時代はジェンダー差を意識した香水が量産されていた「最後の時代」とも言えます。
1990年代のメンズフレグランスの特徴に挙げられるのが、フレッシュで、柔らかくて、ウォータリーな性質を持つこと。
昔ながらのダンディさを含んだ「メンズフレグランスはこうあるべき」という呪縛を解放した筆頭者が、「POUR HOMME(プールオム)」なのです。
出典:ブルガリ・公式インスタグラムより
時代とともに変化した香りの好み。
「男はこうあるべき」との凝り固まった美学が無くなり、揺れ動く時代だからこそ「しなやかに生きる」ことに舵を取るべきと、シフトチェンジしていったからでしょう。
2000年代に入ると、ユニセックスタイプの香水が本格的に台頭してきますが、「POUR HOMME(プールオム)」はダンディズムとユニセックスの間をついた、“失敗知らず”の香りと言えます。
「POUR HOMME(プールオム)」に出現よって、メンズレグランスの敷居の高さはグッと低くなりました。
言い換えれば、香りによってたくさんの男性を覚醒させたことになります。
端麗で躍動感のある香り
調香師:ジャック・キャバリエ
トップノート…アルデヒド、ベルガモット、ダージリンティー、オレンジフラワー、ブラックカラント、ウォーターリリー、イチジク
ミドルノート…トルコカルダモン、ペッパー、ローズウッド、アイリス、ガイアックウッド
ラストノート…ムスク、クリアアンバー
「POUR HOMME(プールオム)」が使いやすい理由の一つに、オードトワレであることが挙げられます。
https://www.bulgari.com/fr-fr/83110.htm
出典:ブルガリ・公式HPより
香りが強すぎないこと、持続時間が短いこと。
そしてラストノートが消えかかる頃にはまるでフェロモンのような残り香を放つのです。
もちろん全てのオードトワレがそのような性格を持つとは限りません。
「POUR HOMME(プールオム)」には、ジャック・キャバリエという天才調香師がの技が現れているのです。
硬質なシトラスの香るトップノートでは、躍動感と少年のような爽やかさが。
優しさと賢さを感じさせる、締まったミドルノート。
そして包み込むように温かく、ソープ感のあるラストノートは女性に安心感を与えます。
全体を通して、綺麗にまとまった香りで、躍動感がありつつも端麗で健康的なイメージです。やはり場所を問わず、年齢を問わず、季節も問わないズバリ優等生なフレグランスと言えましょう。
「POUR HOMME(プールオム)」が似合うシーンとは
文句なしにバランスの良い香りなので、ビジネスやフォーマルなシーンにもちろんOKですが、休日のラフな服装でも違和感がありません。
不思議なことに、ゴルフ着や水着といったイレギュラーなシーンにも似合ってしまいます。
出典:ブルガリ・公式インスタグラムより
オン・オフ・バカンスと、どんな時もハマり、TPOをわきまえた「POUR HOMME(プールオム)」。
逆に言うと、ここまで垣根のないメンズフレグランスを探す方が難しいくらいです。
特筆すべきは、女性からの支持が非常に高いということ。
大ヒット作品なのに加えて、発売から30年近くの月日が経っていますから、誰もが“一度は嗅いだことのある香り”との認識があるかもしれません。
その安心感と、さりげなくていやらしすぎない香りが人気の理由と言えます。高いリピート率を誇り、カップルや夫婦で共有しているという方も。
どんな気分やテンションの日でも心地良さをくれる香りなので、肩ひじ張らずにまとえます。良い意味での「人たらし」なフレグランスです。
まとめ
「POUR HOMME(プールオム)」は、メンズフレグランスの歴史を塗り替えた傑作と言っても過言ではありません。
グローバル化を歩み始めた1990年代。世界はとてつもないスピードで変化し、若者たちはその速度を楽しむかのように、自己を表現し、淡い欲望を抱いていました。
そんな時代に颯爽と現れた「POUR HOMME(プールオム)」の香りは、世の男性・女性のハートに深く刻まれたのです。
今、1990年代の文化がリバイバルで再燃しています。
「POUR HOMME(プールオム)」を知らない世代は、ファッションをリバイバルするように香りも当時のものを身につけると、完璧に再現できるでしょう。
また、その時代に青春を駆け抜けた人にとっては、永遠に色褪せない「あの時」の思い出の香りに。そして、その上の世代も「自身を奮起させる」香りとなると思うのです。
その不可侵的な香りは「POUR HOMME(プールオム)」の最大の魅力。多くの人に「思い出」を残したこのフレグランスの功績は、あまりにも偉大です。
世界中の男たちを覚醒させた「POUR HOMME(プールオム)」の香りを、ぜひ試してみて下さいね。
香水コレクションに一つ加えることで、感性の引き出しが増えることでしょう!